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2008年05月17日(土) 10時00分

【トレンド】これは21世紀の「ポケットボード」? ソフトバンクモバイル“インターネットマシン” 「922SH」の神髄に迫るnikkei TRENDYnet

 ディスプレイが回転する「AQUOSケータイ」シリーズやスマートフォン、24色取り揃えた「PANTONEケータイ」、さらには「シャア専用ケータイ」など意欲的な携帯電話端末を世に送り出してきたソフトバンクモバイル。そんな同社が新たに投入したのがインターネットを利用するために作られた携帯電話"インターネットマシン"「922SH」だ。

【詳細画像または表】

 922SHは、パソコン向けのインターネットサービスが使いやすくなるよう、小型PCや電子辞書のような横長のディスプレイとフルキーボードを採用している。それでいて中身は立派な携帯電話であり、インターフェースや各種機能に関しては、一般的な携帯電話と同じ感覚で利用できる。この携帯電話ともスマートフォンとも異なる、新しいカテゴリの端末の使い勝手を検証してみよう。

閉じると「一回り大きな携帯電話」、開くと「高級な電子辞書」

 922SHは先に説明した通り、一般的な携帯電話とは異なるコンセプトで開発された端末である。そのため、外観も携帯電話と大きく異なっている。

 閉じた状態では、1.18インチのサブディスプレイとタッチパネルが存在するだけなので、一見すると何をするための端末なのか把握するのは難しいだろう。サイズ的には一般的な折り畳み型の携帯電話を一回り大きくした感じだが、ボディーに高級感があること、厚み17mmと薄型であることから、多くのスマートフォンに比べ持ちやすい印象がある。

 開いてみると、3.5インチの大型ディスプレイにフルキーボードと、さしずめ小型の電子辞書といった印象だ。これだけでも、普通の携帯電話とは明らかに異なる存在であることが理解できるだろう。P905iTVでは「かなり大きい」と感じた3.5インチのディスプレイも、このような形であれば比較的自然に感じられる。

 小型ボディーにフルキーボードを詰め込んでいるため、キーボードによる入力のしやすさを気にしている人も多いだろう。だがキーは意外と大きめで打ちやすく、両手で持って親指でタイプするというスタイルであれば、不自由を感じることはほとんどない。もっとも、記号だけでなく、数字もFnキーを使って入力する必要がある、改行やスペースキーの位置が右下寄りである、など犠牲になっている部分もあるので、多少の慣れは必要だ。

 また、カーソルやYahoo! ケータイ、メールなどのキーが右側に集中しているというのもやや気になった。片手で使うことを想定してのことと思われるが、実際に使ってみると、バランス上、両手で持つ機会の方が圧倒的に多かった。そのため、メニューやマルチタスク関連、ページアップ/ダウンなどのキーは左側に配置した方が使いやすいように感じた。

パソコンのメールも送受信できる「PCメール」の実力は?

 インターネットマシン922SHの神髄は、やはりメールやWebなど普段パソコンで利用しているインターネット関連のサービスがそのまま利用できるところにある。まずはメール関連の機能から確認していこう。

 922SHは一般的なソフトバンクモバイル携帯電話と同じS! メールに加え、新たに「PCメール」機能を搭載している。これは文字通り、パソコンのメールを送受信できる機能で、最大で3つのメールアカウントを同時に扱うことが可能。

 メールアカウントの登録は、アカウントやパスワード、POP/SMTPサーバーなどを設定すればよく、パソコンのメーラーを設定したことのある人なら苦労はしないだろう。なおYahoo! メールを使う場合は専用のメニューが用意されており、アカウント登録が行いやすくなっている。

 メールの送信はS! メールと同じなので、携帯電話のメールに慣れていれば不自由を感じることはないだろう。加えてフルキーボードが搭載されており、予測変換との組み合わせで文字入力は非常に快適だ。一方受信に関しては、S! メールと同じく自動受信という訳にはいかないが、「新着チェック設定」を行うことで、30分〜1日という間隔で定期的にメールチェックできるようになる。

 パケットし放題の料金上限がアップする、IMAPに対応していないなどいくつかの弱点はあるものの、パソコンのメールをいつでも気軽に扱うことができるメリットは非常に大きい。現時点では国内最強のメール端末だといえるのではないだろうか。

3.5インチ横画面でWebも快適、だが便利になったゆえの問題も

 続いて、パソコンのWebサイトが利用できるPCサイトブラウザの使い勝手について確認していこう。

 PCサイトブラウザ自体は、これまでのソフトバンクモバイル端末にも搭載されているが、922SHに搭載されているものはいくつか機能強化がなされている。

 第1に読み込み可能な容量が1MBまで拡張されたこと。そのため、これまでのPCサイトブラウザでは表示しきれなかった画像の多いWebサイトなども表示できるようになった。そして第2にAjaxに対応したこと。これによってGoogleマップをはじめとする多くのWebアプリケーションが利用可能となっている。

