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2008年03月20日(木) 03時01分

暫定税率の「見返り補助金」で旅行・景品 トラック協会朝日新聞

 1976年に軽油引取税(都道府県税)の暫定税率が導入された際、「見返り」として都道府県から交付されるようになった補助金「運輸事業振興助成交付金」が、交付先の各地のトラック協会でスポーツ大会の景品代や慰安旅行、健康診断の補助などに使われていたことが分かった。国土交通省は公金の使われ方として好ましくないとして改善を指導したが、業界内には反発もあり、一部続けられているものもある。

  

 地方分の道路特定財源を増やすため、76年度から軽油引取税の税率が30%引き上げられた。交付金はそれに合わせて旧自治事務次官通知で創設され、06年度は全国で約192億円が交付された。約9割は軽油の大口ユーザーの運送業者の団体、各都道府県のトラック協会に支出されている。

 補助の目的は「公共輸送力の確保」「輸送コストの上昇抑制」とされ、都道府県トラック協会は当初、運送業者の車両購入補助などに充てた。その後、環境対策や交通安全対策が主となったが、一部が会員の福利厚生事業にも使われてきた。

 東京都によると、06年度に約11億4000万円が交付された東京都トラック協会の場合、福利厚生として東京ディズニーランド・ディズニーシーの入場料割引に3542万円などを支出した。

 神奈川県トラック協会では、06年度の交付額9億740万円のうち1700万円が福利厚生行事費だった。スポーツ大会費用と慰安旅行補助、人気芸人を招いた手品や物まね観劇の芸人の出演料など。同協会によると、制度ができた76年度から同様の使い方をしてきたという。

 埼玉県でも06年度、ボウリング大会などのトロフィーや景品代、1人3000円の保養所利用助成にこの交付金が使われていた。

 しかし、一部の自治体が交付金の支出に疑問を示したことを機に、国交省は06年2月、各運輸局に通知し各トラック協会に使途の適正化を指導。福利厚生事業のうち、公金の使途として国民の理解が得られないと考えた「定期健康診断」「宿泊・施設利用」「スポーツ大会」への助成を控えるよう要請した。

 これを受け、東京都トラック協会は07年度、ディズニー施設の利用補助を中止。同協会の岩田敏雄副会長は「会員のニーズにあわせて交付金を活用できていると考えていたが、国や都がダメだと言えば、続けることはできない」と話す。だが、会員から「高い税金を払っているのになぜ補助が受けられなくなるのか」「従業員が喜ぶ事業をやめるべきでない」などと苦情が相次いだという。

 一方、神奈川県の協会は通知にもかかわらず、07年度も健康診断補助をやめず、交通安全対策の一環として今後も続ける方針だ。同協会幹部は「交付金がなくなれば、零細事業者が多い運送業界では福利厚生なんてできなくなる」と説明。一方で「燃料高騰の中、交付金はいらないから、暫定税率を廃止してほしいという声もある」とも話した。

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 全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡事務局長の話 問題意識も持たず、明確な目的もないまま漫然と続けられてきたばらまき行政の典型だ。都道府県の交付金や補助金の種類は多いが、使途の透明性確保はかなり遅れている。特定業界の利権になっている補助金もある。少額でも、長年続けば大きい。補助金、交付金のあり方を見直す時期に来ている。

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 〈軽油引取税の暫定税率〉 道路特定財源である都道府県税の軽油引取税の税率が76年度、道路財源を増やす目的で暫定的に引き上げられた。当時、軽油引取税の税率は1リットル当たり15円だったが、これに2年間の暫定措置として4円50銭が上乗せされた。その後、期間の延長と暫定税率のアップが繰り返され、現在は1リットル当たり17円10銭が上乗せされている。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0319/TKY200803190331.html