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2008年08月22日(金) 13時30分

「一本」か「勝利」か。日本柔道の未来はどっちだ?R25

競技初日に平岡拓晃が1回戦で敗退して、日本男子60kg級4連覇の夢が途絶えた北京五輪の日本柔道。それに続き、期待の女子48kg級の谷亮子が敗れて3連覇を逃すなど厳しい戦いが続いた。

女子はその苦境をはね返し、谷が意地の銅メダル獲得、翌日の52kg級中村美里の銅メダル獲得でつないだ。それが63kg級谷本歩実と、70kg級上野雅恵の金メダル獲得へとつながった。一方、男子は66kg級で内柴正人が五輪連覇を達成したものの、あとが続かない。自らの力を精一杯出した選手たちは讃えたい。だが、結果は結果だ。銅メダルすら獲れないという状況は、最終日の100kg超級で石井慧が金メダルを獲ったとはいえ、簡単に忘れていいものではない。

女子はアテネ五輪後、ベテランと新顔が混在する代表メンバーになっている。だが男子の新顔は数えるほど。実績重視の選考がチーム内の競争力を削り取ってしまったのだろうか。

そのなかで「美しい柔道ではなく、勝つ柔道でなければ意味がない」と公言する石井に、一部関係者から批判めいた目が集まっていたのも確かだ。だからこそ彼には、普通の金メダル以上のプレッシャーがかかっていたはずだ。優勝を決めた瞬間、彼の口から「良かった」という言葉が何度も飛び出していたことに、プレッシャーの大きさを想像できた。

昨年の世界選手権、五輪実施階級では男子が73kg級の銅1個という惨敗を喫した時、「“一本”にこだわらず、まずは勝利を」という「世界のJUDO」へ対応しきれていない日本柔道が問題になった。あるスポーツ紙記者は「協会首脳の方針が決まらないのが問題」という。北京でも惨敗中は「日本柔道の見直し」を口にし、石井が勝つと途端に、「日本柔道を貫かなければ」と言い出すような混乱もあった。世界の柔道界がポイント重視に傾きすぎないためにも、一本で勝つ柔道を守ることも大切だ。だが勝てなければ“机上の美”になるだけ。まずは勝って示さなければ。そのためにも「JUDO」のさらなる研究が必要なのかもしれない。
(R25編集部)

※コラムの内容は、フリーマガジンR25から一部抜粋したものです

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