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2008年08月09日(土) 10時00分

【トレンド】北京もいいけど東京も熱い!『東京オンリーピック』真島理一郎インタビューnikkei TRENDYnet

 『スキージャンプ・ペア』で一世を風靡(ふうび)した映像クリエイターの真島理一郎氏が手がける第2弾映画『東京オンリーピック』が、2008年8月8日に公開される。15組の国内外のクリエイターが集まったオムニバス作品で、タレントの中川翔子や前作に引き続き盟友の茂木淳一を起用。既に9月26日にDVD発売も決定している。北京に負けない熱いスポーツ映像の祭典が幕を開ける。 真島氏に同作への思いや仕事の進め方、さらには現在の映像クリエイター界の動きなどを聞いた。

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 在学していたデジタルハリウッドの卒業制作『スキージャンプ・ペア』で、世間を驚きと爆笑の渦に巻き込んだ真島監督。同作は2006年に映画版も公開されたが、これに続く第2弾映画『東京オンリーピック』では、15組のクリエイターが集結。1競技にスポットを当てた前作と違い、多数の競技をCGや実写、手書き、パペット(人形)などで描いた。開閉会式および2つの競技を手がけ、総監督も担当した真島監督が今度は世間にどんな「イタズラ」を仕掛けているのか。

 『スキージャンプ・ペア』をやっていて、いろんな人から「ほかの競技も作ってください」という話があったんですが、どうしても二番煎じになってしまう。だから、僕自身はほかの競技にあまり興味がなかったんです。ただ、スポーツ大会のお祭り感というか祝祭感が好きなので、それを表現したいというのは以前から思っていました。今回企画を一緒に進めたファンワークス(※1)の高山晃社長とカフェでお茶をしたときに、「いろんなクリエイターさんが集まってスポーツ大会みたいなことをやったらどうですか」と提案されたんです。それなら祝祭感も出せるし、1人ではできない、多くの人が楽しめる面白いエンタテインメントになると思い、スタートしました。

 やっぱり人の好みはそれぞれで、『スキージャンプ・ペア』を大好きな人もいれば、笑えない人も当然いるわけです。そういう人でも、15組のクリエイターが集まれば、どれかにハマるものがあるだろうと。いろんなエンタテインメントを詰め込んだ「おもちゃ箱」を作りたかったんです。小学生のころに誰かにイタズラにしているような感覚です。あんまりやりすぎちゃうと、いつか怒られちゃうとも思っていますが(笑)。ちなみに、僕が手がけた「男子親離れ」は世界中の男子に送る母親への愛がテーマ。デジタルハリウッド大学(※2)の4年生、澤田裕太郎君と共作した「男子ヒューマニズム」は、戦争の愚かさがテーマになっています。

※1ファンワークスとは、Webから生まれた人気キャラクター「やわらか戦車」などネットアニメやテレビアニメなどを手がける制作会社。商品化ライセンスやクリエイターのマネジメントなど幅広くビジネスを展開。

※2真島氏の母校。映像クリエイターやデザイナーなどの養成機関。専門スクール、大学、大学院、通信教育、法人研修などの教育サービスを展開している。真島氏を含め、多くの有名クリエイターを輩出している。

 当初はDVD作品として企画された『東京オンリーピック』だが、映画化されるに当たり、真島監督は上映時間と作品の長さとの葛藤(かっとう)に悩まされたという。

 映画版を作るに当たって、どこをカットするかとの闘いでした。自分の作品だったらいくらでも切れるんですけど。元々、DVDメインで始まった企画なので、クリエイターさんたちにも厳密に尺(作品の長さ)を指定せず、5〜10分くらいの作品を作ってくださいとしか言っていなかったんです。ところが、劇場公開というありがたい話が出てきて、各作品の時間が制限されるようになった。最初の段階では、作品時間が3時間を超えちゃったんですよ。DVDでは3巻に分けるので問題ないのですが、劇場で流すにはテンポも悪く、さすがにお客さんが苦痛になってしまいます。そこで、10分を超える作品についてはクリエイターさんに、恐縮しながら短縮版を作ってもらった一方、自分の作品をカットしたり、中川翔子さんと茂木君の実写パートの“だらだらトーク”部分を大幅にカットしたんですが、それでもオーバーしていました。最終的には、外国人クリエイターによる3作品を泣く泣く外してようやく2時間30分以内に収まったんです。その代わり、その3作品は劇場のロビーで流すようにしてもらいました。

