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2008年02月29日(金) 15時03分

<過剰与信>信販会社に初の返還命令 次々販売巡り高松高裁毎日新聞

 着物の次々販売をめぐり、高松高裁(矢延正平(やのぶまさひら)裁判長)が1月、徳島市の精神神経障害を持つ女性(03年に61歳で死亡)の購入契約の多くを「過量販売、過剰与信にあたり、民法の公序良俗に違反し無効」として、呉服販売会社「東京ますいわ屋」(横浜市)と信販会社「セントラルファイナンス」(名古屋市)に対し、クレジットで支払った代金約770万円の返還を命じたことが分かった。信販会社の過剰与信を理由に既払い金返還を命じたのは全国初。両社は上告せず、判決は確定している。

 女性は00年8月〜01年12月、12店から計約6000万円の着物、宝石などを購入。うち東京ますいわ屋との取引は63件計約2750万円で、この中の20件約2050万円はセントラル社とのクレジット契約だった。女性は難病の原発性胆汁性肝硬変で、00年7月には肝性脳症による精神神経障害が出ていた。

 高松高裁は判決で、この障害により女性は異常な買い物をしたと推認。東京ますいわ屋とセントラル社の担当者は女性の言動の異常性を途中で認識できたのに、取引を続けたと判断した。

 販売店や信販会社には、顧客の支払い能力を超えて過量販売や過剰与信をしてはならない義務がある。

 高裁は、両社が障害者年金以外に収入のない女性の支払い原資を十分把握していなかったことや、必要性の乏しい商品を短期間に多数購入している状況などから、東京ますいわ屋は購入当初から4カ月以降の契約を過量販売、セントラル社は6カ月以降を過剰与信と認めた。

 返還を命じた代金は約1300万円で、クレジットにかかわるものが約770万円。

 この訴訟は、セントラル社がクレジットの残額支払いを求め提訴。女性側が反訴した。徳島地裁は昨年2月の1審判決で、セントラル社は過剰与信に当たる取引がないと判断。女性側が控訴していた。

 「呉服過量販売対策会議」代表の木村達也弁護士は「過剰与信の違法性を認め既払い金返還を命じたのは全国初で、極めて画期的だ。割賦販売法改正の追い風となると確信する」と話す。【亀田早苗】

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