 また、922SHのディスプレイは3.5インチと携帯電話としては最大クラスで、かつ解像度が854×480のフルワイドVGAと、人気の小型PC「EeePC」をも上回っている。そのためパソコン向けに作られたWebサイトの閲覧も不自由なく行うことができ、非常に快適だ。ポインティングデバイスは用意されていないが、縮小マップによるガイド機能など従来のPCサイトブラウザに用意されている機能が利用できるので、操作面で不自由することは少ない。

 とはいえ、PCサイトブラウザを使っていると、いくつか不満を感じる部分がある。読み込み容量制限が緩和されたがゆえに、画像が多く容量の大きいWebサイト(日経トレンディネットのトップページなど)を表示すると、動作がかなり重くなってしまうのである。他にもFlashが最新のものに対応しておらず表示できない箇所が多い、メモリ不足を起こしやすいなど、便利さが増してしまったがゆえに顕著になった問題点も少なくない。Yahoo! やGoogleなどの軽量なポータルサイトや、個人のブログなどを利用する分には問題ないが、画像や容量の多いWebサイトにアクセスする際は注意が必要だ。

仕事からホビーまで、さまざまな用途に役立つツールも用意

 922SHにはインターネット関連以外にもフルキーボードと横画面の大型ディスプレイを活用したツールが多数搭載されている。

 横画面を生かすツールといえば、やはりワンセグだ。ワイド画面を生かしたマルチディスプレイの利用も可能で、ワンセグを視聴しながらメールをしたり、Webサイト検索を行ったりできる。

 実用ツールとしては、オフィス文章やPDFが閲覧できるドキュメントビューアや、手軽にメモができる「ちょこっとメモ」などが便利だ。922SHの形状から「電子辞書」を想像した人も多いと思うが、国語・英和・和英の3つの辞書が利用できる「辞書機能」も搭載しており、見た目のまま電子辞書としても利用可能だ。

 2メガピクセルのカメラも搭載されており、シャープ製端末ではおなじみの名刺リーダーとしての利用も可能だ。ただ撮影を行うには本体を開かなければならないので、一般的な携帯電話と比べ、気軽さという意味ではやや劣る印象だ。

音声通話はどうやって行うのか?

 その形状や「インターネットマシン」という名称からつい忘れがちだが、922SHの中身はあくまで携帯電話である。ゆえに当然のことながら音声通話が可能だ。

 音声通話は本体を閉じた状態で行う。そのため、本体背面部には通話キーと終話キーの2つが用意されており、電話がかかってきた場合はこれら2つのキーで対応することとなる。一方、電話をかける場合は主に2つの方法がある。1つは、本体を開いた状態で番号を入力してから閉じて通話するというやり方、そしてもう1つは、閉じたままの状態で背面にあるサブディスプレイとセンサーキーを用いて電話をかけるやり方だ。

 センサーキーにはカーソルと決定・クリアの機能しか用意されていないので、閉じたままの場合は、基本的に電話帳や履歴などから番号を選んで電話をかける形となる。だが、使いやすいとはいえないものの、閉じた状態での番号入力も可能だ。その場合は、左側面のメニューキーを押して「電話番号入力」を選ぶことでカーソルを用いて入力する。しかしどうせなら、センサーキーを増やして番号を直接入力できるようにして欲しかった。

 また、閉じた状態でメールを受信した場合は、新着メールに限りサブディスプレイでメールの内容を閲覧することができる。とりあえずメールを確認したい場合は便利な機能だろう。

スマートフォンの面倒さをなくした「家電らしさ」が大きなメリットに

 922SHは小型PC並みの解像度を持つディスプレイやフルキーボードを搭載するなど明らかにPCを意識した端末だ。だが、中身は携帯電話、ひいては家電であり、難しいことを考えなくても、一般的なケータイと同じ感覚でモバイル・インターネットが利用できるところが大きなポイントだ。同じモバイル・インターネット端末としてはスマートフォンが存在するが、こちらは、よりPCに近く、汎用性を重視するがゆえにインターフェースや設定などが複雑で分かりにくい。その点、922SHはごく普通の日本人が利用するモバイル・インターネット端末として非常に適した形であるといえるだろう。

 携帯電話のインターネットサービスが開始される以前、携帯電話と接続してEメールができるという、メール専用端末「ポケットボード」が人気を博していた。少々趣は異なるが、インターネットマシンは21世紀におけるポケットボードの進化系といえるかもしれない。

著 者

佐野 正弘(さの まさひろ)

 ゲームやWeb、携帯コンテンツなどのデジタル・コンテンツを開発するエンジニアを経て、現在ではモバイル・携帯電話に関する執筆を中心に活動している。近著に「ケータイでGoogle」(技術評論社)、「携帯サイトSEO&SEM向上テクニック」(毎日コミュニケーションズ)など。



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