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2008年07月14日(月) 08時31分

スマートフォン「BlackBerry」体験記ITmediaエンタープライズ

 米国や欧州の空港でフルキーボード付き携帯電話の画面を眺めていたり、何かを必死に入力したりしているビジネスマンを目にする機会が増えている。彼らが持っているのは、ビジネス向けのスマートフォンと知られるカナダResearch In Motion(RIM)の「BlackBerry」。すでにホワイトカラー層にはおなじみのビジネスツールとなり、のべ約1600万ユーザーが利用しているという。

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 今回、米国への出張を機会に日本法人のリサーチ・イン・モーションから端末を借り、国内と米国における使い勝手を試してみた。

 国内では現在、NTTドコモが法人向けにのみ展開している。8月からは個人ユーザー向けのサービス「ブラックベリーインターネットサービス」が開始され、門戸が広がることになる。企業ユーザー向けには、端末のほかに社内システムの窓口となる「BlackBerry Enterprise Server」や専用線サービスも導入しなければならないが、個人向けサービスではNTTドコモが対応システムを構築する。インターネット接続やPCメールが利用できるなど、BlackBerry利用の敷居が低くなりそうだ。

 余談になるが、米国の入国審査官に「BlackBerryの取材で来た」と渡航目的を告げたところ、スムーズにやり取りが進んだ。米国ではそれほど一般に認知された存在となっている。

●ビジネス向けに堅実な作り

 国内で提供されている端末「8707h」は、W-CDMAとGSM/GPRS網に対応し、国内ではNTTドコモのFOMA網に、海外ではドコモと国際ローミング提携する通信事業者のネットワークに接続する。当初は英語版だけだったが、2007年秋には日本語版も提供されるようになった。

 端末の外観は過去の記事で触れられているように、本体表面にQWERTYキーボードとQVGA液晶ディスプレイ、上部側面に電源ボタンとマナーモードボタン、右側面にトラックホイールとファンクション、左側面にUSB端子とイヤフォンジャック、ファンクションボタンが配置されている。

 電源ボタンを押すと瞬時に待ち受け画面上にランチャーアイコンが表示される。電源をオフにするには、ランチャーアイコンの「電源オフ」で操作しなければならない。カーソルの移動はトラックホイールを利用する。なお、近年のBlackBerry端末にはトラックボールや「通話終了/電源ボタン」が搭載されるようになり、一般的な携帯電話端末に近い操作性を実現するようになった。

 日本語版では文字表示とローマ字入力、漢字の予測変換機能があり、英語に不慣れなユーザーに配慮した文字入力を実現している。ひらがなやカタカナ、アルファベットの切り替えは前面中央のファンクションキーで行う。キーボードでは、PCの「Shift」キーに相当する機能が「ALT」キーに割り当てられている。BlackBerryの入力操作に慣れるには、Windows Mobileなどのほかのスマートフォンに慣れたユーザーでも多少時間を要しそうだ。

 待ち受け画面には標準で27種類のアプリケーションが用意されている。電子メールや通話、メッセンジャー、スケジューラー、アドレス帳、Webブラウザ、タスク管理、メモ帳、ドキュメント検索といったビジネス向けのものが中心であり、セキュリティ設定やワイヤレス機能のオフといった操作も待ち受け画面からできる。このほか、日本語版のナビタイムとGoogle Maps、ゲームも用意されている。

 多くのアプリケーションは操作中に「通話終了」ボタンを押すと画面が閉じる仕組み。だが、これは操作が中断されるだけで、アプリケーション自体は終了しない。終了するには、トラックホイールからメニューの「閉じる」を選ぶ必要がある。

●国内と海外での使い勝手は

 8707hを持ち歩くと、国内にいれば常にFOMA網へ接続しているが、海外では場所によってGSM網かデータ通信速度がより高速のGPRS網に接続する。今回の場合、米国内では常にAT&T WirelessのGPRS網に接続した。

 インターネットや電子メールなどでデータ通信を利用する場合、8707hの通信速度はW-CDMA網で384kbps、GPRS網では115kbps(ともに理論値)となる。結論から言えば、データ通信における体感速度に大きな違いは感じられなかった。

 インターネットサービスでは、RIMがBlackBerry用のモバイルポータルサイトを開設しており、同サイトからCNNやUSA Todayといったメディア各社のニュースサイトやエンタテインメントサイトにアクセスできる。各社はBlackBerry向けのモバイルサイトを開設しており、8707hの画面上では支障なく閲覧できる。なお、PCサイトの閲覧には最適化されていないようで、試しにITmediaエンタープライズにアクセスしたところ、テキストだけが表示された。

 電子メールは、国内の携帯電話と同様にサーバから端末へ自動的に配信される仕組みだ。日本の携帯電話ユーザーにとっては当たり前とも言える機能だが、米国では数年前までショートメッセージサービス(SMS)以外に自動配信の仕組みが普及しておらず、BlackBerry人気に火を付けた機能だといわれる。

 新着メールや返信、転送などができ、操作方法は先に紹介したトラックホイールとメニュー画面で操作する。WordやExcel、PowerPoint、PDFといったドキュメントファイルを添付でき、メール画面からドキュメントを開いて内容を閲覧することができる。

 今回の検証で筆者が特に便利だと感じた機能が、インスタントメッセンジャー(IM)だ。BlackBerryでは標準サービスとして用意されているアプリケーションで、他のユーザーからメッセージが届くと自動的にメッセンジャーソフトが立ち上がる。メッセージ入力はQWERTYキーボードの操作に慣れてしまえば、一般的な携帯電話に採用されている10キーよりも素早く文字を入力できる。短いメッセージだけの電子メールを何度もやり取りするよりも、IMを利用すれば快適に相手とコミュニケーションができるようになるだろう。

 8707hには、「BlackBerry Desktop Manager」と呼ばれるPCでBlackberry端末を管理できるツールが同梱されている。USBケーブルで端末とPCを接続すると、自動的にデータを同期する。同期するデータは、PIMや電子メール、スケジュール、アドレス帳、画像、音楽、アプリケーションデータなどである。

 同ソフトでは、アプリケーションの追加・削除、Windows MobileやPalm端末からのBlackBerryへのPIMデータの移行、VPN接続先設定や暗号化強度といったセキュリティ設定、電子メールの振り分け設定、端末データのバックアップ・リカバリといったこともできるようになっている。ユーザー設定をカスタマイズする場合は、同ツールを使用すると容易に行える。

 RIMは、BlackBerry以前にポケットベル(米国ではページャー)を開発してきた歴史があり、BlackBerryはコミュニケーションに特化したモバイルツールとして進化を続けてきたという。特に電子メールやメッセンジャー機能は、入力操作やレスポンスも含めて一般的な携帯電話以上の性能を持っていると感じた。

 今年5月に開催された同社のプライベートカンファレンスでは、IBMやSAPといった大手ベンダーがモバイル向けのビジネスアプリケーションを展開すると表明し、今後はコミュニケーションツールとしてだけでなく、ビジネスツールとして活用されることが期待できる。

 国内ではWindows MobileやAppleのiPhoneが登場し、スマートフォン市場が活況を呈し始めた。NTTドコモの個人向けサービスをきっかけにBlackBerryも国内スマートフォン市場の動向を左右する存在となるかもしれない。

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