記事登録
2008年05月25日(日) 06時16分

佐賀は宝くじブーム 高額当選全国2位、宝当神社も人気朝日新聞

 佐賀県で宝くじがちょっとしたブームだ。宝くじの売り上げは全国的にはここ数年頭打ちだが、佐賀は右肩上がりで伸び続け、06年度は約63億円と9年間で倍になった。せっせと宝くじを買い続ける県民に幸運の女神もほほ笑んだのか、06年度の高額当選率は九州で1位、全国でも高知県に次いで2位になった。「宝くじにご利益がある」と評判の唐津湾に浮かぶ小さな島の神社も、一獲千金を夢見る人々でにぎわっている。

  

宝くじの「聖地」宝当神社がある高島=佐賀県唐津市

宝くじに御利益があるとされる宝当神社=佐賀県唐津市高島、森本写す

宝当袋に「運気」をため込む観光客=佐賀県唐津市高島の宝当神社、森本写す

 宝くじの関係者が、佐賀の売り上げ増の理由として挙げるのが、近年の売り場の充実だ。ナンバーズなど数字選択式くじの販売端末は、99年度に15台だったのが、06年度には40台にまで増えている。

 だが、販売状況を管理する県財務課がより注目しているのが高額当選率だ。

 06年度の県内での100万円以上の高額当選率は全国2位。1億円以上の高額当選も近年相次いでおり、06年は6本、07年は4本。08年のグリーンジャンボ宝くじでも、1等の1億5千万円が2本出た。圧巻は03年のサマージャンボ。2等の1億円が6本出て、その回の同県内発売額約5億円を超え、“プラス収支”になった。

 「誰かが当たれば、次は自分もと思うのが人の常」と同課。高額当選の実績を張り出す宝くじ売り場が、売り上げを伸ばすのと同じだ。

 購買意欲をかき立てる「大当たり」が同県で出るのは、確率論上は「たまたま」でしかないが、県は県内での購入を呼びかける。各都道府県内での売り上げの約4割が、自治体の収入になるためだ。

 06年度の同県の宝くじ収入は約28億円。うち約21億円を一般会計に予算計上した。たばこ税は約19億円だった。当初予算が約4212億円の県にとっては侮れない額で、08年度の宝くじ収入目標はさらなる期待を込めて30億円にした。実は県内の1人当たりの06年度の年間購入額は8025円で全国平均8609円を下回っており、まだまだ伸びるという目算も働いている。

 同課は「宝くじが県予算のよりどころになっているのは事実。ぜひ高額当選の実績がある佐賀県内で買って欲しい」と呼びかけている。

 売り上げ、そして高額当選に貢献しているかもしれないのが、同県唐津市の沖合2キロに浮かぶ高島の「宝当(ほうとう)神社」だ。その名の通り、宝くじに絶大な御利益があるとされ、今や全国の宝くじファンにとっては「聖地」だ。ドリームジャンボ宝くじの発売直前の先週末、宝当神社を訪ねた。

 唐津市千代田町の桟橋から、フェリーに揺られて10分。整った台形で、周囲3キロほどの小さな島には、全島民約350人の300倍近くにあたる年間約10万人の観光客が訪れる。釣り客もいるが、ほとんどは宝くじで一獲千金を夢見る人たちだ。

 北九州市から来たという約50人の団体旅行客と港で遭遇した。「やっぱり大安の日に買わなくちゃ」「ぞろ目の日も良いらしい」。ご高齢のご婦人たちは、みな宝くじの話題を口にしながら、足早に神社へ向かう。

 港から徒歩5分。住宅地の中に、目当ての宝当神社はこぢんまりと鎮座していた。訪れた人は独特の参拝方法で願をかけている。土産店で買った黄色い巾着(きんちゃく)「宝当袋」に、空気をため込むようなしぐさをし、ひもをしめる。神社の「運気」を入れて持ち帰るそうだ。「買った宝くじを宝当袋に入れて、保管して下さいね」とガイドの声が響いた。

 村の守り神として16世紀に建立され、15年ほど前までは、どこにでもある地域の神社だった。島民が島おこしに「宝くじに御利益があるかも」と宝当袋を売り出したところ、参拝者から高額当選者が続出。以来口コミで広がった。これまでに億単位の当選者が40人以上もお礼参りに訪れ、さい銭箱に「お礼」と書かれた10万円入りの袋が入っていたこともあったという。

 「絶対に当ててやろう、と力んでくる人はほとんどいない。みんな高額当選を夢見ること自体を楽しんでますよ」。土産店「宝当海の駅」の野崎清美さん(35)は言う。宝当神社の本城敬忠宮司(42)は「宝くじを楽しめる時間的、経済的環境への感謝と、気持ちの余裕が大切です」と、ありがたい高額当選の“コツ”を伝授してくれた。

 本城宮司と話すうちに、団体客は消えていた。宿泊施設がない高島では、ほとんどの観光客の滞在時間は1時間ほどという。その後は、野良猫が路地を闊歩(かっぽ)する、のどかな風景に戻っていた。磯の香りにも気がついた。

 高額当選に必要な「余裕」が分かった気がした。その余裕は高島には確実にある。(森本浩一郎)

アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0524/SEB200805240005.html