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2008年08月02日(土) 10時00分

【トレンド】ウィルコムガジェットに対応したシンプルで清楚なコンパクトケータイ!「WILLCOM 9」nikkei TRENDYnet

 ウィルコムが2008年夏モデルとして投入した新しい通常音声機種がケーイーエス製「WILLCOM 9(型番:WS018KE)」だ。ウィルコムの超小型PHSモジュール「W-SIM」に対応した通常音声機種としては、これまで「9(nine)(型番:WS009KE)」や「nico.(型番:WS005IN)」のようなシンプルな機能のストレート型機種が多く、唯一の折りたたみ型は、子供向けとして発売された「キッズケータイ papipo! 」だけだった。そんな中でようやく待望のW-SIM対応の折りたたみ型が登場したのだ。

【詳細画像または表】

 機能的にも、前のモデルである9(nine)や9(nine)+とは異なりカメラやJavaアプリに対応しているほか、ウィルコムの新しいサービスである待受機能「ウィルコムガジェット」を初めて搭載している。見た目も9シリーズとしてシンプルながら飽きの来ない雑貨のようなデザインを引き継いでいる。そういったシンプルながらも基本機能をきっちりと搭載したシンプル&コンパクトケータイ「WILLCOM 9」をレビューしていこう。

シンプルでいて上質で清楚なイメージのあるデザイン

 WILLCOM 9は、2006年12月に発売されたケーイーエス製「9(nine)」の流れを汲む9シリーズの最新モデル。9(nine)は、改良版として2008年2月に発売された「9(nine)+」を含めると、発売後の1年半で約43万台を販売しており、WILLCOM 9を発売後も、売れる限りは販売を続けるという。

 9(nine)や9(nine)+がストレート型であるのに対し、WILLCOM 9は折りたたみ型。いわゆる無印良品のようなシンプルで素朴なデザインを引き継いでおり、ウィルコムの堀田峰布子氏が、9(nine)に続きデザインを担当している。

 本をイメージした側面の中央部分が凹んだ曲面で構成されている。この曲面を“ネガR”と呼ぶそうで、折りたたんだときに両面がぴったりとつく状態であるが、開けやすくなっている。

 確かに両手で開けるときは開けやすいが、片手で開けるときには開けやすいとは言い難い。ネガRがなかったら、もっと開けづらかったと思われるが、デザインにより使いやすさが多少なり犠牲にされているようにも思われた。

機能にあったコンパクトシェルデザイン

 ボディカラーはシロ(White)とクロ(Black)。9(nine)の発売時と同じ2色が用意されている。シロはやや乳白色に近い柔らかいイメージの質感で、クロはつやは抑えられているが指紋は多少目立つのが気になった。

 素朴で清純な高いデザイン性だけではなく、サイズが小さいのもWILLCOM 9の魅力のひとつだ。約43×80.4×19.4mmと最近の携帯電話と比較すると幅や高さがなく、質量も約87g(同こんされるW-SIM「RX420AL」装着時)と軽い。堀田氏によると“サイズ感”を非常に大事にしたとのことで、一昔前のNTTドコモ「mova 2xxシリーズ」のような大きさをイメージしているとのこと。

 その分、最近のモデルとしてはディスプレイサイズが小さく2インチでQVGA(240×320ドット)の26万2144色表示可能なTFT液晶。本体やディスプレイサイズと解像度や各機能などのバランスが非常に良いまさに“コンパクトシェル”なのだ。携帯電話はどんどん高機能化してきているが、こういったシンプルでコンパクトなケータイというジャンルが用意されているというのは、消費者にとっても選択肢が増え嬉しいところだ。

 サイズが小さいということで、ボタンの押しやすさが気になるところ。しかし、折りたたみ型であることもあり、それほどサイズ的な押しにくさはない。ただ、下ボタンについては、他のボタンと押し間違いをしてしまうこともあった。

 ボタンが平坦でクリック感が浅く、押したという感触は弱いように思われた。特に、通話ボタンと終話ボタン、5ボタンは突起が折りたたんだときに反対面とぶつからないように、ボタン全体としてはくぼんでいるため、押しにくいように感じた。だが、慣れれば問題ない程度だろう。

 キーボードライトはオレンジで、付属品としては、W-SIM「RX420AL」、microUSBケーブル、充電台といってものだ。充電やパソコンとのデータ転送には、USB端子が搭載されているが、従来までの9(nine)では、USB miniBタイプだったのに対し、WILLCOM 9では「HONEY BEE(型番:WX331K)」や「WX330K」、「WILLCOM 03(型番:WS020SH)」などと同じUSB microBタイプとなっている。また、9(nine)にはなかった平型イヤホンマイク端子も搭載されている。

