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2008年08月19日(火) 16時45分

糖尿病解明へ関連遺伝子発見医療介護CBニュース

 40歳以上では4人に1人が糖尿病またはその予備軍と推定されるなど、糖尿病患者が増える中、理化学研究所(理研)は8月19日までに、成人で発症する割合が高い「2型糖尿病(成人糖尿病)」に関連する遺伝子を発見した。この遺伝子は、日本人の「2型糖尿病」患者の2割にかかわっているほか、シンガポールやデンマークの患者にも関係していることが分かった。理研では、「民族を超えた糖尿病関連遺伝子の発見で、今後、糖尿病発症のメカニズムの解明とともに、新たな治療法や予防法の開発につながる」としており、成果は、米国の科学雑誌「Nature Genetics」のオンライン版に掲載された。

 糖尿病は、代表的な生活習慣病の一つで、厚生労働省の2002年度の実態調査によると、患者は740万人に上り、予備軍を合わせると1620万人に達している。患者数は世界規模で増加し、国際糖尿病連合のまとめによると、成人で発症する糖尿病の85-95%を「2型糖尿病」が占めている。

 理研のゲノム医科学研究センターの内分泌代謝疾患研究チームは、1561人の糖尿病患者と2824人の一般対象者の試料を用いて、06年から約27万か所の「一塩基多型(SNP)」を解析。その結果、糖尿病との関連が有力な9か所のSNPなどを発見した。これらのSNPについて、滋賀医大など15施設から提供された「2型糖尿病」患者3588人と一般対象者1352人の試料で検証したところ、「KCNQ1」という遺伝子のSNP(rs2283228)が、「2型糖尿病」の発症と強く関連していることが分かった。
 研究チームは、「KCNQ1」遺伝子について、さらに詳しく調べた結果、SNP(rs2283228)よりも、さらに「2型糖尿病」の発症と強い相関を示す6か所のSNP(rs2283227)があることを発見。この結果について、シンガポールの国立シンガポール大、デンマークのステノ糖尿病センターと共同研究したところ、「KCNQ1」遺伝子が、日本人だけでなく、両国の患者にも強く関係していることが分かったという。

 研究チームでは、「このSNP(rs2283227)があると、『2型糖尿病』になる危険性が1.3-1.4倍高くなり、計算してみたところ、日本人の『2型糖尿病』全体の2割の患者の発症にかかわっていると推察できた」と指摘。その上で、「今回の成果と、今までに欧米人で発見された関連遺伝子を組み合わせることで、糖尿病になりやすいハイリスクの人を診断することが可能になる。積極的な予防対策をハイリスクの人のみに講じると、より効率的な糖尿病予防が可能になると考えられる」としている。

【2型糖尿病】
 糖尿病は血糖値が持続的に高くなる病気で、代表的なものとしては、若年者で急激に発症する「1型糖尿病」と、多くは成人になってから発症する「2型糖尿病」がある。

【一塩基多型(SNP)】
 ヒトの染色体にある全DNA情報(ヒトゲノム)は30億に及ぶ塩基配列で構成されている。この配列が、暗号(遺伝情報)となっており、その99.9%は全人類共通だが、0.1%程度に個人差(遺伝子多型)があると分かっている。多くの遺伝子多型は違っていても影響がないが、一部は病気のなりやすさなどに関係していると考えられている。



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