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2008年04月21日(月) 10時48分

「復刻版」電車でゴー!?オーマイニュース

 私は生まれてこのかたずっと京浜急行(京急)沿線に住んでいる。京浜急行は、本線が東京・品川から、京浜工業地帯を貫き、神奈川・三浦半島までを結ぶ、赤い車体に白いラインがトレードマークになっている鉄道で、羽田空港や川崎大師を結ぶ支線がある。

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 小さいころは京急以外の電車にほとんど乗らなかった、小学校に上がる前までは、すべての電車は赤いものだと思っていた。

 そんな私が初めて東急東横線に乗ったときの「衝撃」はものすごかった。約30年前から他社に先駆けてアルミ車両を導入していた東急線の車両を見て思ったことといえば……、

 「何だよこの電車、色塗ってないじゃんか!」

 環境というのは恐ろしいもので、電車は必ず色が塗ってあるものだと思っていた当時の私にとって、色の塗っていないステンレス車両はとてもショッキングで、ありえないものだったのだ。

 それに、当時の営団地下鉄(現東京メトロ)丸の内線は赤い車両が走っていたので、京急の別の路線だと思っていた……。

■京急の復刻版車両に遭遇

 そんな「京急っ子」の私が帰宅しようと、駅でいつものように本を読みながら電車を待っていた。

 しばらくして電車が到着したので、視線をその電車に移した瞬間、しばし硬直してしまった。

 そこに止まっていた電車は、いつもの赤い車体に細いラインのものではなく、黄色く太いラインが入ったものだった。

 「何だ、これ……」

 こんな車両は今まで見たことがなかった。見ると車体に「ギャラリー号」と書いてある。

 乗ってみると、車内には広告の代わりに子供たちが書いた、京急にちなんだ絵が飾られていた。電車や、運転士、整備士など、子供たちが思い思いに描いたほほ笑ましい絵を見ていると、その中に古い列車の写真を見つけた。

 近づいてみると、40年前に走っていた電車の写真で、このとき乗った列車はこの古い電車のカラーリングを「復刻」させたものだという。京急が創立110周年記念イベントの一環として、こういう列車を運行しているという。

 「復刻版」といえば、最近ではプロ野球の交流戦などで昔のユニホームの着用する球団や、お菓子やドリンク、カップラーメンなど、ここ数年続く「復刻」ブームの極みとでもいうべきだろうか……。

 そういえばその数日前、同じ京急で別の「復刻」車両を見つけた。それは京急川崎から小島新田を結ぶ大師線だった。いつもの赤ではなく、エンジとも、エビ茶色ともいえる、渋い色使いの車両で、これも昔の電車のカラーリングを再現したものだという。

 前者のカラーリングは私の生まれる前なので記憶になかったが、この渋い色は辛うじて記憶にあった。約30年前、子供だった私は数えるほどだったが、こういう色の電車に乗ったことがあった。その車両は床が木でできていて、古いペンキの、すえたにおいがしたのを覚えている。

 今は通勤の手段でしかない京急だが、そんな電車を見て、電車に乗るのが楽しくて仕方なかった子供のころを思い出して、ちょっとした「時間旅行」ができた。

 こういう試みはぜひほかの鉄道会社でもやってもらいたい。きっとそんな電車に乗った人たちも私のような体験ができると思うのだ。何気ない日常で、思いがけなくちょっと得した気分で電車を降りた。

 駅を離れていくその電車を見送りながら、今度久しぶりに京急に乗って、子供のころによく行った三浦半島まで小旅行をしてみようかと思った。

 今では国内外を問わずいろんな土地を旅して、さまざまな交通機関に乗っている私にとって京急と、その終点の三浦半島はいわばその旅の「原点」だった。「原点回帰」、そんな言葉をふと思い出した夜だった。

(記者:小澤 健二)

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