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2008年08月06日(水) 13時30分

中国で独占禁止法が施行されたオーマイニュース

 8月8日より、中国では、北京オリンピックが始まりますが、それよりもちょっと前の8月1日、中国独占禁止法(中国名「反壟断法」)が施行されました。

 中国で独占禁止法が施行されるということで、日本企業も含めて、中国に進出中の各企業はどうなるのか戦々恐々しているでしょう。

 しかし、日本国内でこの中国独占禁止法についてあまり解説しているものも少ないようです。そこで、あまり詳しいわけではありませんが、中国独占禁止法の簡単な概要を書いてみたいと思います。

■3つの特徴

 中国独占禁止法は、3つの特徴を有しています。

 1つ目として「独占的協定(日本の「不当な取引制限」に該当)」、2つ目として「市場支配的地位の濫用(日本の「私的独占」に該当)」、そして、3つ目として「事業者結合(日本の「企業結合」に該当)」となります。

 これは、EU及び米国の法制と一致しているのだそうで、「ドイツ独占禁止法の色が強い」ということだそうです。

 ちなみに日本の独占禁止法では、この3つのほかにこれらの他に不公正な取引方法というカテゴリーを設けていますが、中国独占禁止法では規定されていません。ただ、「不公正な取引方法」に当たる部分は、中国の「不正競争防止法(こちらはすでに施行しています)」やその他の関連法において規制されているそうです。

■独自の制度

 そして、中国独占禁止法には他国の独占禁止法にない大きな特徴があります。

 それは、「国有経済が支配的地位を占め、国民経済の健全性及び国家の安全に重要な産業並びに法律により排他的で独占的な販売を行う産業における事業者は、その支配的地位又は排他的で独占的な販売上の地位を利用して、消費者の利益を侵害してはならない」となっています。

 つまり、国家経済を脅かすという理由であれば、独占禁止法違反の有無に関係なく取り締りができるというものです。これは、ある意味、行政の都合で独占企業を排除できるというおそれもあるといわれています。

 また、許認可などにより企業などを支配する(もっと支配方法がひどいという話もありますが)「行政独占」についても規制するそうです。

■取り締る機関は?

 この中国広い意味での執行機関は、国務院になるようです。そしてその上部機関に独占禁止執行機関して独占委員会を作るという話だそうです。どうも、規定だけでみると、独占委員会は、競争政策に関する政策立案、各種調査、指針の制定、行政機関による法律執行の調整等を行い、実務レベルのことを国務院が行うようです。(ここらへんも不明瞭な部分みたいです)

 これは、ドイツの競争制限禁止法上にある独占委員会に似ているそうですが、中国の独占委員会のほうがより役割が広く捉えられています。

■まとめ

 中国の独占禁止法は、法律としては成立しましたが、不透明な部分も多いようです。実際、1年で運用細則等を出すという話でしたが、できなかったようで、そのため、一部のマスコミでは、「中国独占禁止法は、外国企業を狙い撃ちするための法律」などといわれています。

 ただ、いまの中国市場では、公然と再販売価格維持行為が行われていたり(新聞によるとあのトヨタもやっていたという話です)、省(日本の都道府県にあたるところ)が主導でテリトリー制を行なっていたり、自由競争を阻害している事項が多く存在しています。

 独占禁止法施行により、競争を阻害する行為に対して楔が打てるのであれば良いのではないかと思います。中国に進出している企業は特に注目するべきでしょうね。

参考文献
松下満雄著「中国独占禁止法についてのコメント」
『公正取引685号』(2008年2月号)

(記者:山田 太郎)

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