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2008年05月10日(土) 08時27分

オーチス社の補強不備が原因か エスカレーター事故朝日新聞

 名古屋市営地下鉄で9日に乗客の転倒事故が起きたエスカレーターを、製造元の日本オーチス・エレベータ(東京都中央区)が昨年9月に補強工事していたことが、名古屋市交通局などの調査でわかった。エスカレーターが逆走したことで乗客11人がけがをしたが、同局はこのときの補強が十分でなかったことが被害が広がった原因との見方を強めている。

事故を起こしたエスカレーターの機械室のずれた台座。一番右側がブレーキ装置=名古屋市交通局提供

モーターなどを取り出して調べる愛知県警の捜査員ら=9日午後9時6分、名古屋市中区の市営地下鉄久屋大通駅、岩下毅撮影

 同じように補強不足のエスカレーターがあれば同種の事故が起きかねない可能性も出てきた。

 安全面から通常エスカレーターは何らかの原因で緊急停止してもブレーキがかかる仕組みになっている。しかし、9日の事故では緊急停止後にエスカレーターが逆走し、乗客が次々に重なるように倒れた。

 同局などによると、ブレーキをかける制御装置の鉄製台座を固定するボルト4本のうち3本が折れ、台座自体がずれていた。そのためブレーキが十分に作動せず、乗客の重みで制御ができずに逆走したと同局はみている。

 89年に設置されたこのエスカレーターについては同社から昨年9月に「ほかの同型式のエスカレーターでボルトが折れる事例があったので調べさせて欲しい」との連絡があって2本が折れていたのが見つかり、直後に鉄製の金具などで補強した。市の照会に同社はその事例について場所も内容も明かさなかったという。

 一方、名古屋市営地下鉄で使用されているほかの18基の同型式のエスカレーターも同社がこのときに点検したが、異常は見つからなかった。

 同社の広報室は「場所は言えないが、同型式のエスカレーターでボルト1本が破損する事例があり、名古屋市営地下鉄のエスカレーターも調べた。同型式が国内にどれだけあるかは調査中で、名古屋以外も当時点検したかどうかは広報室で把握していない」としている。

 国土交通省は「オーチス社から1年前の件も含めてエスカレーターの補強修理をしたという報告は受けていない」としている。ただ、補修の場合は法令上の報告義務はなく、情報の提供も通常は求めていないという。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0510/NGY200805090014.html