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2008年08月01日(金) 15時53分

「花王ブローネ使用でハゲた」因果関係認めるも、判決は原告の請求棄却MyNewsJapan

 花王ブローネヘアマニキュアを使用した後に脱毛した男性が、損害賠償444万円余りを求め2006年春に花王を訴えた。原告弁護士が裁判結果を教えてくれず、奈良地裁に赴いた。7月17日に奈良地裁に出向き、午前10時に総合受付に着いた。

−−裁判記録を閲覧したいんですけど。

 「民事ですか? 刑事ですか?」

−−民事です

 「まだ係争中ですか?」

−−いえ、地裁で結審したと聞いています。

 「それでは、奥に入って中央の受付でお願いします」

 「訴訟受付保全係」の受付へ向かい、細身でメガネをかけた男性職員に事件番号を告げた。

 「判決だけですか? 裁判資料全般ですか?」

−−全部の資料をお願いします。

 判決は「本件ヘアマニキュアの使用と本件症状との間には、原告の既往であるアトピー性皮膚炎の憎悪をもたらしたという限度で因果関係が認められる」と、ブローネの使用でハゲになった因果関係は一部認定されたが、製造上の欠陥、指示・警告の欠陥などを含めた全体の責任を花王に認めさせることはできず、敗訴だった。

 裁判官は、今回の裁判の争点として以下の5つをあげている。

(1)本件ヘアマニキュアの使用と本件症状との間に因果関係はあるか。
(2)本件ヘアマニキュアに製造・設計上の欠陥があるか。
(3)本件ヘアマニキュアに指示・警告上の欠陥があるか。同欠陥と原告による本件ヘアマニキュアの使用や本件症状の発生との間に因果関係はあるか。
(4)上記各欠陥について、被告に過失があるか。
(5)原告の損害額

 そして、争点に対する判断を以下の3点にまとめている。

 争点(1)(本件ヘアマニキュアの使用と本件症状との因果関係の有無)について

 裁判官は以下のように結論づけた。

「本件ヘアマニキュアの成分に対するアレルギーやこれによる刺激が、原告の既往であるアトピー性皮膚炎を急性憎悪させる因子の一つとして働いたものと認めるのが相当である。

 したがって、本件ヘアマニキュアの使用と本件症状との間には、原告の既往であるアトピー性皮膚炎の憎悪をもたらしたという限度で因果関係が認められる。」

 争点(2)(製造・設計上の欠陥の有無)については、裁判官は、「通常有すべき安全性を欠いているというためには、一般的な化粧品に比べてアレルギーを引き起こす可能性が高い成分が含まれているとか、使用によるアレルギー反応が生じる確率が、一般的な化粧品に比べて高いなどの事情が必要」として、以下のように続ける。

「含まれる成分はいずれもアレルギーの原因となりうる物質であるものの、その危険が高いと原告が主張する成分であるBHTは食品添加物として使用され、タール色素はシャンプー等の製品に繁用され、エタノールは飲用アルコールとして日常ありふれた物質であること、本件ヘアマニキュアには厚生労働省による頭髪用化粧品に使用が許可された成分以外の成分は使用されていないことからすると、その成分が一般的な化粧品に比べてアレルギーを引き起こす可能性が高いとは認められない。

 遅くとも平成10年以降、年間約540万本が販売されているのに対し、同年以降に受け付けられたセンター相談事例のかぶれや脱毛等のアレルギー相談事例と推認されるものは原告の件を含めても7件にとどまること、被告が把握している本件ヘアマニキュアに対する苦情件数は他の一般化粧品と同程度にとどまることが認められる。」

 その上で、「一般的な化粧品に比べてアレルギーを引き起こす可能性が高い成分が含まれているとか、使用によるアレルギー反応が生じる確率が高いといった事情は見当たらないのであって、製造上又は設計上、通常有すべき安全性を欠いていたとは認められない」と結論づけている。

 争点(3)(指示・警告上の欠陥の有無、因果関係)について裁判官はまず、表示の内容について被告の主張を肯定している。

「成分は外箱に全て表示されているなど、少なくとも薬事法上の諸々の表示義務を尽くしている上、日本化粧品工業連合会における「化粧品の使用上の注意に関する表示自主基準」に従って注意文言を記載しているのであって、薬事法や業界団体等による自主基準による規制に反するところはない。

 被告は、本件ヘアマニキュアが内在する危険の存在とその場合の対処方法について、消費者がその使用前に目にすることが確実な態様で記載し、警告を与えていたというべきである。」

 その上で原告の主張を以下のようにまとめ、その内容を否定している。

「原告は、本件ヘアマニキュアの使用によりアレルギー反応が生じる危険性があることや、その外箱に本件広告文言が記載され、身体へのダメージは少ないとの印象を与える表現が多用されていることからすれば、被告は、上記危険性の存在やこれを回避するためにパッチテストが必要であることについて明確な表示をすべきであった旨主張する。

 しかし、前示のとおり、本件ヘアマニキュアは、パッチテストを必要とする染毛剤とは区別された染毛料であるところ、本件ヘアマニキュアに内在するアレルギー発症の危険性が、他の一般化粧品に比べて高いと認めるに足りる証拠はない。

 他の一般化粧品以上に上記危険性の存在等を明確に表示すべきであったというべき事情は見当たらず、本件注意文言が指示・警告として不十分であったと認めるには至らない。」

 そして、以下のように結論づけている。

「したがって、本件ヘアマニキュアは、指示・警告上、通常有すべき安全性を欠いていたとは認められない。」

 以上のように3点の争点について検討した結果、裁判官は最後に以下の結論を述べて、原告の請求を退けている。

「結論

 以上のとおり、本件ヘアマニキュアがその製造上又は設計上通常有すべき安全性を欠いていたと認めることも、指示・警告に欠陥があったと認めることもできないため、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、主文のとおり、判決する。

 奈良地方裁判所民事部
 裁判官 進藤 千絵 」

 以上が、奈良地裁で閲覧した裁判記録の報告となる。

 しかし、国民生活センターの報告では、花王「ブローネヘアマニキュア」による身体に危害があった相談は、2006年10月時点では3件だったのが、2008年2月のこの判決文の時点では、4件増えて7件になっている。

(伊勢一郎)


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