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2008年08月16日(土) 13時02分

なくせ!振り込め詐欺:振り込んだ男性に聞く 「まさか自分が」に落とし穴 /山口毎日新聞

 今年の上半期(1〜6月)だけで全国で総額166億9000万円もの被害が発生している振り込め詐欺。過去最悪のペースだが、被害者の多くは「まさか自分がだまされるとは」と口をそろえる。事程左様に手口は巧妙だ。あらゆる悪知恵を絞りながら忍び寄る詐欺師たち。なぜだまされるのか。どうすれば防げたのか。振り込んだものの、寸前で被害を免れた男性にインタビューした。【藤沢美由紀】
 ◇複数の相手、丁寧な応対「信じてしまった…」
 <山口市の男性(82)方に電話があったのは6月20日午後0時半ごろ。言葉巧みに誘導され、約90万円を振り込んでしまった>
 ◆山口社会保険事務所の職員と名乗る中年の男でした。「保険金の掛け過ぎた分を還付します。3月末まで手続きをするよう通知が届いているはずですが」と言う。覚えはなく「見ていない」と答えると私の名前や住所を挙げ「期限が過ぎており、手続きできません。東京の社会保険庁で手続きをしますから電話してください」と言ってフリーダイヤルの番号を告げました。
 ——不審に感じませんでしたか。
 ◆半信半疑でした。とりあえず指定の番号に電話しましたが、通じないため午後1時過ぎに再度かけると、若い男が出ました。「社会保険庁給付課の馬場と申します。還付金2万3450円を振り込みます」と言いながらも「個人情報保護法により、こちらから指定口座へ振り込めません」と説明。携帯電話を持って近くのスーパーの現金自動受払機(ATM)へ行くよう指示がありました。
 ——取引銀行の支店のATMを利用できない理由は。
 ◆「そこは今機械を取り換えている」と断られました。言われた通り、ATMの前から携帯電話で男に指示を仰ぎました。自分のキャッシュカードを挿入後、「『開始』を押してください」「『振り込み」を押してください」などと言われるがままパネルを操作しました。指定された口座は福島県に本店のある銀行で、振込額の入力画面の際、男に「8、9、8、4、1、1を押してください」と言われ、その通りにしました。
 ——振り込んでしまったんですね。
 ◆うかつでした。出てきた明細書を見てびっくりしました。思わず「私がお宅に振り込んだんじゃないか」と叫ぶと、落ち着いた様子で「その数字は取引番号。機械が取り換え作業中だから暫定的に振込額の欄に記入されているだけです。人に見られたら困るので、その明細は捨ててください。帰宅後、電話をください」と言って切れました。
 ——その後は。
 ◆明細書を手に、警察署へ行きました。銀行に手配してもらったところ、まだ引き出されておらず、危機一髪間に合いました。
 ——どこに気を付けるべきだったのでしょうか。
 ◆電話の声は丁寧でとても自然。私はATMの操作に慣れており、振り込め詐欺は報道で知っていました。ただ、役人を名乗り、東京の事務所など複数の相手とやり取りする中で、もっともらしいと信じてしまった。自分だけはだまされないと思っていたのに、結局だまされました。
〔山口版〕

8月16日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080816-00000136-mailo-l35