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2008年08月12日(火) 09時32分

石油製品卸値の新方式 価格改定を週単位に 原油の値動き素早く反映産経新聞

 新日本石油や出光興産など石油元売り会社が、ガソリンなど石油製品の卸価格の値決め方式を10月に見直す方向で調整しています。現在の1カ月または半月での価格改定から週単位に変更する方針です。湾岸戦争後の1990年以降続けられてきた現在の値決めを、なぜこのタイミングで変えるのでしょうか。
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 元売り各社が卸価格の決定方式を変更するのは、最近の原油価格の値動きが激しくなっているためです。現行の先月26日〜当月25日の原油価格の変動分を翌月の卸価格に反映させる仕組みでは、原油価格の値動きをガソリンの卸価格に転嫁するのに“時差”が生じてしまいます。たとえば8月の元売り各社の卸値は原油価格が値下がり局面にあるにもかかわらず、1リットルあたり5〜6円の値上げとなりました。というのも、価格改定の前提となる7月の原油価格が上昇したためです。7月11日には米国の原油先物相場で1バレル=147ドル超の史上最高値を更新しており、上昇した原油コストを翌月の卸値に反映したわけです。ただ、この方式だと、「最近の原油価格は下落しているのになぜ、値上げするの?」という疑問が起こりかねません。
 このため、原油価格の変動を即座に卸価格に反映させる仕組みを目指し、値決め方式の変更に着手したというわけです。新たな値決め方式は、価格改定の指標として東京工業品取引所の先物価格や、調査会社が公表するスポット価格に照らして決める予定です。見直し期間も1週間単位に見直す方針です。
 これに対し現行方式は1カ月または半年原油価格を基にしており、目安となるのは原油価格の変動に伴う調達コストの増減です。新日石では原油価格が1バレル=1ドル上下すれば、ガソリンの卸値を1リットルあたりで0・7円上げ下げする仕組みでした。ただ各社とも軒並み同じ方式を採用していたにもかかわらず、実際の卸値はまちまちでした。これを市場価格に連動させる方式に変えることで「透明性と公平性が高まる」と出光の天坊昭彦社長は期待します。原油相場との連動が強まるため、これまでより原油価格の値動きを迅速に店頭価格に転嫁できると各社は予想しています。
 新方式はガソリンなどの需給要因も反映する方針です。需給要因も考慮されるようになれば、市場原理が働き、ガソリンなどのように需要が減少している石油製品では、値下げとなる可能性もあります。
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 一方で、軽油は、中国や東南アジアでの需要拡大でアジア市況が高止まりしています。国内の石油元売りは、国内より販売価格の高い軽油をアジアに積極的に輸出しており、ガソリンに比べ需給が逼迫しています。このため、市場価格連動型が導入されると軽油については逆に値上がりする懸念もあります。
 こうした側面を含め、石油業界は新たな値決め方式の内容をしっかりと消費者に説明する責任が求められそうです。(今井裕治)

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