待受画面にさまざまな情報を表示できる「ウィルコムガジェット」に対応

 WILLCOM 9の機能的なトピックは、ウィルコムの新しいサービス「ウィルコムガジェット」を初めて搭載したこと。ウィルコムガジェットは、ガジェットまたはウィジェットと呼ばれるHTMLやJavaScript、スタイルシート(CSS)で作成したコンテンツをウェブブラウザを起動せず待受画面に表示する機能だ。ウィジェットは、パソコンでも普及してきており、携帯電話でもすでにKDDIがKCP+搭載端末に「au oneガジェット」というサービスを提供している。

 ウィルコムガジェットもau oneガジェットとほぼ同じで、待受画面で上ボタンを押すとガジェットの操作が可能となり、終話ボタンを押すと待受状態に戻る。また、各ガジェットを最大化したまま待受状態にすることもでき、自動更新にも対応しているので常時ニュースやmixiの情報などを表示しておくことも可能だ。

 プリインストールされているガジェットは、W+Infoやmixi、Gmail、Google検索、Googleカレンダー、Google乗換案内、NAVITIME、くーろん、デ辞蔵、世界時計の10種類。他にも公式サイトからダウンロードすることでいろいろなガジェットが導入できる。また、将来的には、ユーザーが自由にガジェットを作成して導入できるようにしたいという。

 技術的には、au oneガジェットがOperaベースなのに対して、WILLCOM 9のウィルコムガジェットはNetFrontベースとなっている。モバイル向けのNetFrontとしては、Windows Mobile向けにガジェット実効環境「NetFront Browser Widgets」も提供されているが、基本的には同じだ。しかし、ウィルコムガジェットにはウィルコムの位置情報取得などの独自機能にも対応させているため、そのまま動作するかはわからないという。

ガジェットの動作がどうも不安定だが……

 実際に操作してみると、まず、レイアウトのグリッドでガジェットを切り替えたり、最大化したときなどの画面遷移時に起こる動きのあるユーザーインターフェースに目が行き、なかなか楽しい。これは、エイチアイの「3DView package」ライブラリを使っているとのこと。

 ただ、使っているうちに、やはりもっさりとは違うのだが、動作が引っかかったり、固まったかのように数秒動かなくなったり、突然電源が落ちたりと、動作が不安定な印象を受けた。閉じた状態から開いたときに、画面が表示されるのに一瞬待たされる感じも気になった。

 ほかにも、仕様としてガジェット表示しているときには、通話やメールがあったときに待受画面に表示されるポップアップが表示されなかったり、ガジェット利用時にはEメールなどの通知がアイコン表示のみだったりと、基本機能のユーザビリティが低下するのが気になった。同時に、こういった点を改善し、自動更新時間の見直しやガジェットの一般配布の解放を行えば非常に有用な機能だと期待が膨らんだ。今後に期待したい。

基本操作はARM11でサクサク!待受にはスロットアクセサリも表示可能

 WILLCOM 9(型番:WS018KE)」には、iPhoneと同じARM11コアのCPUが搭載されており、高速に操作ができる。ガジェットやフルブラウザなどの高機能なものはまだバグがあったり、フィッティングが低かったりするのか不安定だったりするが、通常の基本操作や文字入力などは最新の携帯電話と違いかなりサクサク動作する。

 メニューなどの操作は9(nine)とほぼ同じで、パーソナルメニューやアンテナサーチなども引き続き搭載されている。また、9(nine)のときに人気の高かった動きのある時計などが強化されて「スロットアクセサリ」という機能になっている。待受画面を上下で3分割し、それぞれに特定の機能を表示させられるのだ。残念ながらウィルコムガジェットとは排他的で、同時に表示させることができないのだが、ガジェットも3分割のうちの1つに割り当てられたら良かったのにと思ったりした。

装飾メールやパソコンメールが使えるメール機能

 メール機能は、ウィルコムの機種としては新しい機能はないが、9シリーズとしては、大幅に強化されている。2008年3月に「HONEY BEE」から導入された装飾メール(いわゆる“デコメール”)サービス「デコラティブメール」にも対応しており、従来通り、パソコンのPOP/SMTPメールが利用可能だ。ウィルコムのPDXメールも含めて3つのアカウントが利用できる。

 文字入力も含めて動作が軽快なので操作しやすいが、受信BOXを表示しているときなどには、バックグラウンドでメールが受信できないといった仕様もそのままになっており、残念に感じた。また、9(nine)ではファームアップで変更されたメール送信後に待受画面に戻るという仕様も戻らないように戻っている。ガジェット表示時の挙動も含めて、通話だけでなく、メールは重要な連絡手段になっているだけに、きちんとわかるように通知するというのは必須機能だと思われるので早く改善して欲しいものだ。

