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2008年08月02日(土) 10時00分

【トレンド】ケータイと比較!「iPhone」できるコト、できないコト【中編】nikkei TRENDYnet

 iPhoneと日本のケータイで、何ができて何ができないのかを比較するこの連載だが、日本のケータイ特有のメールやウェブ、最新機能に焦点を当てた前編に引き続き、中編ではフルブラウザーやPCメール、PIM管理などスマートフォンが得意な機能について比較を行う。さらに次回の後編では、音楽再生や配信、アプリ対応などマルチメディア系機能について比較する。

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iPhone発売!しかし日本の携帯電話とメールができない?

 その前に、iPhone発売後に判明した前編の内容についてフォローしておこう。特に日本の携帯電話とのメールについてだ。iPhoneが絵文字に非対応、デコメールやデコメ絵文字は表示のみの対応であるという点については、前編を見てほしい。

 iPhoneの発売後、まず日本の各携帯電話のメールアドレス「xxxxxx@docomo.ne.jp」などと、iPhone契約者にソフトバンクが「Eメール(i)」として割り当てているメールアドレス「xxxxxx@i.softbank.jp」の間で正常にメールを送受信できるかについて実験を行った。その結果、iPhoneから送信したメールが相手に届かない可能性のあることがわかった。

 条件は、送信先の一般携帯電話ユーザーがして“携帯電話・PHSからのメールしか受信を行わない”迷惑メールフィルター設定を利用している場合だ。この件については、ソフトバンクからiPhone契約者へ SMSで通知が送られたため、契約した後に気づいた人も多いだろう。

 ではなぜ、ソフトバンクがiPhone契約者向けに提供する「Eメール(i)」のメールアドレス「xxxxxx@i.softbank.jp」が、携帯電話・PHSのメールとして迷惑メールフィルターの対象外にならなないのだろうか。理由としては、Eメール(i)のメールアドレスが、実際は迷惑メールの温床ともされているPC用メールアドレスで、IMAPメーラーさえあれば機器やISPを問わず「xxxxxx@i.softbank.jp」を差出人とたメールを自由に送信できてしまうためと思われる。

 実際に携帯電話・PHSからのメールしか受信しない迷惑メールフィルターを設定したNTTドコモ、au、ソフトバンクの携帯電話へソフトバンクが iPhone向けに提供するEメール(i)メールアドレス「xxxxxx@i.softbank.jp」よりメールを送信した結果を以下に示す。

■迷惑メール対策をしたケータイは、iPhoneのメールを受信できない?

 テストの結果、iPhone契約時にソフトバンクから割り当てられる「xxxxxx@i.softbank.jp」というメールアドレスでは、携帯電話、PHSからのEメールしか送受信しない迷惑メールフィルター設定の利用者へメールが届かない可能性があることが解った。このテストはiPhone発売後の15日と24日に行ったが、15日時点ではソフトバンクへのメールは届かず、24日には届くようになっていた。この期間の間にソフトバンク側でフィルターの設定変更があったのだろう。

 もちろんこの迷惑メールフィルター設定の利用者が指定受信設定に「i.softbank.jp」を登録すれば受信できる。だがこの迷惑メールフィルターの利用者は少なくないだけに、周りの人間全てに指定受信設定を頼むのは現実的ではない。

メールを重視すれば、今使っているケータイとの併用が無難

 結論としては、iPhoneを購入するのなら、今使っているメインの携帯電話と別に契約することをお勧めする。もしメインの携帯電話を機種変更や MNPでiPhoneに変更してしまった場合、今まで利用してきた携帯電話同士のような、快適なメールの送受信は行いづらくなってしまう。

 また、もしこの迷惑フィルターの問題が解決したとしても、現時点で「xxxxxx@i.softbank.jp」のメールは着信時に着信音やバイブレーションが動作せず、画面表示でしか着信が通知されない。iPhoneで日本の携帯電話と同じような、ほぼリアルタイムのメール送受信を快適に行うには、Appleやソフトバンクによる仕様変更が必要だろう。

 なお、前編で気がかりにしていたiPod touchで標準的なJISコードの日本語メールを送信できず、auや一部メールサービスなどで受信すると文字化けを引き起こしていた問題だが、iPhoneと7月11日からの有償バージョンアップを行ったiPod touch(バージョン2.0)では、JISコードでのEメール送信に標準対応したことで解決した。迷惑メールフィルターを使ってない携帯電話や日本のPCユーザーに対するメールは、特に問題なく利用できる。

iPhoneのスマートフォン機能はどこまで便利?

