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2008年08月07日(木) 11時08分

自民PT、外国人の「短期就労制度」を提言オーマイニュース

 自民党国家戦略本部の外国人労働者問題プロジェクトチーム(PT)(座長、長勢甚遠前法相)が7月下旬、政府に「外国人労働者短期就労制度」の創設を提言した。

 「低賃金の温床」として批判が強まっている外国人研修・技能実習制度に代わり、いっそのこと、単純労働者の入国・就労を認めようというものだが、大きな論議を呼ぶことは間違いない。

 今回のPT案は、昨年、長勢氏が法相時代に「私案」として公表したものがベースになっている。厚生労働省や経済産業省から出ていた改善案は、いずれも研修・技能実習制度の改善案であり、「単純労働者は認めない」政府方針を大前提にしている。

 その点で、PT案は国家の方針を180度転換する内容になる。

 骨子は(1)在留資格に「短期就労資格」を新設し、在留期間は最長3年、(2)受け入れ対象者や受け入れ企業の業種などは原則制限しない、(3)受け入れ団体を許可制にする、(4)再入国は認めない──など。

 ただし、(A)国内労働市場に悪影響を与えない、(B)劣悪な低賃金を生じさせない、(C)受け入れ外国人の定住につながらない──などの基本方針も掲げ、「移民政策」とは一線を画しているのが特徴だ。

 要するに、研修・技能実習制度が国内の労働力不足をカバーする役割に変質している以上、それを“公認”して、単純労働者として期限付き入国・就労を認めようというものだ。

 すでに外国人労働力を生産活動に組み込んでいる産業界の意向に沿った内容であり、中小企業の多い日本商工会議所はさっそく支持を表明した。

■外国人なしでは存続不可

 外国人労働者はすでに国内に約100万人、そのうち不法滞在者だけでも20万人はいると推定されている。

 低賃金で働く一方、生活習慣の違いなどから周辺住民らとのトラブルも絶えない。PT案に対しては「これ以上外国人が増えて、治安の悪化やトラブルが増えるのはご免」「日本人の就労機会を奪うもの」という反対意見もさらにエスカレートすると予想される。

 しかし、研修・技能実習制度がなぜ形骸化に至ったかをみると、低賃金、3K仕事、若者人口の減少などにより、農漁業などの第1次産業や中小製造業の人手不足が慢性化した点が大きい。日本人の働き手がなく、仕方なく外国人を雇ううちに、彼らなくしては立ち行かなくなったというのが実態に近い。

 今回、インドネシアから看護師・介護福祉士の受け入れに踏み切ったのも、政府の「人手不足対策ではない」という建て前とは裏腹に、多くの施設が「外国人でも何でも、とにかく人手が欲しい」という悲鳴に近いニーズに沿うものだ。

 PT案を受けて、政府は厚労省案、経産省案などとともに検討を加えることになるが、単純労働者の入国・就労を認めるかどうかという国家の基本原則がからむ問題だけに、今後、激しい議論による紆余曲折も予想される。

(コラムニスト:本間 俊典)

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