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2008年08月15日(金) 12時12分

情報BOX:日銀政策委員の景気や金融政策に関する最近の発言ロイター

 [東京 15日 ロイター] 日銀が全員一致で現行の金融政策維持を決めた7月14、15日の金融政策決定会合以降、日銀政策委員の景気および金融政策に関する主な発言は以下の通り。18、19日の両日開かれる決定会合でも、エネルギー・原材料価格高を背景とした景気悪化の行方や、世界的なインフレ圧力の高まりが経済に及ぼす影響を見極めるため、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.5%前後に据え置く見通し。
 ◎西村清彦副総裁(7月29日付・毎日新聞とのインタビュー):「テクニカルには景気後退ということもあるかもしれない。ただ、重要なのは大きく落ち込むかどうかで、その可能性は小さい。企業が(設備や人員、債務の)過剰を抱えておらず、新興国など米国以外に成長のエンジンがある」
 ◎水野温氏審議委員(7月24日・青森市における金融経済懇談会でのあいさつ):「コアCPIは、小売段階での値上げの広がりから、秋には同+2.5%程度まで上昇すると予想」
 「(米経済)潜在成長率に復する時期は、2010年にずれ込む可能性が出てきた」「東アジア経済におけるインフレ圧力の高まりは、日本経済にとって新たな「霧」となりつつある。(中略)仮に、東アジアを中心とした新興成長国の景気が失速した場合、日本の景気見通しを下方修正する必要が出てくる」
 「一般論として、エネルギー・原材料価格の高騰という『相対価格の変化』による物価上昇圧力は、金融政策で止めることはできない。一方、(中略)二次的効果が発生した場合、金融引き締めによって歯止めをかける必要がある。現在の日本をみると、賃金の伸び率は前年比+1%前後と落ち着いており、二次的効果が発生しているわけではない」
 「企業部門をみると、在庫、設備、雇用という面で3つの過剰を抱えていないだけに、景気に粘りはあるように思う。すなわち、何らかの外的ショックが発生しても、大規模な調整が発生する可能性は低くなっている」
 「日本経済を覆う霧は当面晴れそうにない。現在は、物価の安定を通じて持続的な成長に貢献するという金融政策の目的を達成する上で、金融政策決定会合で『現状維持』を決定することに積極的な意味がある。(中略)金融環境は総じて緩和的であるとの判断は変えていない。(中略)日本経済の潜在成長率の水準を考えると、いつまでも0.5%という政策金利を継続することの副作用についても、常に念頭におきながら、適切な金融政策運営を毎回毎回の金融政策決定会合で議論している」
 (懇談会後の記者会見):「個人的には、今は景気の下振れの方をやや意識しながら政策運営を行っていくのが適切ではないかなと思っている」
 「景気後退が認定される可能性はあるが、同時に強調していきたいのは、深い景気後退になる、あるいは景気が底割れしていくような状況になるかというと、企業が在庫、設備、雇用の3つの過剰問題を解決した中では、そういう状況は今のところ起き難いのではないかとみている。ただ、景気回復のパスに回帰するまでのタイムラグが以前想定していたより、あるいは日本銀行が公式に言っているよりも、後ずれする可能性はあると、意識していかなければならない」
 「米国経済が潜在成長率に復するタイミングも、日本経済と同じように、後ずれするリスクの方が高まっている」「2008年度よりも09年度が(成長率が)高いかどうかについては自信がない」
 ◎白川方明総裁(7月18日・内外情勢調査会での講演):「日本経済は当面減速を続けるとみられるが、深い調整局面に陥ることはなく、その後は次第に緩やかな成長経路に復していく可能性が高い」「世界経済の成長率が先行き多少低下するにしても、持続可能なスピードで成長することができるかどうかが重要な鍵を握っている」「(米経済)資本市場、資産価格、実体経済の負の相乗作用が、いつ、どのように収束に向かうか、なお帰すうはみえていない。(中略)国際金融資本市場の動揺は続いており、米国経済など世界経済に関する下振れリスクは引き続き高い状態」
 「インフレ予想は、インフレ率を左右する重要な要素だが、特に、エネルギー・原材料価格の高騰が、企業や家計のインフレ予想を押し上げることによって賃金・物価が一層上昇する二次的効果が発生するかどうかが大きな鍵を握る。(中略)現在までのところ、日本の賃金の伸び率は前年比1%前後と落ち着いており、他のデータと併せて考えると、二次的効果が発生している訳ではない」「メイン・シナリオとしては、消費者物価の上昇率は、現在の1%台半ばの水準から、当面は上昇率をさらに高めると予想しているが、その後は徐々に低下するという姿を想定」