 各クリエイターさんには、「人間が行うスポーツ」という以外はすべて自由にやってもらいました。競技が重複したときだけ調整させてほしいとは伝えていたんですが、実際はなかったですね。みんな変な競技ばっかり作ってきたので(笑)。それと、開会式であいさつしているのは父です。『スキージャンプ・ペア』のガイドブックにも会長として登場しています。国際的なスポーツ大会って会長あいさつがあるじゃないですか。だから出てもらわなきゃなと。英語でのあいさつは、カタカナで書いた台本を撮影当日に渡して「英語を話せない人が一生懸命カタカナ英語を暗記して読んでいる」ような雰囲気を出しました。撮影ではだいぶ緊張していたみたいですが。父親を演出するのって変な気持ちでした(笑)。

 今作で「スキージャンプ・ペア」とはひと味違ったユーモアを出している真島監督。そのアイデアはどこから出てくるのだろうか。

 まずネタを考えて、脚本を作ります。絵コンテをちゃんと描くときもありますけど、今回は落書きレベルでした。僕は「バーっと」とか「ガーっと」とか感覚的にスタッフに伝えちゃうんですが、今回はCG監督の渡辺誠之さんとすごく波長が合って、すぐに理解してもらえました。作り方は、最初はザックリとですけど、僕なりのこだわりがあって、そういう部分では微妙な違いが気になります。細かいところを何度も何度も作り直したりします。

 ネタについては、普段から、何か面白いことはないかなと頭の中で考えていますが、面倒くさがりなので、常にノートへ書き留ということができません。メモ帳ってどこかにいっちゃうんですよね(笑)。あのときのネタはどのメモ帳に書いたんだっけ、なんてこともしばしば。「神が降りる」というか、アイデアがバーンと沸いてきたときは、そのまま作っていますし。ただ、書きなぐっているうちにアイデアが浮かんでくることもよくあるので、書くことは大切だと思います。

 こうした真島監督のアイデアをさらに昇華させているのが、「スキージャンプ・ペア」の「実況調ナレーション」でおなじみの茂木淳一氏だ。今作ではナレーションに加え、中川翔子さんとともに司会も担当している。

 茂木君は大学時代からの友人。ナレーションはアドリブなしで、彼と一緒に脚本を作り込んでいきます。僕が映像を作って、こんな感じでやりたいという方向性をざっと示すんですが、その時点ではニヤっとする程度。彼はそれをさらに面白くしてくれる。とにかく言葉のセンスが素晴らしく、僕の作品にとってなくてはならない存在です。

 かつてない手法で世間をあっと言わせ続けている真島監督だが、最近の映像クリエイター界の動きについてはどのように感じているのだろうか。

 蛙男商会さん(※3)や、GOLDEN EGGSのプラスヘッズさん(※4)などは、会話の面白さがすごいなあと思います。僕には出せない世界観です。僕はカッチリと、真面目な語り口でしかできない。かしこまった感じの中で面白いことをやるのが好きで、会話っぽいのが下手なんです。やってみたいとは思うんですけどね。2組ともすごく好きで、今回の『東京オンリーピック』にも参加していただきたかったほどです。

 ただ、最近はこれを真似ているアマチュア作品が多いなと感じます。たまにコンテストの審査員をやるんですけど、アニメーションの動きで面白さや気持ちよさを表現した作品がちょっと少ないのが残念です。まあ、面白ければ何でもいいんですけどね(笑)。

※3FLASHを使ったWebアニメーションのクリエイターであるFROGMAN氏が代表を務めるコンテンツ制作会社。FROGMAN氏がFLASHの制作から声優までを一人で担当する。Webだけでなく、テレビや雑誌、漫画など幅広いジャンルで活躍中。代表作は『秘密結社鷹の爪』『菅井君と家族石』など。

※42005年にキッズステーション・MUSIC ON TV!で放送を開始したCGアニメ「The World ofGOLDEN EGGS」の制作会社。一見、海外のアニメのような世界観の中で、日本語で展開される独特の作風が特徴。CMなどにも起用されている。

(文/コジマリョウヘイ、写真/山西英二)



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