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2008年08月09日(土) 08時02分

米、仲介に動く 対グルジア戦 「部隊撤収」露を牽制産経新聞

 【ワシントン=山本秀也】南オセチア自治州での紛争が本格化したことで、国際社会は8日、「紛争当事者の自制を求める」(ペリーノ米大統領報道官)など、事態の沈静化をロシア、グルジア双方に訴えた。しかし、同日未明まで国連安保理で協議された停戦を求める声明案をめぐっては、グルジア政府を支持する米国が「部隊撤収」を掲げて露側を牽制(けんせい)し合意が見送られるなど、紛争解決の糸口は見いだせない状況だ。

 米ホワイトハウスによると、北京五輪の開会式に出席したブッシュ米大統領とロシアのプーチン首相は、8日の昼食会で南オセチア情勢について協議した。

 協議内容は明らかにされていないが、大統領に同行しているペリーノ報道官は、ロシア、グルジア双方と米政府が接触中だと確認。「衝突を抑え、直接対話によって問題解決を図るよう求める」と述べるなど、停戦協議の実現に向けて米側が外交努力を続けていることを示唆した。

 米外交当局者によると、7月中旬にグルジアを訪問したライス国務長官は、南オセチア情勢の緊迫を受けて、「紛争回避による政治解決」を強く要請していた。米国務省は、グルジアの領土主権は支持する構えをみせている。

 北大西洋条約機構(NATO)への早期加盟を求めるなど、親米路線を取るグルジアのサーカシビリ政権に対し、米側は同国政府軍の訓練を目的とする米軍の軍事顧問団(約1100人)を最近まで派遣していた。また、イラク派遣部隊の訓練にあたる米軍要員など約120人がなお派遣中という緊密な関係にある。

 米国防総省のホイットマン報道官は8日、グルジアの関係当局と同日接触したことを確認する一方、軍事的な支援要請については否定し、米国による軍事的な関与についての観測を退けた。

 紛争の本格化を受けた国連安保理での協議は、「武力行使の放棄」を掲げるロシアの提案に対し、領土主権の防衛をたてに「自衛の軍事行動」を主張するグルジア側がこの表現に反発。米側がグルジアの意向を受けて問題部分の削除を主張し、協議は8日未明までまとまらなかった。

 ロシア軍戦車部隊の地上侵攻に対し、グルジア側が露軍機を撃墜するなど紛争が拡大していることで、隣接する欧州では事態への懸念が急速に高まっている。

 ロイター通信によると、NATOのデホープスヘッフェル事務総長は8日、「われわれは事態の推移を注意深く見守っている。NATO事務総長として、紛争当事者に戦闘の即時停止と直接対話を呼びかける」との談話を発表した。

 欧州安保協力機構(OSCE)では、フィンランドのスタッブ外相が「紛争地域が本格的な戦争状態に陥る危険をはらんでいる」との情勢認識を示すなど、欧州域内の懸念はさらに広がる気配をみせている。

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