 では、中編の本題であるスマートフォン機能の比較に移ろう。iPhoneの特徴は、使い勝手のいいフルブラウザー「Safari」やPCメール機能を、iPod touchと違ってどこでも使える点にある。また、PIMの情報はPCやMacとのケーブル接続だけでなく、MobileMeやExchangeの購入によりネットワーク経由で自動的に同期できる点が便利。これらの点に魅力を感じないなら、iPhoneを買う意味自体がないといってもいいぐらいだ。

 これらスマートフォン機能の比較については、日本の携帯電話やスマートフォンでも各端末で対応が異なるため、一概に良い悪いとは言い難い。iPhoneが自身の利用用途に合っているかどうかは、次の項から始まる各機能の解説にて確認してほしい。まずは、日本の携帯電話とスマートフォンの対応について簡単に解説しておく。

 日本の携帯電話は高繊細なワイドVGA(480×800ピクセル)液晶の搭載やFlash対応などiPhoneより多機能だ。しかし、フルブラウザーは読み込めるサイトのサイズ制限が厳しく、特に画像の多いサイトの表示処理が遅い。また。画面が小さいくサイトを見やすく表示する機能もやや欠ける。

 PCメールやビジネス文書は対応端末が少ないうえ、機能も限定的だ。PIM同期はケーブル接続で対応するが、ネットワーク経由のものは法人向けが中心で標準機能ではない。

 ただ、iPhoneは日本の携帯電話メールや、携帯機器ではフルブラウザーより便利な面の多い携帯サイトへの対応も弱い。日本の携帯電話はiPhoneは単純に比較するのでなく、両方を持って足りない機能をうまく補完するのが最適な使い方といえるだろう。

 Windows Mobileのスマートフォンは、液晶の解像度がQVGA(240×320ピクセル)と低めだ。フルブラウザーはWILLCOM 03のような高繊細ワイドVGA液晶や指で操作しやすい最新のOperaブラウザを利用できるならともかく、多くの端末ではあまり使い勝手が良いとはいえない。

 しかし、その一方でOutlookやExchangeとの同期機能が充実しており、PCメールやPIM管理への対応が良い。待受画面で現在必要な情報を一覧できるなど、ビジネス利用に関してはiPhoneよりも洗練されている。オフィス文書は閲覧のほか、非対応機能も多いが簡単な編集にも対応する。

 iPhoneと違ってアプリ開発・配布がオープンな点も大きい。iPhoneと比較するなら、ビジネス向きのPIM管理や専用アプリを利用するならWindows Mobile、フルブラウザーや音楽・動画プレーヤー機能も使いたいならiPhoneと、用途に応じて選ぶべきだろう。

操作性と見やすさを追求したフルブラウザー「Safari」

 フルブラウザー「Safari」の特徴は、高速なサイト表示とスムーズなスクロール&ズームに加え、JavaScriptなどAjaxと呼ばれる技術群を採用したWebサイトへの対応が強力な点だ。また、Flashは利用できないものの、YouTubeやiPhoneで再生できる範囲内のH.264ビデオ再生に対応する。

 実際に利用したところ、Webサイトの表示が正確かつ高速で快適だ。特に、画像が多くレイアウトが複雑なニュースサイトを比較的高速に表示できるのには感心した。サイト中の閲覧した文章や画像をダブルタップすると、タップした文章や画像が見やすいレイアウトへ自動ズームする点も便利。大画面かつスクロールがスムーズで、文字フォントも見やすい。

 筆者自身、iPhone購入後は外出先でPC向けサイトを気軽に開いてじっくり読むことが増えた。これまでも携帯電話のフルブラウザーでPC向けサイトを見る事は多かったのだが、それは携帯電話向けサイトが無いから仕方なくという理由に過ぎない。一方のiPhoneには、日常の情報収集や暇つぶしに使える快適な操作性と見やすい表示がある。これは、今までの携帯電話やスマートフォンには無かった経験だ。

iPhoneのフルブラウザーファイルのアップロードに非対応

 しかしながら、iPhoneは万能でない。不満点もかなり多い。

 まず、iPhoneのフルブラウザーはファイルのアップロードに対応していない。ブログやmixiなどのSNSへ、iPhoneを使った写真付き記事の投稿を考えている人には期待外れな点だろう。現時点で写真付き記事を投稿するにはブログやSNSサービスが、メールかiPhone用アプリによる投稿方法を用意する必要がある。今のところ、モバイル環境から国内のブログやSNSサービスへ記事投稿を行うには、日本の携帯電話の方が便利なことがほとんどだろう。

