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2008年08月21日(木) 11時04分

<西濃運輸健保>組合解散…高齢者医療で負担金増加毎日新聞

 物流大手のセイノーホールディングス(岐阜県大垣市)のグループ企業31社が加入する西濃運輸健康保険組合が、4月の高齢者医療制度改革で負担金が増えたため組合を解散し、国が運営する政府管掌健康保険(政管健保)に移っていたことが21日、分かった。

 西濃運輸健康保険組合には従業員と扶養家族約5万7000人が加入しており、倒産を除いて大規模な健保組合が解散するのは異例。医療制度改正は財政再建に向けた公費負担の軽減が目的だが、西濃運輸のようなケースが増えれば逆に公費負担が増えることになり、高齢者医療制度の抜本的な見直しを迫られる可能性もありそうだ。

 西濃運輸によると、政管健保に移ったのは今月1日から。4月からの高齢者医療制度の導入で、負担金が昨年と比べて年間で約22億円(前年度比62%増)増える計算になるという。健保を維持した場合、組合が赤字に転落するため、将来的に保険料率を現状の月収の8.1%から同10%に引き上げる必要があるが、政管健保に移った場合にはほぼ現状の負担で済むという。西濃運輸の担当者は「前期高齢者(65〜74歳)納付金の負担が大きく、政管健保と比較した場合、独自の健保を維持するメリットがないと判断した」と話した。

 健康保険組合連合会によると、約1500の健保組合の保険料率は平均7.39%と政管保険の同8.2%を下回る。だが、制度改正で前期高齢者の医療費負担が新たに導入されるなどで、健保組合が拠出する負担金が約5000億円増えた。このため、赤字の健保組合は昨年度の7割から今年度は9割近くになる見通しという。【米川直己】

【ことば】公的医療保険

 公的医療保険は、大企業の従業員が中心の健康保険組合(3000万人)や中小企業の従業員が入る政管健保(3500万人)、市町村が運営し自営業者らが加入する国民健康保険(国保、3800万人)、公務員らの共済組合(900万人)などがある。比較的財政が豊かな健保組合や共済は一部の例外を除き原則国庫負担はないが、政管健保は給付費の13%、国保は34%(定率分)が国費で賄われている。

 健保組合は75歳以上には拠出金だけを支出し、07年度までは会社員OB分を賄えば済んだが、後期高齢者医療制度(対象者1300万人)の発足に伴い、国保加入の65〜74歳の医療費も支援することになり、負担が膨らんだ。

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