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2008年08月09日(土) 10時00分

【トレンド】【動画付き】小さいヤツだけど本格ロボット! カニ型ロボット「HEX BUG Crab」nikkei TRENDYnet

 ちょこまかと横に歩き、大きな音がするとビックリして進行方向を変える。そして暗いところに入ると、まるで岩場の影に隠れるかのようにピタリと動きを止める——。「HEX BUG Crab(へクスバグ クラブ)」は、そんなカニの動きをリアルに再現したマイクロロボットだ。バンダイより、2007年9月に発売された昆虫型ロボット「HEX BUG」シリーズの第2弾として、8月9日より発売される。

【詳細画像または表】

 開発はバンダイではなく米国のInnovation First社。ロボットコンテストに用いられるロボットキットや、大学などの教育機関向けのロボット製品を開発している同社が、低価格でより多くの人にロボットを楽しんでもらいたいとの思いから作り出された商品だ。プロ向けのロボットを作る技術力を持つだけあって、「HEX BUG Crab」にも優れた技術が随所に使われている。

 例えば各種センサーの搭載。手の平に楽々乗せられる小型サイズながら、手を叩くなどの大きな音によって進行方向を変えるための「音センサー」や、岩場の影に隠れる動きを再現するため、暗闇を感知する「光センサー」を組み込んだ。さらに芸が細かいと言えるのが、実際のカニが岩場の奥に入ってから隠れるように、「HEX BUG Crab」も暗闇を感知してから3秒後に動きが止まるようにプログラムしているのだ。

 さらに8本の足が単純な動きにならないように、わざわざ3つに分けて組み立てられたリンク機構も特筆すべき点だ。リンク機構とは、機械工学の分野では古くからある技術で、一つの棒(脚)が動くことによって、そこに連結された部位も次々と動き、新たな動きを発生させるというメカニズムのこと。「HEX BUG Crab」は、このリンク機構をシンプルに簡素化しているため、この大きさに3つも組み込むことができたのだ。このように、通常のロボットに使われているような技術をこのカニ型ロボットにも惜しみなく使っている。

 これらの複雑な動きすべてが、わずか直径6ミリのマイクロモーターと、いくつもの小さなギアによって生み出されているというのだから驚かされる。

 「センサーやマイクロモーターなど、一つひとつの技術は最先端のものではなくベーシックなものです。しかし、それらをリアルな生態の表現に使うといった発想や、この小さいロボットに、すべてを盛り込むという技術はすごいものがあります」(近藤創氏 バンダイ プレイトイ事業部)。

 日本のロボット研究の権威であり、日本ロボットコンテストの創始者でもある森政弘東京工業大学名誉教授も「よくこんなに小さくまとめることができたと感心しました。Innovation First社の腕前と技術の進歩、とくに小型モーターの進歩に敬服します」とコメントを寄せている。

 昨年発売された第1弾の「HEX BUG」は、米国では150万個も売れるヒット商品となり、日本でも累計販売数が既に12万個を超えている。だからこそ、この第2弾にかかる期待も大きい。

 そもそも、なぜこのようなマイクロロボットを販売するようになったのか。そして日本でもヒットする確信はあったのだろうか。

 「日本での発売が決まった時点では、米国で爆発的にヒットしているという情報はありませんでした。ただ、シンプルだけどリアルな動きや、スケルトンボディーのメカっぽさが、男性なら誰もが持っているロボットに対する憧れを喚起させる。また、パッケージも含めたデザインが未来的でスタイリッシュなので、インテリアとしても受け入られるのではと思いました」(近藤氏)

 予想は的中した。購入者の多くは30歳以上の男性だという。確かにロボットに大きな憧れを持っている世代。なかには子どものためにと言いながら、実は自分のために買う父親もいるらしい。また低価格であることもヒットした要因の一つだろう。普通ロボットの世界では小型になればなるほど価格は高くなる。それに、先端技術を使おうものなら5万円を超えてしまうものすらある。しかし「HEX BUG」は“超小型”ロボットにもかかわらず、わずか1995円。第2弾の「HEX BUG Crab」も2625円と、つい手を出してしまいそうな価格だ。

 「HEX BUG Crab」のちょこまかとした動きはなんとも愛らしく魅力的。そして、スケルトンボディーのメカっぽさは確かに男心をくすぐるものがある。さらにロボットをペットにしたいという憧れを簡単に叶えさせてくれる手ごろな価格設定もうれしい。

 今後、「HEX BUG」シリーズは、第3弾、第4弾と新たな商品を登場させる予定だ。具体的な昆虫や動物はまだ決定していないものの、リアルな生物っぽい動きと、コンパクトかつ低価格という基本コンセプトは変わらない。「HEX BUG」シリーズを筆頭に1万円を大きく切る低価格の本格マイクロロボットという新たなジャンルが確立されるかもしれない。

(文/前田和之=AGITO)

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