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2008年08月08日(金) 18時09分

北京ではみんなトモダチオーマイニュース

 全財産をはたいて中国・北京に“移住”した記者。オリンピック開催まで日数があってヒマだったので、途中から合流した吉川忠行カメラマンと、北京市内の「ニセモノ百貨店」こと秀水街に乗り込んだ。

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■北京市民はニセモノを買わない?

 秀水街は、天安門から東へ約3キロメートルの地下鉄・安永里駅近く。案内してくれたのは、北京に住む通訳のLさんだ。

 「私はふだん、このビルには来ません。ここにあるのはニセモノばかり。北京の人はニセモノをほしいとは思わない。ここに来るのは外国人か、地方から来た中国人観光客くらいです」(Lさん)

 Lさんは、本当に不愉快そうな顔をしていた。

■値切りはしたが最悪の買い物

 4階の家電売り場には、小規模なテナントが所狭しとひしめく。店頭の品を物色していると、デジカメの「SONY」のロゴが不自然であることに気づいた。よく見るとヘンなのだ。通訳を介して、店員と会話してみた。

記者「このデジカメ、いくら?」

店員「1700元(約2万5000円)」

記者「うわ。そりゃ高い」

店員「いくらなら買う?」

 結局1200元まで値切った。ところが店員が取り出してきた商品の箱には「SONY」の文字がない。

記者「これ、ソニーのカメラじゃないんですか?」

店員「ソニーですよ」

 後で場所を変えて品物を確認してみると、商品には「12Mピクセル」というシールが貼ってあるのに、取扱説明書には「5Mピクセル」と書かれている。 ISO感度の設定は変更できない。ズームはデジタル8倍のみ。操作画面はソニー製とは思えないチープなデザインで、画面を中国語表示にするとうさんくささが倍増だ。「SONY」のロゴはシールでボディに貼り付けてあるだけ。

 これで1200元とは、ひどい買い物だ。唯一の救いは、ソニー製とうたっていながら記録メディアがメモリースティックではなく、SDカードなのが笑える点か。

■偽iPodは本物より便利?

 隣の店では、知人の吉川忠行カメラマンがiPodらしきMP3プレーヤーを手にしてニヤニヤしている。札を何枚か店員に手渡していた。

 「いくらで買ったんですか?」(記者)

 「280元を240元(約3600円)に値切りました」(吉川さん)

 この“iPod nano”、後ほど品物を確認してみると、録音機能が付いておりICレコーダーとしても使えることが判明。スピーカー内蔵で、イヤホンを通さずに音を聞くこともできる。

 「本物のiPodより親切で、機能も多いんだけど」(吉川さん)

 だったら、iPodをパクらずに堂々とオリジナル商品として売ればいいのに……。

■偽ヴィトン店は、まるで追い剥ぎ

 秀水街で最も“熱い”のは、地下1階のバッグ売り場だ。狭い通路を歩いていると、店員たちが一斉に日本語で話しかけてくる。

 「トモダチトモダチ! 見て見て! 安いよ!」(店員)

 「トモダチって何だよ。意味わかんねえよ」(記者)

 吉川さんが店員に腕を掴まれ、店の中に引きずりこまれていった。

 「トモダチトモダチ! ヴィトン、ヴィトン!」(店員)

 店頭には、安っぽいノーブランドのバッグしか置いていないが、その中にはルイ・ヴィトンのようなロゴが入った財布がびっしり。

 「これジャパニーズ(円札を入れる場所)、これチャイニーズ、これカード。革、ホンモノの革! カワイイ! 新しい!」

 店員がライターに火をつけて、財布にかざす。それでも溶けないからビニールではなく革なのだ、と言いたいらしい。

 「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ。ファイブ!」

 店員が吉川さんの手の上に、偽ヴィトン財布を5つ積み上げる。

 「え? これで5元(約75円)でいいの?」(吉川さん)

 いくら相手が偽ブランドの押し売りだからって、それはさすがに残酷な値段だろう。記者が笑い転げていると、今度は記者自身が隣の店の店員に腕を掴まれ、店の中に引きずり込まれた。

 「トモダチトモダチ!」

 もういいって。

(記者:藤倉 善郎)

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