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2008年05月29日(木) 00時00分

ミャンマーから医療NGOが帰国、現地の様子を聞く朝日新聞

 災害医療NGO「災害人道医療支援会(HuMA)」理事長の鵜飼卓・兵庫県災害医療センター顧問が28日、サイクロン被害にあったミャンマー(ビルマ)から帰国した。22日からヤンゴン市で医療状況について情報収集した。現地の様子を聞いた。(編集委員・中村通子、林義則)

鵜飼卓さん ミャンマー南部のデルタ地帯で、避難する場所すらなく、道端で座り込むサイクロン被災者たち。現地の人が撮影し、鵜飼卓さんに託した=5月中旬、鵜飼さん提供    

 ■状況は?

 地元の支援団体の情報と映像によると、被災地では、いまだに川に遺体がいくつも浮いている状態だ。住居はことごとくつぶれ、田や井戸も海水につかり、地域全体の生活基盤が壊滅している。避難さえできない人も多く、道端での野宿に近い人もいる。

 ■支援の現状は?

 被災地に近い地域の人たちは、必死で生活物資や食料、水を被災者に届けている。しかし、被害が大きいイラワジ川デルタ地帯に行くには、車と小舟を乗り継いで計11時間かかるうえ、舟は不安定でよく沈む。食べ物が足りず、奪い合いさえ起きている。

 ■医療面はどうか

 病院へくる負傷者は減っているが、飲料水が十分でなく、コレラ患者が確認されている。雨期が始まり、家を失った人は風邪や肺炎になりやすい。デング熱とマラリアのシーズンも始まる。栄養失調も心配だ。24年前、エチオピアの医療支援に行った時に「熱がある」とやってきたやせこけた少年が、その翌朝、冷たくなっていたのが忘れられない。栄養失調に感染症が重なると、人は簡単に死ぬ。

 ■どんな支援ができるか

 私たちは小さなNGOなので、現地医療グループを手伝うのが現実的だろう。彼らは熱意はあるが、災害医療の知識に乏しい。若い医療者へ実践知識を教えるのは効果があると思う。日本の国際緊急援助隊が30日から被災地で活動すると聞いているので、連携できるかもしれない。

 地元の医療者たちは、本当に頑張っている。そろそろ、へとへとになるころだ。いま、我々外国人が助ければ、彼らは一息つける。大規模な災害なので、医療の必要性はまだまだ続く。地元の医療者が、長い闘いをがんばる支えになりたいと思う。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805290027.html