 さらに、フルブラウザー利用中はテンキーモードでの日本語入力が遅くなりがちなうえ、大容量かつ複雑なWebサイトを表示しているとフルブラウザーが強制終了しやすくなる。一度圏外に入って圏内に戻ると、数分間通信を行えないままになる点も不便だ。

 現時点での判断だが、iPhoneのフルブラウザー「Safari」はWebサイト閲覧に限るなら、他の携帯電話やスマートホンのフルブラウザーを引き離す快適さを実現している。だが、ブログやSNSなどの情報発信については、携帯電話やWindows Mobileにはまだ及ばない。文章を書いている途中にフルブラウザーが強制終了してしまい、書いた文章が消えてしまうことなど日常茶飯事だ。

 iPhoneのSafariは、サイト閲覧という一面をとらえれば確かに素晴らしい。とはいえ得手不得手があるので、フルブラウザー機能に期待して購入を検討しているなら、まずは利用目的をはっきりさせたほうがいいだろう。バージョンアップによる安定性の改善に期待したい。

iPhoneなら、PCのメールやオフィス文書をどこでも受信できる!

 iPhoneのメール機能「Mail」は、一般的な携帯電話のメール機能と違い、PCのメールアドレスを利用するための機能だ。POP/IMAPの両方の方式に対応し、複数のメールアカウントを管理できる。メールはフェッチによる定期受信(1時間/30分/15分ごと)のほか、一部のメールアカウントではプッシュによるぼぼリアルタイムでの自動受信を利用可能だ。文字のフォントやレイアウトが美しく、大画面なこともあって長文メールが読みやすい。 PCのメールを使いこなしている人、いつでもPCのメールを確認・送受信したい人にとっては手放せない機能といえる。

 メールに添付されてきたWordやExcel、PowerPoint、PDF、iWorkといったオフィス文書ファイルの閲覧にも対応。Office2007の新フォーマットも扱える。どの形式でも、装飾などの全情報を表示できるわけではないが、本文や表はしっかり表示できるので一般的なビジネス文書の閲覧で問題となることは少ないだろう。なお、 PowerPointのファイルを、オプションのコンポジットケーブルを使って、プロジェクターなどに出力することはできない。

 ただ、せっかくiPhoneを使うのなら、IMAPやプッシュサービス対応のメールアカウントを利用したいところだ。IMAPはGmailのように、メールやフォルダ構成といった環境をサーバ上へ保持したまま利用するメールの送受信方式。これにより、PCのソフトやWebブラウザー、iPhoneといったどのIMAP対応メーラーで接続しても、全く同じメール環境で利用できる。Gmailが、どのブラウザーからアクセスしても、同じ環境で利用できることを想像すれば分かりやすいだろう。

 ちなみに、GmailもIMAPメーラーでの利用に対応している。IMAPメーラーで使えば送受信メールがメーラー側でも保持されるので、オフライン環境でもメールの閲覧や作成を行えるなど、Webメールよりも便利に扱える。

 IMAPに対応したメールアカウントは Gmailのほか、ソフトバンクの提供するEメール(i)や、AppleのMobileMeなどが提供を行っている。このほかにも、共用レンタルサーバーやWebスペース、メールアドレスのレンタルサービスで利用できる場合も多い。これらのサービスを利用しているユーザーは、メール機能がIMAPに対応しているか調べてみると良いだろう。

 プッシュサービスは、メールサーバーへ届いたメールが即座にiPhoneへ送られてくる機能だ。PCのメールは定期受信か手動受信が一般的だが、プッシュサービスに対応するメールアカウントでは日本の携帯電話メールのように、ほぼリアルタイムでメール受信と着信通知が行われる。ただし、対応メールアカウントは、ExchangeとMobileMe、米Yahoo!のみだ。メールが届くごとに着信通知が作動するため、SPAMや広告メールが届かないよう個人間で使うメールアドレスとして利用するといいだろう。

 なお、ソフトバンクのEメール(i)はプッシュに対応していないが、メールサーバーにメールが届くとほぼリアルタイムでiPhoneの画面に画面に着信通知が表示される。ただし、着信通知が届いても着信音やバイブは作動せず、メール本文も受信されていない(「メール」を起動すると受信される)など、使い勝手はプッシュ対応のメールアカウントにやや劣る。

PIM/同期サービスについてはどうか?

