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2008年08月08日(金) 13時18分

【ストーカー判事 判決公判ライブ】(3)完「司法への不信、反省」とコメント 控訴の意思はなし産経新聞

 ≪10:12〜10:15≫

 《渡辺康裁判長は続いて、被害者が受けた苦痛についても言及した。被害者はこれまで法廷には姿を見せていない。しかし、信頼を寄せていたかつての上司がどのように裁かれるのか、当事者の一人として気にしていることだろう》

【写真】下山被告が弁護人を通じて発表した直筆のコメント

 裁判長「被害者は1カ月にわたり、自らの行動が監視されていると不安に感じる内容や卑猥な内容のメールを送付され続け、不安感、恐怖感は大きい。職場の上司であり裁判官である下山被告を信頼して打ち明けて相談するなどしていたのに、信頼が裏切られ、精神的苦痛は大きい。被害者が示談に依然応じないのも当然である」

 「現職の裁判官が裁判官や司法に対する国民の信頼に反して、個人に不安を与えるストーカー行為という恥ずべき犯行に及んだものであり、強い非難に値する」

 《司法制度改革のさなかに起きた事件は、大きく報道された。司法関係者が被った打撃は決して小さくはない。裁判長はこうした社会的な影響に触れた上で、執行猶予をつけた理由を述べていく》

 裁判長「他方、下山被告は被害者に自分が犯人であると告げ、警察にも犯人であると名乗り出ようとしていたこと、謝罪の意を表し、示談を申し出るなど反省の態度を示していること、前科前歴がないこと、弟や友人が下山被告を監督すると誓っていること、弾劾裁判により裁判官を罷免される可能性が高いうえ、事件が広く報道されるなど一定の社会的制裁を受けていることなどくむべき事情も認められる」

 「法定刑は6月以下の懲役、または50万円以下の罰金と比較的短期の刑であること。また、同種事案の量刑も考慮して、刑を猶予するのが相当としました」

 《裁判長は一気に判決を読み終わると、顔を上げた》

 裁判長「判決に不服がある場合には控訴できます」

 《刑事裁判の判決読み上げ後に、裁判長が必ず説明する控訴手続き。下山被告もこれまでに何度も説明してきただろう。裁判長の説明に、大きくうなずいて応えた》

 裁判長「その場合は14日以内にこの裁判所に申し出てください。以上で終わります。傍聴人は退廷してください」

 《裁判長の方に視線を向け、下山被告は再び深くうなずいた。地元記者の間では、判決後に自分の言葉で語りかける「説諭」が多いとされる渡辺裁判長。しかし、裁判官が向かい合う形で行われた裁判の幕切れはあっけなかった》

 《閉廷後30分ほどして、下山被告が甲府地裁の裏口から姿を現すと、カメラやマイクを手にした数十人の報道陣が取り囲んだ。下山被告は弁護人に守られるようにして、道に横付けされた乗用車に乗り込み、地裁を後にした。最後まで無言を貫く下山被告に、報道陣からは『裁判官として一言お願いします』『なぜ何も話せないんですか』といった厳しい声も浴びせられた》

 《下山被告が去った後、取材に応じた木村美隆弁護士は、判決に備えて下山被告がしたためたというコメントを読み上げた》

 弁護人「この度は、私の思慮を欠いた行動により、被害者の方をはじめ、関係者の皆様に多大な御迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。また、国民の皆様にも、司法に対する不信の念を抱かせましたこと、深く反省いたしております。本日の判決を厳粛に受けとめ、今後の日々を過ごしたいと考えております。本当に申し訳ございませんでした。 平成20年8月8日 下山芳晴」

 《A4判のレポート用紙には下山被告の整った字で、反省と謝罪の言葉がつづられていた》

 《木村弁護士は判決内容について『重大な結果を招いており、やむを得ない』としたうえで、下山被告に控訴の意思がないことを明かし、『本人としても、裁判所にこれ以上迷惑をかけたくないという思いもあるんじゃないでしょうか…」と複雑そうに言葉をつないだ》

 《現職裁判官が裁かれるという異例の裁判は、わずか2回の公判で終わった。今後は国会の裁判官訴追委員会が、下山被告の裁判官としての身分を審査する弾劾裁判を始めるかどうかを決める》

 =(完)

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