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2008年08月20日(水) 15時05分

9秒69!ボルトが追う先人の大記録ツカサネット新聞

9秒69。
男子100m決勝で生まれたウサイン・ボルトの世界新記録は、人類初の9秒6台に突入した衝撃と同時に、余力を残したゴール前でのパフォーマンスで間違いなく後世まで語り継がれるシーンとなった。

ボルトと同じジャマイカのパウエル、アメリカのゲイとの三つ巴の争いが戦前から予想された今回のオリンピックだったが、蓋を開けてみればパウエルは5位に終わり、ゲイにいたっては決勝に進むことさえ出来なかった。

優勝を確信したボルトは、ゴール前でスピードを緩め手で胸を叩き「自分が一番だ」と観衆にアピールしているようであった。ゴール後はバックスタンドで息子の勇姿を見届けた母の元へ止まることなく走っていった。聞けば、ボルトはこの時まで自身のタイムが世界新記録とは知らなかったという。

仮にゴールの瞬間までスピードを緩めていなければ、一体どのようなタイムが出ていたのであろうか。もしかしたら一気に9秒6の壁も破ってその先に進んでいたかもしれない。また、ゲイが決勝に進出しオリンピック決勝の舞台で3強の直接対決が実現していればどうなっていただろう。陸上に限らず水泳などの各選手が並行して競う競技では、隣に速い選手がいるとそのペースにつられて自分のタイムも良くなるという話を耳にする。3強が揃って走っていればどんなタイムが出ていたのだろう。パウエルだって5位に沈むことなく、それこそ歴史的名勝負となっていたことは想像に難くない。

ボルトはレース後、このように語っている。
「記録よりも世界一を証明したかった」
ボルトは元々200mの選手であり、「英雄になりたい」という理由で今年から100mを本格的に走り出した。それでこの記録も脅威だが、別の視線から見れば本分はあくまで200mであり、よりこだわりを持っているのは200mであると言える。そして単に世界一を証明したかった100mと違って、200mでは結果は当然ながら記録も狙っていることだろう。

ボルトが陸上を始めたきっかけは、10歳のときに見たアトランタ・オリンピック。独特なフォームとその圧倒的な強さで男子200mを制したアメリカのマイケル・ジョンソンが、彼を陸上で生きていく決心をさせたのである。男子200mの世界記録はそのジョンソンが持つ、今後永遠に破られないだろうと言われている19秒32。単純比較は出来ないが、9秒69を倍にすると19秒38。最後までスピードを緩めず100mの好調さを維持し、かつ風という運がボルトに味方すれば…。

100m以上の衝撃と興奮が世界中を駆け抜けることは間違いない。

(記者:adios7210)

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