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2008年08月08日(金) 19時07分

【映画】「スカイ・クロラ」は最高の出来だったツカサネット新聞

監督は押井守で、制作はProduction I.G。
「若い人に、生きることの意味を伝えたい」

2004年の『イノセンス』以来4年ぶりの押井のアニメ最新作。原作者の森には3年以上前からオファーがあり映像化は困難だと考えていたが、飛行機が綺麗な空を飛び回る映像だけでも観たいという思いから映画化が決定した。

近年培ってきた演出手法を封じ、『イノセンス』とはまったく違うシナリオ・演出法を持ってこの映画を若者へ向けたエンターテインメント作品として作ろうと決意を新たにしているとの事。

押井守さんといえば、暗くて内容も良く分からないけど映像は凄いという作品が多い。今回エンターテイメント作品として作ったと聞いて、めちゃくちゃ期待していた。いつものラスト10分くらいだけ凄い戦闘シーンであとは眠くなるような内容という形は改善されているのか?簡単なことを難しい言葉を使って説明して難解に見せるのを本当に止めたのか?メッセージがありながらも、七割くらい戦闘シーンで、ドカーンギュギュバキギューンと子供たちも楽しめる作品になっているのだろうなぁとわくわくしながら公開日を待った。
スカイクロラとは戦闘機パイロットを主人公とするSF作品。物語の背景に戦争がありながら政治背景や戦況といった説明はほとんど無く、淡々と物語は進んでいく。

そう、淡々なのである。あれだけスタイルを変えると言っていたのに終始淡々。これを若者が面白いと思うのか?と序盤から不安だらけで鑑賞していた。もちろん戦闘機のCGは素晴らしい。個人的にはポニョの映像よりスカイクロラのCGのほうがずっとインパクトがあった。けれども「若者へのメッセージ」という点で言えば、この映画は失敗していると思う。

しかし、それを抜きで見ると、この映画は最高傑作に近いと思う。難しいメッセージがあるように見えて、実は何もない。感情だけ前面に押し出した子供向け作品だと思う。繰り返しの日常に疲れ果てて自殺する水素を優一はただ抱きしめて止める。そこに理屈はない。優一が全てのやりきれない怒りをティーチャーにぶちまけるところでこの映画はラストを迎える。ここにも理屈なんて無い。今までの押井守では考えられない作風だ。故に、自分は感動して涙が止まらなかった。コテコテに理屈を重ねた胡散臭い答えを出そうとなんて最初からしてない映画だったのだ。何も理屈なんてない、でもたしかにそれしか答えが無いと誰もが感じている部分。それを映像で表現している気がした。



参考URL
映画「スカイクロラ The Sky Crawlers」公式サイト




(記者:榊原 康之)

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