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2008年08月09日(土) 10時00分

【トレンド】マラソンを目指す人注目! 走る能力を科学で分析するアシックス・ランニングラボnikkei TRENDYnet

 メタボ対策でしぶしぶ走り始めたものの、ランニングの楽しさにはまり、本格的に走り始める人が増えている。しかし、そうなると自分のフォームやトレーニング方法が、それでいいのか気になるもの。

【詳細画像または表】

 そんな悩める市民ランナーにありがたいサービスが、この春、銀座に登場した。アシックスの「ランニングラボ東京」だ。ここでは、市民ランナーの走りを科学的に測定・分析し、シューズ選びやトレーニング方法のアドバイスをしてくれる。7月22日から東京マラソンのランナー募集が始まったが、測定結果を基にフルマラソンやハーフマラソンの想定タイムも算出できる。

 私は、ランニングを始めてもうすぐ8年。フルマラソンはとりあえず何度も完走したが、記録は市民ランナーとしては底辺レベルだ。健康的に楽しく走れるだけでいいと自分をなぐさめているものの、自分の走りが実際にはどうなのか、やっぱり気にはなる。そこで、さっそくこのランニングラボを体験してみた。

「走る」能力を、さまざまな角度で科学的に計測

 アシックスのランニングラボは、もともと神戸の研究所で、実業団選手を対象に行われていたサービスだ。対象を市民ランナーに広げたところ好評だったので、2008年4月から銀座のアシックスストア東京で受けられるようになった。

 ランニングラボでは、ランニング能力について、様々な側面から科学的に測定し、アドバイスをしてくれる。測定内容は、次のようなものを実施する。

1.体格的側面(足型・下肢アライメント・体組成測定)

 まず足型。三次元足型計測機「INFOOT(インフット)」という機械を用いて測定する。片足ずつ機械に入れると、立体的にスキャンされ、足の形や左右のバランスが0.1mm単位で分かる。

 下肢アライメントの測定。「骨の配列」のことだ。これは担当者が、定規のようなものを使って手作業で測ってくれる。骨格から、左右のバランスやO脚、X脚の程度などがわかる。また、股関節、膝、踵などの柔軟性もチェックする。

 体組成も計測対象だ。スポーツクラブなどでおなじみのプロ仕様の体組成計で、身長、体重、体脂肪率などを測定する。

脚の筋力やランニングフォームも測定、分析

2.筋力的側面(脚筋力測定)

 等速性筋力測定器を使用して、膝を曲げる力と伸ばす力を測定。着地後の重心の落ち込みを抑え、また推進力を生み出す最も重要な筋力だ。他のランナーと比べた筋力のレベルや、前後左右のバランスが分析できる。

3.動作的側面(ランニングフォーム測定)

 トレッドミルの上で走る姿を前、横、後、上の4方向からビデオ撮影して、フォームの特徴を分析する。撮影記録のダイジェストは、DVDでもらえるので、後から自分の目で見て確認できる。走る速度を徐々に上げていき、速度によるストライド(歩幅)とピッチの変化も測定される。

ランニング中の呼気を分析して全身耐久力を測定

4.持久的側面(全身持久力測定)

 マスクを付けて徐々に速度を上げながら走り、呼気と心拍数をチェック。疲労がたまらない範囲で走り続けられる「ATペース*1」と、きついと感じ出す「RCTペース*2」を測定する。これらの値から、持久力から見たタイム予測値が算定される。

 これらの測定メニューをすべてこなすには、だいたい2時間から2時間半かかる。測定データと分析結果は「能力測定結果表」として、3週間から1か月後にA4で15ページほどのpdfファイルにまとめられ、ランニングラボWebサイトの「My Page」からダウンロードできる。またトレッドミルでのランニング映像は、DVDに焼いて郵送してくれる。

 能力測定結果表には各データの見方について、解説やまとめがついている。また、測定時にもらう70ページの小冊子「Running Science」にも詳しい説明があり、併せて読むと測定結果の意味やトレーニング方法がよく理解できる。それでは、私の測定結果をもとに、どのような結果やアドバイスがもらえるのか、実際に見ていこう。

