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2008年08月19日(火) 12時49分

補欠は代表にあらず!?オーマイニュース

 北京五輪では、これまでになく、「ホケツ」の存在がクローズアップされている。1つは日本選手団の最高齢選手である馬術競技の法華津(ほけつ)寛さん。愛媛県の宇和町(現西予市)と、吉田町(現宇和島市)の境に法華津トンネルが開通していて、愛媛県人には、馴染(なじ)みのある地名だが、どうやら彼のルーツもその辺りにあるらしい。

 もう1つは、女子マラソンの補欠解除問題。アテネ五輪に続く連続金メダルが期待されていた野口みずき(シスメックス)の故障による欠場が決定された際、補欠代表の森本友(天満屋)の補欠登録が先月末で解除されており、その対応をめぐって、日本陸連の対応が「不手際」とも、「大失態」とも批判されている。森本も体調不良で走れる状態ではないので、辞退したとも報じられていたが、最も根本的な事実がほとんど報じられていない。

 今回の五輪の女子マラソン、IAAF(国際陸上連盟)の最終エントリー締め切りは7月23日だったのである。8月に入った時点で、不調が発覚したところで、既に手遅れだったのだ。

 今回の陸連の対応を批判した方は、あるいはマラソン代表も駅伝のように、レース前日、もしくはスタート3時間前までにはエントリーの交代可能と誤解されていたのではないだろうか? 現実にそのような選手起用は不可能である。

 さらに言うと、マラソンの「補欠代表」というのは、正式な五輪代表選手ではない。「美人ランナー」として人気が高く、タレントとしても活躍している谷川真理さんはバルセロナ五輪のマラソン補欠代表であるが、彼女が「元マラソン五輪代表のタニガワマリさん」とテレビの司会者や雑誌記事のプロフィル等で紹介されることはない。

 代表選手に与えられるブレザーも公式ウエアも授与されることもない。ただ、代表選手の「不測の事態」に備えて、最終エントリー締め切り日まで、トレーニングを続けるだけである。リレー競技の補欠選手とは全く異なる立場である。

 今回、森本友は、同じチームの後輩である代表選手の中村友梨香の応援のために共に北京入りしたが、そのようなことでもない限り、補欠選手が開催地に行くこともない。

 今回の野口みずきの欠場は、あまりにも不幸なアクシデントである。メダルを狙うランナーは故障と紙一重のギリギリの部分でトレーニングを続けていることを今更ながら思い知らされた。1日も早い復帰を願うばかりである。

 とかく、女子マラソンに関して、日本陸連という組織は常に批判の矢面に立たされる。今回は、代表選考については過去に比べてスムーズに選ばれたが、本番ギリギリになって思わぬ形で批判を浴びてしまった。しかしながら、「補欠」という立場の実態が正しく報じられていない上での批判は、ただの「批判のための批判」である。

 今回の事態を機に次回以降、マラソンの最終エントリーの時期をもっと直前に近くずらすなどのルール改正が討議されるかもしれない。有力選手の「ドタキャン」は、主催者にとっても、中継を行うテレビ局にも大きな損失であることは間違いない。

(記者:河野 寛司)

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