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2008年05月28日(水) 21時23分

不法入国の中国人一家、長男の在留認める逆転判決朝日新聞

 中国残留婦人の親族を装って不法入国し、強制退去を命じられた中国人夫婦と長男(19)が処分取り消しを国に求めた行政訴訟の控訴審で、大阪高裁は28日、請求を棄却した昨年11月の一審・大阪地裁判決を変更し、長男について在留資格を認める逆転判決を言い渡した。夫婦については一審と同じく訴えを退けた。渡辺安一裁判長は「長男は当時8歳で不法入国の事情を理解していなかった。すでに日本社会に溶け込んで大学進学も果たしており、在留を認めるのが相当」と述べた。

在留を認めた判決後の記者会見で、大学生になった中国人一家の長男は「日本で勉強を頑張り、弁護士になる夢をかなえたい」と話した=28日午後、大阪市北区の大阪司法記者クラブ、宮崎園子撮影

 判決によると、中国・黒竜江省に住んでいた夫婦は96年、中国残留婦人の孫一家と偽って、長男を含む3人の在留資格を取得し、神戸港から入国。その後、大阪入国管理局の調査で偽りが判明し、04年に強制退去命令を受けた。

 長男は中学、高校で優秀な成績をおさめ、06年には大阪の私大法学部に合格した。判決は教師や友人ら約200人が強制退去に反対する署名をしていることも踏まえ、「周囲から多大な信頼や評価を得ている。再び中国に帰れば、これまでの努力や学業の成果が無に帰す恐れがある」と判断した。

 判決後、大阪市に住む長男は記者会見し、「両親と離ればなれになったら悲しい。でも、日本で弁護士になる夢に向かって勉強を続けられることになり、すごくうれしい」と日本語で話した。代理人の弁護士は「在留外国人が抱える個別の事情を酌まず、柔軟性のない対応を続ける入管当局に警鐘を鳴らす判決」と語った。(阪本輝昭)

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