*1:ATとは「Anaerobic Threshold」(無酸素性作業閾値)の略で、有酸素運動から無酸素運動へと変わる境界のこと。ATを正式に測定するには血液検査が必要になるため、ランニングラボでは呼気の酸素と二酸化炭素濃度から測定する「VT」(Ventilatory Threshold、換気閾値)によってATを判定している

*2:RCTは「Respiratory Compensation Threshold」(呼吸性代償閾値)の略。ATを超えて、血中の二酸化炭素濃度が増えて換気量の増大が起こる点のこと

足型を精密に測定したからこそ分かる、シューズ選びのポイント

 自分の足を正確に測定してもらうのは、初めての体験だ。私の左足の長さは253.5mm、右足は250.6mmでシューズのサイズは「26.0〜26.5cmが妥当と思われます」とのこと。普段、革靴は25cmを履いている。

 実は、最初に買ったランニングシューズは25.5cmにした。しかし、長く履いているとつま先部分がしびれて痛むという失敗を経験したため、現在は主に26.5cmのシューズを履いている。今回の測定によれば、現在の選択が正しいようだ。

 ランニングシューズは革靴よりも大きめのサイズを選べと言われるが、つい小さめのシューズを選んでしまう人が多いのではないだろうか。試し履きをして選ぶのが原則とはいえ、きちんとした測定結果をもとにアドバイスを受けられると安心だ。

 また、足型測定では、足の幅や形状、かかとの傾斜角度などがわかり、どのような故障が起きやすいかといったアドバイスを得られる。筋力や走歴などから、アシックスならこのタイプといったお薦めシューズを具体的に示してもらえるのもありがたい。

意外に知らなかった、自分の骨格と柔軟性

 下肢アライメント測定では、股関節や足関節の柔軟性、O脚・X脚の有無など、下半身の柔軟性と骨格構造がわかる。

 私はややO脚気味と思っていたが、標準域内ということがわかって、ちょっと安心。意外だったのは、股関節がかなり硬いということと、左右のバランスが悪いということだ。身体は全般に硬いと思っていたが、どこが特に硬いというのは、あまり考えたことはなかった。

 能力測定結果表には測定データに併せて、どのようなストレッチをするべきか、トレーニング方法のアドバイスが示されている。ストレッチは面倒でついさぼりがちだが、今後はまじめに取り組むべきだろう。

体組成計では、脂肪量や筋肉量をチェック

 体組成測定では、体脂肪率、脂肪量、筋肉量などが分かる。私は体脂肪率、筋肉量とも標準的ということで、少しほっとする。年齢を考えれば、標準体型をキープできているのは、ランニングのおかげだろう。

 ただ、「体脂肪率は25.3%で、一般女性としては標準的ですが、ランナーとしてはやや体脂肪を減らす必要があります」とのこと。最近、トレーニングをさぼり気味の結果が、まともにでたようだ。ランナーとしてのレベルアップのためにも、健康的な体型維持のためにも、油断はしていられない。

筋力の強さとバランスを知る

 筋力測定では、左右の膝を伸ばす力と曲げる力がわかる。私の脚力レベルは、「平均〜やや低い」ということで、楽しんで走る“ファンラン派”としては、まあ、そんなものかもしれない。ただ、筋力トレーニング方法が紹介されているので、レベルアップのためには、筋力トレーニングも取り入れたほうがよさそうだ。

 膝を曲げる力と伸ばす力のバランスでは、一般ランナーは膝を曲げる筋力が弱い傾向にあるそうだが、私は左右とも標準の範囲内。ただ、私は膝を曲げる力の左右差がやや大きいことが分かった。骨格やフォームなどから見て、やや左右のバランスが悪いようだ。

ランニングフォームの分析とDVD映像で、自分の特徴が一目瞭然

 ランニングフォームについては、速度別のピッチ(1分間あたりの歩数)とストライド(歩幅)がグラフ表示され、写真を基にフォームの特徴が説明される。別途郵送されるDVDでは、自分が走っている姿を動画で見られるので、写真では分かりにくい自分のクセが、細かい部分まで分かって面白い。

 ただ、自分のフォームの特徴がわかっても、それを無理に矯正しようとするのはよくないそうだ。アシックス ストア 東京 ランニングラボ シニアコンサルタントの草山次郎氏によれば、「フォームについては、あまり意識しないことが大事」という。