RSSリーダーやツールバーに対応したフルブラウザ「NetFront v3.4」を搭載

 WILLCOM 9(型番:WS018KE)では、ウェブブラウザもかなりパワーアップしている。9シリーズからだけでなく、他の「NetFront Mobile Client Suite」による「NetFront」搭載の通常音声機種と比較してもツールバー機能やフルスクリーン機能、RSSリーダー、履歴やブックマークのサムネイル表示、メニューのポップアップ表示などが追加された。また、細かな改善点としては、ブックマークの並び替えにも対応している。

 全体的には、表示モードにケータイモード、スモールスクリーンモード、デスクトップモードの3つに対応し、3つのタブまで利用できるなどといった基本部分は同じだ。オプション「高速化サービス(月額315円)にも対応。フォントも最近のOperaを搭載した京セラ製機種と比べるとアンチエイリアス処理がされており、綺麗なのも良い。ガジェットとともに、フルブラウザも不安定なところが残っており、表示モードを切り替えるとたまにブラウザが落ちるなどの不具合があった。このあたりは、今後のファームアップで改善されるのを期待したい。

Javaアプリは中断や待受アプリに対応

 9シリーズとしては初めてJavaアプリにも対応した。MIDP2.0に対応したJavaアプリが利用でき、Javaアプリの保存は、1件1MBまで、最大4MBまで行える。ヒープメモリは約2MB。また、機能としてもウィルコムの通常音声機種のJavaアプリとしてははじめて待受アプリや中断機能に対応している。

 他にも、許可設定の種類が増えており、Javaアプリから電話の発信などができるようになった。さらに、これまで非公式アプリは、標準の接続先であるCLUB AIR-EDGEを利用できなかったが、WILLCOM 9では利用できるようになっていた。これは、Javaアプリ導入時に対応させたいという話を聞いていたが、3年近く経ってようやく対応したということで、ユーザーの中には嬉しい人も多いのではないだろうか。

130万画素CMOSカメラを搭載!内蔵メモリは約16MB

 WILLCOM 9(型番:WS018KE)には、130万画素CMOSカメラが搭載されている。オートフォーカスや手ぶれ補正には対応しておらず、接写はカメラのレンズ横にあるマクロ切り替えスイッチにより対応する。また、フォトライトも搭載しておらず、動画の撮影もできない。

 静止画は、最大SXGA(1280×960ドット)までのサイズで撮影でき、画質ファインだと1枚あたり約400〜700MBとなる。内蔵メモリが約16MBで、外部メモリに対応していないので、写真を比較的撮影する人はウェブ上やパソコンなどにデータをこまめに移さないといけないだろう。

 画質は、色の彩度がかなり強く出る傾向にあり、端末の画面で見ると綺麗に見れるケータイカメラには良くあるものとなっている。さすがに、ハイエンドな携帯電話が搭載している500万画素クラスのものと比べるとかなり劣るが、縮小してブログに利用するなどというのなら十分だろう。むしろ、画像編集の機能が少ないのは気になった。

いつもそばにおいておきたいさりげないシンプルなケータイ

 WILLCOM 9は、コンパクトなサイズの折りたたみ型ケータイという、少し前なら主流といってもいいコンセプトだが、最近の機種にはない魅力がある。また、シンプルで素朴なデザインは、9シリーズの初代、9(nine)と同じく万人受けするものとなっている。カメラも搭載したほか、Javaアプリでゲームもできるなど、これまでの9(nine)はあくまで2台目需要を狙っていたといっても良かったと思うが、WILLCOM 9なら十分に1台目としての需要も高まりそうだ。価格との兼ね合いもあるが、WILLCOM 9もロングランで人気機種になりそうな気配がする。

 ウィルコムガジェットもアニメーションするユーザーインターフェースや仕組みそのものは良いだけに、もう少し動作が安定して、スムーズに操作できるようになり、ガジェットもさまざまなものが多数配信されるようになるとなかなか便利になるのではないか。お気に入りのガジェットを常時表示させ、シンプルでコンパクトなボディなので、いつもそばに持っておきたいと思わせる機種となっている。筆者は、WILLCOM 03を購入してしまったので、すぐには購入できないのだが、単体発売されたら、WILLCOM 03とW-SIMを差し替えて使ってみたいと思っている。早く単体発売されないかな・・・

著 者

memn0ck(めむのっく)

 1976年東京生まれ。「めむのっく」はハンドル名。ケータイ・モバイル情報マニアで、小さなデジタルガジェットに目がない。趣味でケータイ・モバイル関連の個人ニュースサイト「memn0ck.com」を運営しているが、日常は白衣を着た理系野郎をやっている兼業ライター。



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