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2008年08月06日(水) 09時00分

派遣企業各社の平均年収を一挙公開 グッドウィルの利益構造は業界トップクラスMONEYzine

■グッドウィルは業界トップクラスの利益構造だった

 グッドウィル・グループ傘下の人材サービス会社、グッドウィルの廃業をきっかけに、非正規雇用やワーキングプア問題への関心がさらに高まり、労働者派遣法改正に向けた動きも活発化。とくに「日雇い派遣」は原則禁止、派遣料金から差し引く手数料(マージン)の開示も義務化の方向だ。

 先取りして各社のマージンも含めて見ておきたい。マージンは売上原価を見ればおおよその見当がつく。基本的に、各社とも派遣社員への給料は、売上原価の中に「労務費」として計上しているからだ。売上高から売上原価を差し引いた残り、これを売上総利益、あるいは粗利というが、これが手数料に相当すると見て差し支えないだろう。

 つまり、人材サービス会社の場合、売上原価の割合が高く、粗利が低ければ低いほど派遣者への還元率が高いことを示す。逆に、原価が低くて粗利が高いということは、派遣先企業から得る料金と比べて、派遣労働者へ支払われる給料の割合が低いことを意味する。マージンが高い企業といってもいいだろう。

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 廃業したグッドウィルは後者の代表格。企業サイドから見れば、同社の原価率66・4%(粗利益率33・6%)は「優秀」な数値、業界トップクラスの利益構造だったともいえよう。

 同業他社の数値はどうか。持株会社のヒューマンホールディングス(HD)、フジスタッフHD、ユナイテッド・テクノロジーHDの3社は連結、その他は単体数値で調べてみた。

 原価率が最も高い、すなわち、派遣者への還元率が高いのは業界大手で、一般事務職派遣が中心のテンプスタッフだ。派遣社員への給与の原資である労務費以外に、支払手数料や研修会議費といった経費も原価に含んでいるが、売上高に対する割合は87%弱。何とグッドウィルより20ポイント以上も高い数値である。

 テンプスタッフと08年10月に経営統合、テンプHDを結成するピープルスタッフも原価率は80%を超す。パソナグループ傘下のパソナとパソナテックでは、パソナの原価率が高く、IT関連への人材派遣を手がけるパソナテックの原価率は8割を切る。

 グッドウィルと同様に日雇い派遣が中心のフルキャストの原価率は、グッドウィルより約5ポイント高い71・3%。フルキャストの子会社で、技術者派遣のフルキャストテクノロジーは74・5%だ。

■「技術者派遣」は原価率が低い傾向が

 次にメイテック、ジェイテックなど原価率が軒並み7割を切る「技術者派遣」企業を見ていこう。原価率が7割を切るのは、メイテック、VSN、ジェイテックの3社。いずれも技術者派遣が中心だ。
 こうして見てみると、一般事務職派遣の場合は原価率が高く、技術者など専門職派遣の場合は比較的原価率が低いことがわかる。

 手数料に相当する粗利が大きいことに加えて、専門職の派遣料金は一般事務職より高く設定されている。人材サービス各社にとっては、技術者など専門職の派遣に力を入れるのは当然の成り行きだろう。

 ちなみに、メイテックとVSNの2社は、テレビなどでもお馴染みの関口房三朗氏と因縁浅からぬ会社。関口氏は1996年7月に「代表取締役解任決議」を受けてメイテックを去り、その後、VSNを創業。ただし、同氏は08年3月にVSNの相談役を辞任、持株もSBIホールディングスに売却している。1株1885円で146万株、約27億円での取引だった。

■人材紹介企業は売上原価の発生がほとんどない

 ところで、USENの子会社であるインテリジェンスの原価率は50%を切り、ジェイエイシージャパンやキャリアデザインセンターは10%台、エス・エム・エスにいたっては限りなくゼロに近い。

 これは、人材紹介が主力事業であることが要因。人材紹介の場合は派遣と異なり、紹介企業から手数料が入る一方で、売上原価の発生はほぼないことによる。ちなみに、インターネットでの求人情報提供を手がけるエン・ジャパンやディップも原価率が低いことが見てとれる。

■人材サービス会社の従業員の年収は? 

 一方、人材サービス会社の従業員の年収はどうか。持株会社を除くと、600万円台のメイテックがトップ。同社の従業員6197人の平均年齢は35.05才、そして、平均勤続年数は10.08年。勤続年数の長さも人材サービス業界では別格だ。以下、テンプスタッフ、パソナ、エス・エム・エスが500万円台で続いている。

 テンプスタッフは平均年齢33・3歳、平均勤続年数4.5年で590万円。パソナは平均年齢32.0歳、平均勤続年数5.3年で543万円。平均年収が502万円のエス・エム・エスは、平均年齢が28.7才、そして平均勤続年数は1.1年である。

 そのほかも含めて、人材サービス会社は、比較的若い社員で構成されているといっていいだろう。それを考慮すれば、年収も低くないといえそうだ。

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(ビジネスリサーチ・ジャパン)

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