 「基本的にランニングフォームは、いまの自分自身の関節の柔軟性や筋力の強さから、いちばんリズムがとれて走りやすい走り方を選んでいるはずです。一部を変えようとすると、全体のバランスが崩れます」。

 「まずは、そのようなフォームになっている原因を探り、例えば筋力が弱いなら筋力を鍛える、柔軟性がなければ柔軟性をアップするといったトレーニングをすれば、自然にフォームもよくなります」(草山氏)とのこと。分析したフォームから、どのようなトレーニングをすればいいかというアドバイスは、最後にまとめて記載されている。

気になるフルマラソンのタイム予測は?

 「全身持久力測定」では、呼気と心拍数から計算したATペースとRCTペース、それらの値から予測できるタイム予測がわかる。ATペースは7分3秒/km、RCTペースは6分9秒/kmと、自分で考えていたよりは速かった。トレーニングでATペース走をするつもりなら、今後はもう少し速く走る必要がありそうだ。

 気になるタイム予測だが、私の場合は、フルマラソン5時間19分、ハーフマラソン2時間20分で、自己ベストタイムのフルマラソン5時間21分、ハーフマラソン2時間17分とかなりよく一致した。

 タイム予測は、あくまで全身持久力から割り出した値なので、トレーニングが足りずに30km以降に脚の筋持久力が持たないときなどには、予測値よりも遅くなるという。私の場合はほぼ予測値通りなので、記録を伸ばすためには、心肺力を上げるトレーニングが必要だということか。

 ただ、「トレッドミルランニングに慣れていないので、全身持久力は過小評価されている可能性があります」というコメントがついている。実際、心拍数が普段の練習やレースのときよりも10拍くらいは高く、かなり緊張して走っていたようだ。もしそうなら、ペース配分や筋持久力のトレーニングで、もう少し記録を伸ばせる可能性もある。

測定・分析結果を今後のトレーニングに生かすには

 「能力測定結果表」には、データと解説のあと、トレーニングの指針が数ページに渡って掲載されている。ランニングトレーニング、筋力トレーニング、柔軟性の向上、フォームの改善、お薦めシューズについて、計測結果からどのようなトレーニングをすればよいかがよく分かる。

 筋力トレーニングや柔軟性アップのためのトレーニングについては、測定時にもらえる小冊子「Running Science」に写真などを使っていくつかのトレーニング例が詳しく説明されている。そのうち自分はどのトレーニングを重点的に行えばいいか推奨されているので、すぐにも実践できそうだ。

 なお、小冊子には、各測定の意味、レベル別のトレーニングメニュー例などについて詳しく紹介されているので、じっくり読めば、今後のトレーニングに大いに役立ちそうだ。

正確な測定をするための注意ポイント

 最後に、実際にサービスを利用するときのポイントを挙げておこう。予約は測定日の30日前から、ウェブサイトで申し込む。予約するにはMyPageへの登録(無料)が必要だ。利用料2万1000円は、クレジットカードで支払うことになる。

 私の体験からは、正確に測定してもらうためには、トレッドミルには慣れておくことが重要だと感じた。私は2年ほど前に10分ほど走ってみただけで、トレッドミルはほとんど初体験。実際の測定前に練習走はあるものの、メガネを外したこともあって、何とも不安な状況での測定になった。

 スポーツクラブに入っていなくても、最近では公共のスポーツ施設で1回数百円程度で利用できるところが増えている。測定前に、何度かトレッドミルで走る練習をしておくといいだろう。

 またメガネをしている人は、呼気測定のためのマスクをつけるので、トレッドミルでの走行時にメガネを外す必要がある。よく見えないまま走るのは不安だし、実際、サイドに寄りすぎてつまずくトラブルもあった。長い距離のレースを走るときには、いつも1日タイプの使い捨てコンタクトを使っているので、今回、コンタクトを用意していかなかったのがくやまれる。コンタクトを利用できる人は、ぜひコンタクトの用意をして行きたい。

(文/梅方久仁子)

測定場所:アシックスストア東京

東京都中央区銀座8丁目3番4号DKビルヂング

アシックスストア東京

TEL 03-3572-8303(ランニングラボ東京専用)



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