記事登録
2008年05月30日(金) 15時30分

「生き方の反省こめた」 風間杜夫「ひとり芝居」完結朝日新聞

 俳優の風間杜夫が97年から演じているひとり芝居シリーズの完結編として、新作を2本立てで上演する。シリーズの主人公のサラリーマン、牛山明の人生はどこへ向かうのか?

「見えない相手役がそこにいると感じるようになった」と話す風間杜夫

     ◇

 風間は97年、「旅の空」で初めてひとり芝居に挑戦。00年に「カラオケマン」を発表し、03年には「一人」を加えた3部作を一挙に上演した。カラオケ好きな中年サラリーマンがサウナで記憶喪失になり、昔から好きだった大衆演劇の一座に入って奮闘する。牛山の人生物語としても、それぞれ独立した芝居としても見られる3部作は、文化庁芸術祭大賞などを受賞。風間の代表作のひとつとなった。

 「最初はあれもこれもできなかったという無念さばかりが残った。決着をつけたいという一心で続けたら、あっという間に10年以上たった」。水谷龍二作・演出のこのシリーズは、モノローグではなく、牛山の周りにいる架空の相手との対話でドラマが進むのが特徴だ。「人間関係の面白さを見せるという点では普通の芝居と同じ。若い頃につかこうへいさんに鍛えてもらい、演技の引き出しを増やせたのが幸いしました」

 新作「コーヒーをもう一杯」「霧のかなた」では、記憶が戻らぬまま芝居に明け暮れる牛山が次第に家族へ回帰していく。「老いを迎える人間にとって本当の幸せとは何か考えたら、家族の存在が浮かんだ。自分の生き方への反省もこめています」

 100席強の小劇場から新橋演舞場のような大劇場まで、合わせて240ステージ上演。とりわけ「カラオケマン」は米国、中国、韓国、スペインなど海外公演でも好評を博した。「猛烈な企業戦士という日本人サラリーマンのイメージを破り、お間抜けなオヤジが登場するから受けたのでしょう」

 自らが来年還暦を迎えることもあり、今回でシリーズに幕を引くことを決めた。「3部作を上演できたから大丈夫だろうと思ったが、一度に新作2作分のせりふを覚えるのは大変。誤算だった」。そんな苦労をよそに、早くも5部作の一挙上演を期待する声もあがる。「お客様が迷惑でしょうねえ」と言いつつ、明るい表情はやる気に満ちていた。

 31日〜6月7日、東京・新宿の紀伊国屋ホール。5500円。その後九州、山口、香川、長野などを巡演。電話03・5371・1153(トム・プロジェクト)。(藤谷浩二)

http://www.asahi.com/culture/stage/theater/TKY200805300213.html