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2008年08月12日(火) 08時01分

輸入小麦また値上げ 半年で50% パン・めん類直撃産経新聞

 農林水産省は11日、輸入小麦を製粉会社に売り渡す価格を10月から引き上げる方向で検討に入った。引き上げ幅は20%以上になる可能性もあり、そうなれば4月の引き上げ分と合わせて半年で50%程度の値上げになる。輸入小麦を原料とするめん類やパンなどの値上げにもつながり、家計への打撃となりそうだ。8月中に正式決定する。

 輸入小麦は過去8カ月に政府が買い付けた価格の平均を反映させる形で、売り渡し価格が決まる。4月には8カ月平均の買い付け価格が38%上昇したが、売り渡し価格は「国民生活に配慮」(農水省)して30%の値上げに止めた。

 だが、10月の改定価格に反映される平均買い付け価格は20%以上上昇。農水省はそのまま売り渡し価格に転嫁させることも含めて検討している。その場合、現在の平均で1トン当たり6万9000円の売り渡し価格が8万2800円になる。

 農水省が小麦の売り渡し価格を引き上げれば、その影響は小麦粉をつかってパンやめん類を製造する食品メーカーを直撃する。各社とも価格転嫁の検討を行う構えだが、すでに小麦価格の高騰を理由に値上げをしてきた経緯がある。再値上げは消費者の反発を招き、売り上げ減という形で各社の業績を圧迫しかねない。今回の売り渡し価格が引き上げられても、どこまで価格に転嫁ができるかは不透明だ。

 ■価格転嫁か維持か

 農水省が小麦売り渡し価格を引き上げれば、製粉大手はその分をほぼ全額、小麦粉の価格に転嫁するとみられる。このため、小麦粉を使ってパンやめん類を製造する食品メーカーがどこまで商品価格に転嫁するかが焦点になる。

 昨年12月と今年5月に、値上げを実施している製パン業界のうち、最大手の山崎製パンの飯島延浩社長は「価格改定を検討せざるを得ない」と語る。

 ただ、業界内では「5月の値上げでは、販売数量が落ち込んだ」(製パン大手)として、再値上げによる業績への悪影響を懸念する声もある。このため、価格転嫁するにしても、どこまで引き上げ分を反映するかは、今後慎重に検討していくことになる。

 ■ちらつく販売激減

 即席めん業界も厳しい選択を迫られる。今年1月に大手が相次いで値上げした結果、販売量が激減。業界全体の生産量が前年に比べて25%も落ち込んだ。このため、農水省が4月に売り渡し価格を引き上げた際には、価格を据え置かざるを得なかった。今回は「商品価格の見直しをもう一度考えざるを得ない」(日清食品の中川晋専務)との声もあるが、「値上げして売り上げが減ったのでは意味がない」との懸念も根強い。

 価格転嫁の有無やその規模に悩むメーカーが多いなかで、今回、値上げしないことを“表明”している企業もある。

 5月に値上げを実施した「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは「すでに、小麦や油脂など、今期の値上がり分をすべて織り込んで値上げをしている」(経営企画部)と説明している。

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