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2008年08月04日(月) 20時43分

ドーハラウンド決裂が教えてくれたものオーマイニュース

 7月29日。スイスのジュネーブでこの日まで行われていた世界貿易機関(WTO)の多角的貿易交渉、いわゆる「ドーハラウンド」に関する非公式閣僚協議は、交渉が決裂したまま幕を閉じました。

 30カ国以上の閣僚が集い、9日間行われた協議の中では、主に特別セーフガード(特定商品に対する、特別な緊急輸入制限措置)をめぐってアメリカ・EU・中国・インドが対立し、結局妥協できませんでした。

 この結果、交渉がまとまれば農業面で不利になる日本にとっては、農産物市場の開放をしばらく先送りできることになりましたが、自由貿易が農業を脅かす道理はあるのでしょうか?

 ドーハラウンドは、農業や鉱工業の貿易自由化のルールを定めたものと言われています。今回は「モダリティー」と言われる、市場開放の大枠も議題に上りました。

 1300品目以上の農産品を抱える日本は、農業における重要品目の数を8%にするよう求めていましたが、結局調停案の上では6%になりました。

 しかし、そうなると重要品目はごく限られます。仮にドーハラウンドがまとまると、他国からの輸入を求められた挙げ句、農業が打撃を受け、ただでさえ低い現在の食料自給率を押し下げる恐れがあったわけです。

 ドーハラウンドの当事者の方々には、各国の農業に対する配慮がそれだけ欠けていた、と言えるかもしれません。

 WTOのラミー事務局長は、今回のドーハラウンドの決裂を「自由貿易の深刻な後退」と主張しましたが、WTOは世界の特定の国や地域、価値観のためにあるものではありません。

 世界各国が、さまざまな食料を輸出入し、世界各国の味を気軽に食べることの自由はそれなりに保障されるべきでしょう。それでも、自国の農業を破綻(はたん)させる自由が認められるわけはありません。「身土不二」という四字熟語があるように、その国の市民の口に一番合う食料は、その国の土地で作った方が、コスト面でも安心・安全の面でも利点があることは間違いないと思います。

 だからこそ世界各国は、保護主という批判を交わし、自由な貿易と自国の農業を守る権利が両立できる方法を模索してもいいのではないかと思います。それをやらせないWTOの存在意義は、これからますます怪しいものとなるでしょう。

(記者:河村 崇)

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