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2008年08月04日(月) 08時00分

蟹工船ブームで共産党人気? 新規党員急増「体験したことない状況」産経新聞

 共産党の新規党員が急増している。同党広報によると、党員数は平成2年の50万人をピークに減少が始まり、ここ10年は40万人前後で推移していたが、19年9月の第5回総会時から現在までに約9000人が入党したという。志位和夫委員長は幹部会報告で「『蟹工船』が若者を中心にブームとなり、マルクスに新しい関心が高まっている。テレビ局が『資本主義は限界か』という企画を立て、その答えを共産党に求めてきた。党が体験したことのない新しい状況だ」と語り、年内に2万人超の新規党員を獲得する目標を掲げた。(桑原聡)

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 興味深いのは、新規党員のうち2割が30歳以下の青年で、60歳以上の高齢者も2割を占めるという点だ。同党広報はこう分析する。

 「いくら働いても何の展望も持てないのは自己責任だと思い込まされていた若い人たちが、それが実は政治の責任で、政治を変えなければならないと考えるようになった。高齢者は後期高齢者医療制度をきっかけに、これまで国を支えてきたのに、その仕打ちはないだろうと、期待を寄せるようになったようだ」

 一方、ワーキングプアの問題に詳しいフリーライターの赤木智弘さんはこう見る。「若い人が共産党を選ぶ積極的な理由はない。志位委員長が派遣労働問題を追及する映像が、ネットで話題にはなった。しかし、それよりも、与党にあきれ、民主党にも期待しない人たちが、消去法で支持しているのが実情だろう」

 元共産党参議院議員の筆坂秀世さんは「党員の急増は貧困層の拡大を反映しているのは間違いない。与党や民主党に見捨てられたように感じている人々の受け皿になっている」と見るが「共産党は入党のハードルを下げている。高齢者の中には、世話になった議員の後援会に入るくらいの気持ちで入党した人も多いのではないか。その証拠に『しんぶん赤旗』は伸びていない」と指摘する。

 また、最近出版された的場昭弘さんの著書「超訳『資本論』」(祥伝社)が、5万部も売れている例をあげ「志位氏が言うように、青年層にマルクスへの関心が確かに生じているが、社会主義への関心には向かわず、拒否する者も多い。ジレンマを抱えた共産党の動きに注目したい」と話す。

 この現象を保守の識者はどう見ているのか。外交評論家の田久保忠衛さんはこう警鐘を鳴らす。「衆参ねじれ国会となってから、政治は機能不全に陥っており、国民は日本がどこへ向かおうとしているか分からず、よりどころを失っている。加えて≪分配論≫が論じられなくなり、ワーキングプアが増加、格差が拡大している。共産党が党員を増やしている背景には、そんな事情がある。これは危険な兆候だ。民主主義が機能しなくなったとき何が起こったか、政治家は過去の歴史に学ばなければならない」

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