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2008年03月15日(土) 03時01分

違法コピー常習者はネット切断、プロバイダー業界が合意読売新聞

 インターネット上でファイル交換ソフト「ウィニー」などを通じた映像や音楽の違法コピーによる著作権侵害が深刻化していることを受け、国内のプロバイダー(接続業者)が加盟する四つの業界団体は、違法コピーのやり取りを繰り返す利用者についてネットへの接続を強制的に停止することで合意した。

 ネット上からの利用者の排除は「通信の秘密」や「通信の自由」に抵触するとして導入に慎重な意見が強かったが、著作権団体と連携して悪質な利用者を特定し、その利用者に限れば接続停止や契約解除が可能と判断した。

 この措置の導入を決めたのは、「テレコムサービス協会」や「電気通信事業者協会」など4団体。

 4団体の加盟社は国内の主要なプロバイダー約1000社で、業界全体で打ち出す初の「ウィニー対策」となる。来月にも「日本音楽著作権協会」や「コンピュータソフトウェア著作権協会」など著作権団体と協議会を設立。どの程度、違法コピーをネット上に流出させた場合、接続を打ち切るかといった具体的な指針作りを始め、年内の実施を目指す。

 国内でウィニーなどのファイル交換ソフトを使っているのは推計約175万人にのぼり、やり取りされるファイルの大半は違法コピーだ。著作権団体がネット上を6時間監視しただけでも、ゲームソフトなどの違法コピーは355万件(正規のソフトの価格で総額95億円相当)、音楽の違法ソフトの場合は61万件(同4億4000万円相当)が確認された。この結果から、著作権団体側は、著作権侵害の被害は少なくとも100億円に上るとみている。

 プロバイダー各社も違法コピーが公開されたホームページの削除などの措置を取っているが、ネット上の違法コピーは膨大で削除では追いつかない。あるプロバイダーが一昨年、ウィニーの使用を検知すれば通信を切断する措置を導入しようとしたところ、総務省から「ネット上のやり取りをのぞき見していることになり、『通信の秘密』に抵触しかねない」と指摘されて断念した経緯もある。

 今回の対策は、著作権団体が、違法コピーのやり取りを繰り返している利用者について、ネット上の「住所」にあたるIPアドレスを専用ソフトで特定したうえでプロバイダーに通知。プロバイダーは、このIPアドレスをもとに利用者に警告メールを送信し、従わない場合などには、一定期間の接続停止や利用契約の解除に踏み切る。

 この仕組みであれば、総務省も「プロバイダーが利用者の通信内容を直接調べることにあたらないため問題はない」としている。警察庁もこの協議会に加わる方針で、悪質な利用者の取り締まりを強化する。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080315-OYT1T00038.htm