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2008年08月03日(日) 20時47分

<北京五輪>聖火リレー、四川で始まる…復興と希望アピール毎日新聞

 【広安(中国四川省)大塚卓也】北京五輪の聖火リレーは3日、5月の大地震で9万人近い死者・行方不明者を出した四川省で始まった。救助や生活再建を優先し、予定を1カ月半遅らせての開催。省政府や北京五輪組織委は、3日間の走者計862人のうち、震災で家族を失いながら救助などに尽力した29人を「震災救助の英雄」として聖火ランナーに加え、「復興と希望の火」をアピールした。

 スタート地点は、改革・開放の総設計士と呼ばれ、中国への五輪招致を最も早く明確に打ち出した故・※(とう)小平氏の故郷・広安市。第1走者には、地震で2歳の一人娘や母親ら10人の親族を北川県で亡くしながら、彭州市で徹夜の救助活動を続けた女性警察官で、少数民族チャン族の蒋敏さん(28)が選ばれた。

 蒋さんが※(とう)氏の旧居近くの広場をスタートすると、沿道を埋めた兵士や看護師らが国旗をはためかせ歓声を上げた。リレー後、蒋さんは「忘れ難い思い出になった」と語った。

 広安市は震源地から300キロ以上離れ、地震の被害はほとんどない。トウ氏の故郷をスタート地点にしたのは、今年が改革・開放30周年で、五輪開催もその成果と位置づけ、住民の一体感を高める指導部の意向を色濃く反映しているとみられる。

 省政府などは、五輪をてこに被災者の愛国心を高め、復興の追い風にしたい意向だが、震源に近い都市では、倒壊した校舎の生き埋めになった生徒・児童の遺族らと当局の緊張が続いている。

 さらに、被災地にチベット族の居住区が含まれることもあり、リレーへの妨害やテロなどを極度に警戒、被害が甚大だった地域をコースに含めず、リレー開催地に通じる主要高速道路をすべて通行止めとした。外国メディアに対して被災地の取材許可証の発給も止めており、被災者の声はかき消されがちだ。

(※は「登」におおざと)

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