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2008年05月28日(水) 21時52分

中台対話、早期再開へ 国共トップ会談で合意朝日新聞

 【北京=野嶋剛】中国を訪れている台湾の与党、国民党の呉伯雄(ウー・ポーシュン)・党主席は28日、北京の人民大会堂で、中国共産党の胡錦濤(フー・チンタオ)総書記(国家主席)と会談した。両氏は9年ぶりとなる中台対話の早期再開で合意、6月中にも実現する見通しだ。馬英九(マー・インチウ)政権発足後の緊張緩和を、さらに前進させることで一致した。

 呉氏は馬氏の後任として党主席に就任。党内基盤の弱い馬氏を助け、立法院選と総統選の勝利に貢献した。内戦を戦った国共両党が与党同士で戦後初めて行うトップ会談となった。

 会談の冒頭、胡氏は四川大地震での台湾からの支援に「大陸の同胞、被災地の同胞を代表して心からの感謝を述べたい」と述べた。呉氏も「中華民族の緊密なつながりの自然な表れ」と応じ、一体感を演出。新華社によると、胡氏は8月の北京五輪開会式に呉氏の出席を要請し、呉氏は快諾したという。

 会談後の国民党の発表によると、双方は(1)中台対話の再開(2)中台直行の週末チャーター便の開始(3)中国人への台湾観光の開放、の3項目をできるだけ早く実現することで合意した。国連組織への加入など中国が拒否してきた台湾の国際社会への参加問題も、胡氏は今後の中台対話で議論に応じる意向を示したという。

 主権問題が絡む中台間では、中国側が海峡両岸関係協会、台湾側が海峡交流基金会という民間窓口を通じて対話してきた。だが、99年に当時の李登輝総統が「中国と台湾は特殊な国と国との関係である」とする「二国論」を発表、中国が反発して以来、開催が途絶えていた。

 呉氏に同行した国民党の幹部は、会談のキーワードは「擱置争議(対立の先送り)」だった、と解説する。就任前の蕭万長(シアオ・ワンチャン)・台湾副総統が4月に胡氏に会った際に投げかけ、胡氏もその後の連戦・国民党名誉主席との会談で使った言葉だ。

 中国にとっては、チベット問題、四川大地震と大きな課題を抱える中で、台湾問題の和解は前向きなメッセージを国内外に発する貴重な機会だ。台湾側も、対中関係改善で台湾経済を回復させると公約に掲げた馬氏としては、早く成果を出す必要がある。

 そのため「一つの中国」や「統一」という解決が難しい問題は脇に置き、「両岸(中台)関係の平和的発展を前進させる」(胡氏)という方向で歩調を合わせた形だ。

 ただ、ムード作りができても実行段階へと簡単に進まないのが、これまでの中台関係でもある。

 台湾のセン(センは憺のつくり)志宏・中華経済研究院顧問は「良好な対話の雰囲気も過去にあったが、95年の李登輝訪米や二国論などで吹き飛んだ。中台関係は小さな問題でも大きなつまずきになる」と指摘する。台湾内では「新総統誕生後1週間での訪中は民意の基礎がなく拙速だ」(陳菊・高雄市長)との批判も出ている。

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