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2008年04月08日(火) 16時15分

裁判員法施行日案 「あと1年しか…」弁護士会焦り 最高裁は安堵の表情産経新聞

 「希望通り。あとは準備を進めるだけ」。裁判員制度を来年5月21日から始動させる政府の施行日案が示された8日、最高裁幹部らは安堵(あんど)の表情を見せた。一方で裁判員裁判への弁護人の確保など、準備の遅れが指摘されている日本弁護士連合会は「最大限の努力をしていく」。各地の弁護士会からは、「本番まであと1年しかないのか」と焦りの声も聞かれた。

 施行日について、裁判所の現場では「裁判官の大規模な人事異動がある4月から、一呼吸置いた方がいい」(東京地裁の裁判官)などとして、5月中旬以降を求める声が大きかった。

 最高裁の小川正持刑事局長は「具体的な日にちが決まり、国民の間に制度への『現実感』が一層高まると思う。気持ちを新たにし、準備する」と述べた。今後、裁判員選任手続きや審理、評議の進め方などについて細部を詰める。

 大阪地裁でも「まだ正式決定ではないので…」としながらも、スタートに向け準備は着々と進んでいる。これまで使用していた法廷の法壇を改築して裁判官3人と裁判員6人が着席できるようにしたほか、映像や画像を使用して説明できるテレビモニターなどを設置した裁判員裁判用の新法廷2つが先月新たに完成した。さらに現在、6法廷と審理の後に量刑などを話し合う評議室の建設を進めている。

 また、昨年10月10〜12日の3日間かけ、民間企業から裁判員を選任してほぼ本番同様の模擬裁判を実施。12月までに計8回の模擬裁判を予定しているという。

 一方、大阪弁護士会の大川一夫副会長は、「まだまだ課題も多く、本番まであと1年しかないのかというのが実感」と、施行日の公表に焦燥感を募らせた。

 大阪弁護士会館(大阪市北区)には日弁連が研修用の本物と全く同じ模擬法廷を設置。同弁護士会では裁判員裁判に対応できる弁護士を養成する研修プログラムを作成中で、大川副会長は「座学的な研修は進んでいるが、実践的な研修はこれから。あと1年に迫っているので早急にスキルアップを図りたい」と話した。

 日弁連関係者によると、個人加入の各弁護士会は組織で対応する最高裁や法務省・検察庁に比べ、準備が効率的に進まない。裁判員裁判の弁護人確保や弁護技術の向上が課題で、今年1月に陪審制度の米国から弁護士を招いた研修会後、弁護技術はレベルアップが図られているという。

 日弁連の西村健・裁判員制度実施本部事務局次長は最大限の努力を約束し「問題点を抱えているが、市民に温かく見守ってもらい、一緒に裁判を変えていきたい」と話した。

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