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2008年04月23日(水) 15時01分

県国保連10億円着服:幹部、ずさん管理認める 説明、歯切れ悪く /茨城毎日新聞

 消えた10億円に誰も気付かなかったのか。男性職員による保険料着服が発覚した22日、会見した県国民健康保険団体連合会幹部は「捜査に差し障る」と繰り返し、不十分な説明に終始した。命と健康を守るために県民が納めた保険料の管理のずさんさばかりが目に付いた。【八田浩輔、若井耕司】
 ■沈黙−−「捜査に影響」と
 同連合会は午後4時から水戸市笠原町の県市町村会館で会見し、理事長の石塚仁太郎・坂東市長ほか事務局の担当者ら計約15人が出席。謝罪を繰り返したが、具体的な手口など内容については「警察の捜査に影響を与える」として言葉を濁す歯切れの悪いものだった。
 事務局の担当者らは、チェック体制の甘さを問われると、顔を見合わせ、うつむきがちに沈黙を続けた。その後、上司の決裁がないまま男性職員が1人で現金を引き出していたことなど経緯を説明し、決算時や四半期に一度行われる監査の際にも帳簿上に問題がないため不正を見抜くことができなかったと釈明。「結果として1人任せの状態になっていた」とずさんな管理体制を認めた。
 ■地味−−「まさか彼が…」
 「昼間はコンビニ弁当で車も服装も普通。まさか彼がという感じです」(小坂哲郎・同連合会事務局次長)。
 男性職員は高卒後、93年に採用された。水戸市内に妻と子どもと3人で暮らしており、勤務態度はまじめだったという。5年前に会計課に配属され、06年度に同課主任に昇格。同連合会は、着服は昇格以前から行われていたとみている。
 職員が着服を告白し、水戸署への出頭を告げた手紙は、手書きの便せん数枚だった。同連合会の関係者に対する謝罪はあったが、県内の被保険者に対する謝罪はなかったという。
 同連合会は、今年4月1日付で職員が電算業務課に異動し、これ以上の隠ぺい工作を行えなくなったことが告白する契機になったとみている。男性職員は、先週初めから体調不良を理由に年次休暇を取得していた。聞き取りに対して着服の事実を認め「すべて競艇に使った」と淡々と答えたという。
 ■影響−−実害否定できず
 着服による多額の損失が、県民の命を預かる役割を担う連合会の運営に支障をきたすことはないのか。今回損失が生じたのは、高額医療費などについて同連合が市町村に交付するための特別会計だった。
 今月18日、昨年11月分の医療費として県内各市町村に計21億円が交付されたが、着服による約10億円の損失は、繰り越しなどの内部留保金約17億円から切り崩して補てんされたという。事務局の担当者は「通常の業務には支障はなく、各関係機関に直接的な影響はない」とする一方、「県民に実害はないのか」と問われると「ないとはいえない」とした。
 同日、同連合に対して県民から約20件の苦情電話が寄せられたという。県保健福祉部は「組織的な犯罪とは異なると認識しているが、残念としか言いようがない。連合会に対し、県民の信頼を回復するよう指導したい」とするコメントを出した。

4月23日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080423-00000140-mailo-l08