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2008年03月15日(土) 18時08分

<外為証拠金取引>個人投資家は悲喜こもごも 円高助長も毎日新聞

 海外の外国為替市場で約12年半ぶりに一時1ドル=98円台を付けるなど急激な円高・ドル安で、企業だけでなく個人投資家にも大きな影響が出始めている。少ない資金で元手の数倍〜数十倍の外貨運用ができ、大きな利益を狙える外為証拠金取引(FX)で、今回の円高・ドル安で一瞬にして数百万円もの損失を出すケースも相次いでいる。一方で、円高メリットを生かして外貨投資を増やす人もおり、FXをめぐる個人投資家は悲喜こもごもの様子だ。

 FXは最初に一定額の証拠金を元手として納めると、その数倍〜数十倍のドルなど外貨を運用できる高リスク・高リターンの金融商品。98年の外為法改正で解禁されたが、円安・ドル高が定着した05年ごろから取引を始める個人投資家が急増した。インターネットで手軽に注文できる簡便さもあり、サラリーマンや主婦、女性会社員らにも人気を集め、FX業界全体の口座数は昨年9月に100万口座を突破した。

 ただ多くの個人投資家にとって、一方的な円高相場は今回が初めて。業界最大手「外為どっとコム」の上田剛資金為替部長は、「円安が続いてきた安心感と金利差収入狙いで、個人投資家の大半は円を売って、ドルやユーロなど高金利通貨の保有量を増やしてきた」と指摘。「2月末以降の急激な円高について行けず、保有するドルを売り遅れた人が損失を出すケースも出てきた」と話す。

 例えば、1ドル=115円だった昨秋に100万円の証拠金で10倍分(1000万円)のドル運用を始めた場合、8万7000ドルの投資になる。円高が進み1ドル=100円だと円換算の評価額は870万円に減少し、損失は130万円にのぼる。実際、インターネット上のFX関連のブログや掲示板には「為替チャートを見るのが怖い」「もう終わりです。取引から撤退します」−−などと急激な円高に悲鳴をあげる書き込みも目立つ。

 FXの公設市場「くりっく365」を運営する東京金融取引所では昨夏以降の円高で毎月の取引量は減少傾向だったが、円が1ドル=100円を突破した13日は円・ドル取引量が通常日の5倍の15億625万ドル(約1500億円)と過去最高を記録した。ドルの投げ売りもあったが、ドルが安くなりすぎたと見た投資家が、新たにドルを買う動きもあった。

 個人のFX投資マネーは一人一人の取引量は限られているが、全体では大きな額になり外為相場への影響も無視できない。市場では「FXで損失を出した投資家の外貨売りが強まれば、円高・ドル安を一段と助長する」(欧州系銀行)との見方も出ている。【斉藤望】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080315-00000063-mai-brf