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2008年08月17日(日) 10時39分

本の返品4割 ムダ減らせ 小学館、同一書籍で併用制 販売方法は店が選択産経新聞

 出版不況の一因ともいわれる4割もの返品率を改善しようと、小学館が11月から新たな販売方法に乗り出す。同一の本について、返品が自由にできる「委託販売制」と、返品時にはペナルティーがあるが、高い粗利益が約束される「責任販売制」のいずれかを、書店が自由に選べるようにするものだ。同一の書籍に複数の取引条件を付ける業界初の試みで、書店の仕入れ能力向上にもつながると期待されている。(海老沢類)
 ■「委託」の弊害
 小学館や集英社などの書籍物流を手がける昭和図書の推計によると、昨年の書籍、コミック、ムックを合わせた返品率は38・1%に達した。30%前後で推移していた30年ほど前に比べ増加が目立つ。返品本の約4分の1は廃棄処分されるとされ、損失は毎年約1700億円にも上るという。
 高い返品率の要因と指摘されるのが、現在主流となっている委託販売制だ。書店側が、売れ残った本を出版社に自由に返品できる制度で、仕入れの負担が少なく書籍の普及に貢献してきたが、出版点数が膨大になった現在では「大量仕入れ、大量返品」という弊害が目立ってきた。
 書店が一定部数を買い取る責任販売制にすれば返品は確実に減るが、出版社にとっては販売部数の伸びが鈍るデメリットもある。小学館は平成11年以降『21世紀こども百科』など計6点で責任販売制を実施した。96・3%という高い平均実売率を記録したものの、返品時のペナルティーを恐れた書店が追加注文を渋ったため販売部数はいまひとつだった。似たような制度を行っているのは、返品を仕入れの5%までに制限する「ハリー・ポッター」シリーズなど一部の人気作品に限られている。
 ■RFタグ装着
 そこで、小学館が編み出したのが、両制度の利点を生かした委託販売・責任販売の併用制だ。第1弾として11月18日に発売予定の『ホームメディカ 新版・家庭医学大事典』(6300円)に、取引条件を識別できるRFタグを装着して販売する。委託販売を選択した場合、書店のマージンは約2割程度だが、責任販売ではその約1・5倍。仕入れのリスクを負った書店は利益を上積みできる。また、責任販売の場合、事前に発注すれば確実に配本される利点もあるという。
 「好調な出足が期待できる初回分は責任販売で発注して利益を確保し、2回目以降は委託販売に切り替える…といった柔軟な仕入れが可能。返品というムダを減らし、読者にほしい本が確実に届く仕組み作りにつなげたい」と、制度を提唱した昭和図書の大竹靖夫社長は話す。
 書店には好評で、当初は責任販売で5万部の出荷を見込んでいたが、すでに8万部を上回る注文が寄せられている。小学館は併用制のノウハウを広く公開し、他社にも参加を呼びかけていくという。
 当面の課題はタグのコスト抑制だ。本体と装着費用を合わせたコストは現在約50円で、利益を考えると装着できるのは高額な書籍に限られている。
 小学館マーケティング局の市川洋一ゼネラルマネージャーは「近いうちにタグのコストは下がって、定価が2000円程度の本にも装着できるようになる。書店がリスクを負う制度が浸透すれば書店員の仕入れ能力もより向上し、店舗の立地に合わせた品ぞろえも増えてくるのでは」と話している。

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