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2008年08月21日(木) 16時26分

食料品に燃料サーチャージ。さーどうする?ツカサネット新聞

ガソリン代をケチって自転車で近場の移動をしていると、小さくて古くても魅力的な店を発見する。休憩に通りがかりの公園によると、立ち止まることのなかった石碑の意味を知って、深く胸に響くこともある。結構、車で通過するだけだったいつもの道には、色々と魅力的な店や、色々な樹木に囲まれているんだと、あらためて知ることになった。

そんな中、農産品にサーチャージを検討しているというニュースに触れた。
JA宮崎経済連(宮崎市)が、ピーマンなどハウス栽培で使う重油の値上がり分を、農産物の卸値に上乗せする「サーチャージ制度(燃料油価格変動調整金)」の導入を検討しているというニュースだ。

商品の値上げになるため、他県が安値競走に出たり量販店の理解を得ることは同経済連が単独で実施することは難しい。そこで7/29、東京での15道県JAとの会合で提案し、足並みがそろえば、ハウス栽培が本格化する11月から実施したい考えだ。

ハウス栽培で使用する重油価格は今年前半平均価格が1リットル当たり92円だったが、7月には121円にまで値上がりしていて、04年の平均価格の3倍にまで高騰しており、生産者からは悲鳴が上がっている。サーチャージは高騰が続く原油高に対する「苦肉の策」で、同経済連は「消費者に迷惑をかけることになるが、農家の経営苦は限界にきている」と訴えている。

また素材メーカーにも動きが出てきた。
神戸製鋼所は特殊鋼の価格を原材料の一部の価格と連動させる価格変動調整金(サーチャージ)方式を導入するこになった。日揮などプラント各社も受注時に総額を決める方式に加え、受注後の資材価格の変動を織り込める方式を採用するとのことだ。

サーチャージは航空会社の国際線や国際航路では一般的だが、国内の陸運各社も導入予定となっており、全ての産業において取り組みに前向きの方向といってよいだろう。この状況の中で、農産物や漁業のサーチャージだけ批判されるということはないと思われる。

しかし、これらが全て導入された先にはどういった状況が想像できるだろう。

商品価格は据え置きでありながら、10%20%のサーチャージ出費をするということは、値上がり以外の何物でもない。消費動向調査や、景気動向や経済成長率には反映されない、実態をともなわない数字で景気や経済について政府や銀行は指針を示し、対応策を検討するのだろうか。

実際の出費は増えているが(しかも大幅に!)、何一つ持ち物が増えたわけでも、生活レベルがランクアップしたわけでもなく、どちらかといえば消費を控え、生活レベルはランクダウンしているという、何やら鬱憤のたまる状況が目に見えてくる。

この鬱憤のたまる生活環境は、低所得者にとってそして大都市になれば、特に厳しい状況になるのではないだろうか。

ピーマンを作るためのサーチャージ、そしてそれを運ぶためのサーチャージ、各販売店への輸送へのサーチャージと流通段階ごとに足されることになるのだろうか。

実際にはこれらの動きが具体化されれば、地産地消が広がり、そして地域ごとの季節ごとの食品が食卓を彩れば、影響を回避することはできる。外食産業は材料調達のために難しいだろうが、季節ごとの営みを行なうことのできる者が、このサーチャージ負担から回避できるということになるだろう。

また、休日に足を伸ばすことによる燃料消費負担を考えたら、冒頭の私のように(極端すぎるかもしれないが)、負担感のない近隣で余暇を過ごすことで、身近にある良さを再発見することになるかもしれない。

これらは決して、時代に逆行しているというわけではなく、見失っていた豊かさの再発見の機会だと捉えるべきではないだろうか?

そしてサーチャージによって訪れた環境は、個人に企業に地域に、そして国にとって、内面の充実をはかる時代の訪れと呼べるかもしれない。

結局サーチャージが必要なものは、一年中同じモノを食するためや、「どこでもドア」のように距離を縮めるかのごとく、時間を限りなく「無」にするための費用であることが多い。

しかし時間は、その使い方次第で豊かさを生み、豊かさを噛み締める時でもある。時間の貴重さをあらためて知る機会が、燃料サーチャージなのだと捉えると、憤りを感じながらも日々の暮らし方の変化は、マイナスだけではなく思える。

(記者:竹山壽)

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