 「(先進国中央銀行間で共有されているオーソドックスな考え方)第1に、供給要因に基づく輸入コストの一時的な上昇に対しては、金利引き上げで抑え込むことは適切ではない、第2に、インフレ予想の上昇などを通じて二次的効果が発生するおそれがある場合には、金利引き上げで対応すべきである、というもの。しかし、これまでの商品市況の上昇は、長期にわたって続いてきているだけに、これを『一時的』と考えるわけにはいかない。また、これが、供給要因だけでもたらされているわけではなく、世界的な需要の増加という要因が強く働いていることも、さきほど詳しく述べたとおり」
 「景気と物価が異なる動きを示す際、金融政策運営上の判断基準が必要だが、日本銀行を含め多くの中央銀行は、予想インフレ率の安定が確保されているかどうかを重視している」
 (講演後の質疑応答):「現在の物価上昇の一番大きな原因は、エネルギー・原材料価格の上昇ということなので、これ自体をすべて押さえ込もうとすると、景気に対して大きな影響が出るので、この一時的な影響それ自体はとりあえず受け止めざるを得ない。ただ、これが賃金・物価の悪循環になるような事態、いわゆる2次的効果は避けるべきであると考えている。現在、それがが起きているのかということがポイントになるが、現時点ではまだ起きてはいない」「景気と物価のリスクについては、現在は双方に注意が必要な局面であるということで、そこにはウエートの差をもうけていない。その意味では5対5」
 ◎白川総裁(7月15日・決定会合後の記者会見):「米国経済は停滞しており、世界経済には下振れリスクがある」「(日本)国内民間需要については、国際商品市況の高騰に伴う所得形成の弱まりから下振れるリスクがある」「原油など国際商品市況高を背景に、世界的にインフレ圧力が一段と高まっている。日本の物価については、エネルギー・原材料価格の動向に加え、消費者のインフレ予想や企業の価格設定行動の変化など、上振れリスクに注意が必要」
 「(日本は)スタグフレーションの局面に入ったとは判断していない」「(原油価格)需要に支えられ国際商品市況は先行きも高水準で推移すると想定している。つまり、この先どんどん上がる、あるいはこの先明確に下がるということは想定せずに、高水準で推移するという想定を立てている」
 「金融政策の判断は、金融政策の効果の波及にはかなり長いタイムラグあるということを十分踏まえる必要がある。(中略)したがって、先行き1年半から2年程度の経済の姿、物価の姿を展望しながら今の政策金利の水準を考えていくということになる。そういう観点で景気の姿をみてみると、(中略)現在ここで金利水準を調整する必要はない」「足もと景気がさらに減速していることの一番大きな原因は、交易条件のさらなる悪化」
 「(米経済)従来の2008年末から09年にかけて段々に成長率が上がっていくという見通しが少しずつ後ずれしているような感じがする」「(生産の減少基調)今回景気がさらに減速しているということを裏付けるひとつの材料として認識」「原油価格上昇の背景を考えると、(中略)あえて強いポジションは取らずに、現在の高い水準で推移するということでまずシナリオを立ててみるということが、責任ある当局としての予測の立て方」
 「いろいろなデータをみていると、例えば家計の予想インフレ率が少しずつ上がってきているということがある。(中略)少しずつ家計の物価観が変わってきている可能性もあるし、企業の価格設定態度が少しずつ変わっていく可能性もある。したがって、セカンド・ラウンド・エフェクトがこの先起きてこないかどうかは丹念にみていく必要があると思っている。現在は起きていないということなので金融政策で対応しなければならないということではない」
 「交易条件のさらなる悪化は織り込んでいない」「(期待インフレ率を測る指標)相対的に信頼できる指標として、賃金の動き、あるいは賃金の設定態度というものが挙げられる」
 「この1年間の欧米の金融市場を顧みてもそうだが、突然大きなショックが襲うことは当然ある。ここで言うリスク要因が──特に第2の柱がそうだが──顕現化すると当然そこで大きく経済の姿が変ってくる。その時には経済の姿の変化に合わせて政策ももちろん急に変わることもあり得る」
 「現在、実質の短期金利は、非常に低い水準であり、コールレートが0.5%、消費者物価上昇率(除く生鮮食品)が1.5%なので、単純に計算するとマイナス1%となる。(中略)一方、経済の潜在的な成長率は、正確な計算はできないが、1%台半ばから後半と想定できる。そういう意味で実質短期金利が持つ潜在的な景気の刺激力というのは大きなものがある。ただ、現時点で様々な景気の下押し要因が働いている中で、これが目に見えるかたちで力を発揮しているわけではない。逆に言うと、そうした諸々の下振れ要因が消えてくると、これが潜在的に持っている力が発揮されてくる」
 (ロイターニュース 志田義寧)

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