 同期機能は「連絡先」のアドレス帳情報と「カレンダー」の予定、ブラウザーの「ブックマーク」が対応する。USBケーブルを使ってiTunesと同期する場合、「連絡先」と「カレンダー」についてはWindowsだとOutlook2007または2003など、MacではアドレスブックとiCal、または Entourageに対応する。

 このほか「連絡先」限定ながら、Google Contactsなどとも同期を行える。ブックマークは「インターネットエクスプローラー」か「Safari」との同期が可能だ。iTunesを使った楽曲の同期やiPhoneの充電と同時に行えるなど、携帯電話の同期機能としては便利に扱える部類だ。

 PIM情報の同期をより便利に扱いたいなら、Appleが有償で提供する「MobileMe」を利用しよう。このサービスは、iPhoneや MobileMeのWebサイト、PCのOutlookやMacのアドレスブックがもつアドレス帳や予定表のデータを、ケーブル無しにネットワーク経由で自動同期するサービスだ。

 例えば、MobileMeのWebサイトで予定表に予定を追加すると、即座にiPhoneの「カレンダー」へ予定が追加される。逆に、iPhoneの「連絡先」でアドレス帳情報を追加すると、MobileMeのWebサイトにも即座に反映されるといった具合だ。PCのOutlookやMac環境とも、即座ではないが約15分おきに同期が行われる。iPhoneをいちいち接続しなくても、PCやMacの環境で快適にアドレス帳や予定表を編集できるうえ、自動バックアップ機能としても便利だ。実際にどのように動くかは下の動画で確認してほしい。

iPhoneを買ったならMobileMeの環境を体験すべき

 MobileMeを日常的に利用していると、PIM情報の同期のために毎日PCやMacを起動しiPhoneを接続しなくて済む点が便利に感じる。従来のiPodであれば、たまに充電と曲の管理を兼ねてPCやMacにつなぐことを不便に思わないだろう。だが、iPhoneは毎日充電が必要な携帯電話だけに、毎日PIM情報の同期と充電のためだけにPCやMacを起動せずとも、コンセントからの充電とネットワーク経由の同期だけで管理できるという利点は大きい。

 このようなネットワーク経由でPIM情報を同期できるサービスは、WindowsMobileなどのスマートフォンとExchangeの組み合わせで提供されてきた(iPhoneも対応している)が、Exchangeは基本的に法人向けのグループウエアとして提供されてきただけに、個人では利用しづらいサービスだった。だが、Appleが個人向けにMobileMeを用意したことで、一般ユーザーでも気軽に携帯電のPIM同期を利用できるようになったのだ。せっかくiPhoneを購入したのなら、一度はMobileMeの環境を体験してほしい。MobileMeでは、iPhoneでアップロードした写真をWebサイトで公開したり、オンラインハードディスク機能を持つなど、個人向けならではのサービスも利用できる。

 中編のスマートフォン機能はいかがだっただろうか。日本の携帯電話でフルブラウザーやPCメールを多く利用している人にとっては、サブケータイとして魅力に感じる人も多いのではないだろうか。一方、既にWindowsMobileを持っている人にとっては、操作性の違いを除けばほぼ同じ機能を利用できるため、魅力を感じない人もいるだろう。

 筆者としては、iPhoneの薄さや親指でのタッチ操作を前提とした操作でフルブラウザーやPCメールを快適かつ高速に利用できる点、個人向け ExchangeともいえるMobileMeを追加アプリや複雑な設定なしに簡単に利用できる点が魅力に感じられた。

 確かにiPhoneの仕様や操作性に不満を覚えることも多く、通話やメール、おサイフケータイ、GPSナビやブログ・SNSの投稿に日本の携帯電話は手放せない。Windows Mobileと比べても同等かやや劣ると思われるほどiPhoneは不安定だ。

 しかし、この中編で紹介したiPhoneのフルブラウザーやPCメール機能、MobileMeでのPIM管理は、不満点以上の便利さと快適さという魅力を持っている。フルブラウザーやPCメールを日常的に使っている人、使いたい人は、一度iPhoneを触ってみると良いだろう。まだ不安定な面も多いが、月額料金に見合った価値は十分感じられるはずだ。

 後半では、iPhoneのイメージとして大きいiPodなどの音楽機能、音楽や動画、アプリの配信サービスなどについて比較を行う。音楽プレーヤとしての使い勝手や、アプリに関する販売前のイメージとの違いについて見ていこう。

(文/島 徹)

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