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2008年08月03日(日) 00時40分

高度成長期に笑いの渦 スピード感あるドタバタ劇東京新聞

 「シェーッ」「これでいいのだ」。赤塚不二夫さんの漫画のキャラクターたちが放つギャグは、高度成長期の日本列島を笑いの渦に巻き込んだ。

 赤塚さんを漫画界のスターに押し上げたのは1962年に連載が始まった「おそ松くん」。6つ子とチビ太、イヤミらが繰り広げるドタバタ喜劇で、乾いた笑いとスピード感が広く支持された。

 人気は過熱し「もーれつア太郎」に登場する猫のニャロメは「若者の悔しさを代弁する」と70年安保闘争のシンボルに祭り上げられたが、赤塚さん自身は「おれは単なるバカ。思想には関心ない」。

 理屈よりも感性を重視したギャグ漫画の原点は、終戦直後に奈良県で過ごした少年時代にさかのぼる。周囲には個性の強い子どもが大勢いて、ドタバタの風土があった。「わんぱくな連中ばかり。遊びの世界ではだれもが主人公だった」

 漫画に投影された底なしのパワーと、1人のヒーローやヒロインからは生まれてこない大勢の力は、60年代から70年代にかけての自由で元気な時代の気分と見事に合致。その人気は子どもや学生だけでなくサラリーマン層にまで浸透し、この時期、少年漫画雑誌が隆盛を迎える原動力になった。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008080201000752.html