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2008年08月09日(土) 10時00分

【トレンド】【ヒット続出】これはおつまみ?菓子?「少量」「本格」で売れる“大人スナック”の波nikkei TRENDYnet

 昔からの定番商品が並ぶスーパーやコンビニの「おつまみ売り場」は、代わり映えがしない印象があった。しかしここ最近、今までにない大きな波が起きている。

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 その筆頭が、グリコの「チーザ」。チーズを51%以上練り込み、濃厚なチーズのうまみが味わえる“洋風おつまみスナック”だ。今年2月の発売直後から売れに売れ、一時は欠品による出荷休止となった。4月の販売再開後も好調で、おつまみ市場では異例のヒット商品となっている。「出荷停止前までは北海道から近畿地区で発売をしていたが、在庫の確保がいまだに難しく、全国発売はできていない状態」(江崎グリコ広報IR部・吉村貴宏氏)という。

 食べてみると、濃厚な味とカリカリとした食感が組み合わさり、「本物のチーズとスナックの中間」的な独特の味わいが楽しめる。「この食感は、チーズ加工をする際にでんぷんを使用する『ハイチーズ製法』によるもの。特許出願中のグリコオリジナルの技術」(江崎グリコ・吉村氏)という。

 グリコの“洋風おつまみスナック”シリーズは、実は2005年に発売した「クラッツ」が最初。菓子メーカー大手のグリコがおつまみ市場に乗り出したのはなぜだろうか。

満を持して、おつまみ市場に乗り込んだグリコ「洋風」「少量」「本物感」を前面に

 グリコがおつまみ商品に着手することを決めたのは、2002年ごろ。「2003年の酒税法改正を機に酒類の売り場が全国のスーパーやコンビニでも拡大し、おつまみ需要も伸びると予測できた」(江崎グリコ・吉村氏)。さらに、30代男女を中心に「宅飲み」(自宅で仲間と酒を飲むこと)が増えるなか、こうした若い世代の求めるおつまみが市場になかったことも背景となっているという。

 若い世代が食べたいおつまみとは何か。そのキーワードとして出てきたのが、おつまみの売り場では珍しかった「洋風」、量を求めない彼らに適した「少量」、さらに少量でも満足感が得られる「濃厚さ」と「本物感」だった。そうして生まれたクラッツとチーザは、「和風の商品が多いおつまみ売り場で、目立つ存在として受け入れられた」(吉村氏)わけだ。

老舗・なとりも「ボトルタイプ」「高級系」などを相次いで投入

 一方、おつまみの老舗・なとりもこれまでにない商品を展開している。ガムやチョコでおなじみのボトルタイプのおつまみや、金色のパッケージで高級感を演出した「一度は食べていただきたい」シリーズ、洋風の新しい食べ方を提案する「ディップするおつまみ」、チルドタイプの「くちどけチーズたら」など、ユニークな商品を相次いで投入。話題が絶えない菓子売り場と比べて地味な印象が強かったおつまみ売り場にも、変化が起こっているようだ。

女性は「チーザ」を菓子にする!? ヒットの影には“大人スナック”の密かなる拡大が

 「チーザ」のヒットは、おつまみ市場のなかだけで語れるものではない。「おつまみとしてだけではなく、『高級感のあるスナック菓子』としても売れている」(グリコ・吉村氏)という。しかし、38gで190円前後と、従来のスナック菓子よりも少量で高いチーザがスナックとして売れている理由は何なのだろうか。

 実は、少量で高い“高級系”の波は、すでにスナック菓子売り場でも起こっていた。スナック菓子最大手のカルビーが販売している、じゃがいもを皮付きのまま揚げて素材感を活かした「ジャガビー」や、海外のポテトチップスのようなイメージの「オリーブオイルポテトチップス」は、同社のほかのスナック商品と比べると少量で高い。だが、ターゲットの20〜30代女性を中心に好調な売れ行きだという。

 「大人向け商品では、付加価値として素材感や本物感をかなり意識している」と語るのは、カルビー・マーケティンググループの臼井大二氏。上記の商品のほかにも、「サッポロポテト つぶつぶベジタブル」「ベジたべる」「さやえんどう」といった野菜の素材を前面に出した商品も30代以上の大人に受けている。「スナックにおいしさや楽しさだけでなく、素材感や安心感を求める傾向が高まっている」(カルビー・臼井氏)というわけだ。

「残してしまうのはもったいない」“適量感”がスナック菓子世代の大人を引きつける

 チーザと大人向けスナック菓子の共通点としては、「少量」であることも大きい。ただ、メーカーに共通するのは、「少量よりも適量」という感覚だ。かつては内容量が多いほうがお得感があって好まれたが、最近では「(多いと)残してしまうからもったいない」「多いとどうしても食べ過ぎてしまう」といった意見が多く聞かれるようになった。

 そういった理由から、カルビーでは既存商品の少量タイプや4連タイプも増やしており、売れ行きは好調。少なくて多少割高になってしまっても、自分に合ったサイズがいい。そこには、「スナック菓子の消費シーンが“大勢でシェアして食べる“から、“1人で食べる”シーンへ変化してきたという背景もある」(カルビー・臼井氏)。

 カルビーの調査では、意外にもスナック菓子の消費層(実際に食べている層)は中学生に次いで30代が多く、近年では40代の消費層も伸びつつあるという。スナック菓子業界では、メーンユーザーである小学生から高校生にはボリュームや新しいフレーバーで訴求する一方、大人向けには「素材感」や「適量感」を重視した商品を展開していくという流れが加速していくだろう。

 大人の“少し贅沢な“ニーズを満たす、おつまみにも菓子にもなる“大人スナック”はまだまだ増えて行きそうだ。

(文・つくしの万葉=プレスラボ)

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