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2008年02月15日(金) 13時54分

録画170件、検察「有効」 取り調べ検証朝日新聞

 最高検は15日、来年の裁判員制度スタートを控えて全国の地検で試行している取り調べの一部の録音・録画について検証した「中間とりまとめ」を公表した。録画などについて、検証・公表するのは初めて。容疑者の意思で供述したことを法廷で理解してもらうためには「現在の方法は有効だ」と結論づけたが、全過程の録画については担当検事の反対意見が多かった。全過程の「可視化」を求めている日本弁護士連合会との溝は深く、攻防は続きそうだ。

  

 最高検によると、裁判員制度の対象となる殺人や強盗殺人などの重大事件を中心に06年8月〜07年末の間に全国で170件が録画された。

 撮影されたDVDが法廷で上映されたのはわずか4件。それにより、被告や証人の供述が自分の意思によるものだという「任意性」があると裁判所が認めたのが3件、否定したのは1件だった。

 回数が少なかった理由について最高検は「そもそも任意性が争われる事件が少ない。今後はもっと回数を増やしたい」としている。弁護側に証拠開示されたのは22件。弁護側が録画内容を見たうえで、任意性を争うのをやめたケースもあったという。

 1回の録画の実施時間は20分未満が41%、20〜40分が51%。法廷で見ることになる市民の負担を考えているという。

 撮影した担当検事にアンケートを実施したところ、DVDの証拠価値について、回答した96%が「高い」もしくは「ある程度はある」と前向きに評価した。「自分の言葉ではっきり供述していることがよくわかる」「(言った、言わないの)水掛け論は防げる」などが理由だった。

 しかし、撮影したことにより、検事が受けた印象として、容疑者の供述態度が変わったケースが17%、供述内容を変えたケースが7%あった。ぎこちなくなったり、「殺すつもりはなかった」「思い出せない」などと自分に不利なことを言わなくなったりしたという。

 取り調べの全過程の録画については、88%が「そうすべきでない」と答え、「そうすべきだ」という意見はゼロだった。理由は「取り調べの真相解明機能を害する」という意見が多かった。最高検は年度内に最終的な検証結果を公表することにしている。

 日弁連の「取り調べの可視化実現本部」事務局次長の幣原廣弁護士はこの結果について「自白した瞬間を録画せず、最後を録画しているにすぎない。我々は全面的な可視化を求めており、極めて不十分だ」と指摘する。

 日弁連では今月から、全面的な可視化の実現を求める署名運動を全国で始めた。5月までに30万人分の署名を集めるのを目標にしている。

〈検察による録音・録画の試行〉

 06年夏から一部の地検で試行を始めた。検察官が必要と判断した事件について、容疑者に告げたうえで、2台のカメラを使って容疑者の上半身アップと部屋全体を撮影する。すでに作成した自白調書の内容に沿って検察官が質問して答えさせる場面や、検察官が調書内容を読み聞かせて署名させる場面を記録する。組織犯罪の解明や事件関係者の保護などに支障がある場合は対象にしない。4月からは全国の地検に広げて本格的に実施する。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0215/TKY200802150108.html