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2008年03月28日(金) 00時00分

⑰硬派なメッセージ発信読売新聞

自宅のパソコンでアニメ『ナマゴミン』の続編を制作する大山さん

 世の中を良くしようと今年1月、渋谷駅前の大型モニターで上映が始まったシブアニ。第一弾となった作品は『ナマゴミン』。人間に食べて欲しいとの切ない願いを抱き、旅を続ける生ゴミたちの物語だ。

 主人公は鳥皮の「トリカワちゃん」。焼き鳥屋で生き別れになった兄を探す旅に出たところ、大根の切れ端、梅干しの種など仲間が次々に加わる。かわいらしいキャラと飽食ニッポンの矛盾を対比させ、「ゴミを減らそう」と社会に訴えている。

 シブアニを発案したのは元ライブドア副社長の伊地知晋一さん(39)。親しみやすいアニメで、街を歩く人に硬派なメッセージを届けようとの試みだ。

 『ナマゴミン』の作者、大山慶さん(29)(杉並区在住)には最近、とてもうれしいことがあった。「今日渋谷ですげぇ切ないアニメに出会った」。ネット上の誰かの日記にそう書いてあったのだ。

 実は大山さん、芸術的なアニメの世界では有名人だ。砂嵐のようにざらついた映像の中で、ミミズと病床の少女を対比させるなどシュールな作風で知られる。この作品は『ゆきちゃん』。カンヌや香港など国際映画祭で上映された作品もある。「これからも芸術的な作品は作る。でも、たくさんの人に喜んでもらえるアニメ作りも魅力」と大山さん。ナマゴミンの続編の制作にも余念がない。

 駅前の大型モニターを運営管理する「シブヤテレビジョン」(港区)も、全面的に協力している。上映は1時間に1分。料金はほんとならひと月約200万円だが、シブアニにはタダで貸している。同社常務の吉浜泰蔵さん(48)は「お金さえ入ればいいという考えはない。街の人々が感化されるような、意義のある作品なら大歓迎です」と言い切る。かっちょいい〜。

 こらっ、若者たち。ナンパばかりしてるんじゃないゾ。

 ■シブアニ上映作品■ ただいま『鯰侍(なまずざむらい)』も上映中。ナマズの侍が熱帯雨林を守るために活躍するお話。この後は、満員電車の中で席を譲らないマナーの悪いオウムを描く『オウム』、便所紙がトイレの作法を説く『ウンコマン』が登場する。『ナマゴミン』を含む4作品は、シブアニのホームページで公開されている。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/feature/tokyo231203958795871_02/news/20080328-OYT8T00129.htm