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2008年08月18日(月) 11時50分

サッカー女子に「なでしこ」の愛称はふさわしいかオーマイニュース

 「なでしこジャパン」とは、五輪代表の女子サッカーチームに付けられた愛称である。なんでも、この愛称は商標登録されているという。

 「そのなでしこジャパン」は、1次リーグ緒戦のニュージーランドに引き分け、2戦目の米国にも敗れ1勝1敗と崖っぷちに立たされた。準々決勝へ進むには、 1次リーグ最終戦のノルウェーに勝つことが絶対条件となる。しかも、そのノルウェーは2試合を終えた時点で無敗かつ無失点と絶好調で、日本が勝つことは容易ではないように思われた。

 しかし、12日に行われたノルウェー戦は、そのような杞憂を一蹴した。

 前半こそ試合巧者、ノルウェーの前に1対1で折り返すのがやっとの日本だったが、後半は見違えるほどの動きを見せてくれた。

 ベスト8進出のためには勝つしかないという切羽詰った状況が、気迫と運動量を倍加をさせたのだ。それは、後半6分に表れた。得点はオウンゴールだったが、日本の流れるような攻撃から生まれた得点といってもいい。その後は、大野、沢、原選手が無失点を誇ったノルウェーの守備網を切り裂き、次々とゴールを決めた。最終的には5対1で、なでしこジャパンが圧倒的勝利を収めた。

 この試合を見る限り、なでしこジャパンのプレーは、「なでしこ」にはほど遠いように思えた。

 例えば、相手ボールを奪取する時の出足の鋭さや、ドリブルで切り返してからの素早いシュート、そして守備、攻撃陣関係なく見せてくれた、体のハンディをものともしない粘り強い守備や適切なカバーリングなどは、男子と比べても1歩も見劣りしない。にもかかわらず、これらのプレーを「なでしこ」などとはどういう了見なのだろうか。命名した人の気持ちを聞いてみたい。

 「なでしこ」とは、古きよき日本女性の生き方や立ち振る舞いを賛美する言葉で、どちらかというと、男性の引き立て役に徹する内助の功という、現代女性にはあまり見当たらないタイプの女性像である。具体的には、忍耐強さと優雅さを併せ持った古典派の女性とでもいうところだろうか。

 この定説と、ノルウェー戦で見せた日本のプレーは似ても似つかぬものだ。この試合を見る限り、「なでしこジャパン」という愛称には違和感を持たざるを得なかった。いっそのこと「大和魂女イレブン」とでも改名したらどうだろうか。その方が実態により近いような気がする。

 ところが、後半に見せせてくれた次のプレーが、その思いがとんだ見当違いだったことを教えてくれた。

 後半は、ギアチェンジをしたような怒涛のような日本の攻撃が始まった。その攻撃中に、それは起こった。中盤の激しい接触プレーで、ひとりのノルウェー選手が倒れた。その選手は苦痛のあまり倒れたまま動かない。

 この時、彼女のユニフォームがめくり上がり、背中が半分くらい露出していた。だが、これを見た日本選手が自分のポジションに移りながら、この選手のめくれ上がったユニフォームをさりげなく元に戻したのだった。

 なんというファインプレーだ。

 私は思わず「これはまさしくなでしこ」だと、心の中で叫んでしまった。このプレーは、その時の試合の状況には全く関係ない行動だが、倒れて動けない選手のめくれたユニフォームを直したこの日本選手は、なでしこの名にふさわしい行為だ。

 やっぱり、日本の女子代表チームの愛称は「なでしこジャパン」でいい。なぜなら、見えないところでさりげなく相手をいたわるこの態度は、なでしこそのものだからだ。

 極論すれば、このなでしこ精神があるからこそ、サッカーが成立すると言える。得点をお膳立てするのは、ゴール前までボールをつなぐ選手全員のひたむきなプレーがあるからだ。男を立てるなでしこは、サッカーの場合、得点を支えるひたむきなプレーとでもいうところだろう。

 15日の準々決勝では、中国に勝った。18日、アメリカとの準決勝でも「なでしこジャパン」は、大いに期待したい。

(記者:藤原 文隆)

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