記事登録
2008年02月03日(日) 04時28分

混入の可能性は…中毒の被害者ら「日中連携で徹底究明を」読売新聞

 「安全管理体制に問題はなかった」。中国製冷凍ギョーザの殺虫剤中毒発覚から3日後に、中国でようやく開かれた「天洋食品」の記者会見。底夢路・工場長は、製造工程の品質管理に胸を張り、殺虫剤「メタミドホス」の混入原因を追及されると、「こうした問題が起きたことはない」と反論した。

 国内の関係者は複雑な表情を見せ、今回の被害者は「二度と被害が出ないよう、日中両国が連携して原因を徹底究明してほしい」と強く訴えた。

 「天洋食品」の初めての記者会見に、中毒症状を起こした千葉市稲毛区の主婦(36)の家族は、「想像していた通りだった。今後も状況は変わらないだろう。だからこそ日本の各機関は、きちんとした対応をとってほしい」と語った。

 家族3人が中毒症状に見舞われた兵庫県高砂市内の男性(51)も、「国が絡むと難しいかも知れないが、今後は日本と中国が連携し、同じ被害を受ける人が出ないよう、農薬が入った原因を徹底的に究明してほしい」と話した。

 天洋食品からの輸入を仲介した「双日食料」(東京)の広報担当者は、「現地からの報告では、彼らなりに誠実な対応だったと聞いている」とコメント。「天洋食品を弁護するわけではないが、他に取引がある中国の工場と比べて非常にしっかりした会社。彼らも引き続き原因究明に協力していこうという姿勢は変わっていない」と話した。

 問題のギョーザを販売したジェイティフーズの親会社、日本たばこ産業は「中国側がどのような説明をしようと、当社としては原因を究明するために調査を続けていくだけ」と話した。

 厚生労働省食品安全部の幹部は、「中国側が一方的に言っていることには、何ともコメントしようがない」と困惑の様子。「当初はきょう(2日)、中国当局の担当者が来日して説明したいと言ってきていた。現地で会見するとは全く聞かされておらず、一体どういうことなのか」と不信感も。

 また、会見の内容を知った警察庁幹部の1人は、「検査開始から2、3日で問題がないと明言するとは」と驚きを隠さなかった。「工場にメタミドホスがないというだけで、従業員による混入の可能性に答えておらず、納得できない」と冷ややかな声も聞かれた。

 ◆天洋食品「我々も驚いている」

 【石家荘(中国河北省)=牧野田亨】天洋食品の記者会見会場となった市内のホテルの会議室には、日中双方の記者ら約80人が詰めかけた。紺色のスーツ姿で会見に臨んだ底夢路・同社工場長は、ほとんど顔を上げないまま。手元の資料に目を落とし、「会社も非常に驚いている。日本の消費者にお見舞い申し上げ、被害者の早期回復を心からお祈りする」と、淡々とした口調で切り出した。

 だが、その後は会社の実績と努力を強調するばかり。「国などの検査では(有機リン系の殺虫剤)メタミドホスは検出されていない。繰り返された調査でも、品質の安全にかかわる問題は見つかっていない」「従業員にも手洗い、消毒などを徹底させている」。時折言葉に詰まり、のどが渇くのか、途中でお茶を一口飲み、資料を読み続けた。

 はっきりと顔を上げたのは、正面にカメラマンが近づいた時。フラッシュが目に入ったようで、「まぶしくて(資料が)読めない」と苦笑いを浮かべた。

 会見は、報道陣が3日間要求し続けて実現した。底工場長は「現在調査中で、皆さんに工場内を見学させられない。門前で何日も待っている記者もいた。高い関心を持ってもらい、感謝する」と皮肉も口にした。

 10分ほど資料を読み上げた後、質疑応答。昨年10月の国慶節に絡めて混入時期を探ろうとする質問には、「関連する時期に関しては、現在調査しているところ。結論を出したくない」などとかわした。

 最後に労使紛争に触れる質問が出ると、「制度に違反すれば、企業側には企業の管理方法がある」と、右手で鉛筆を握り締め、足早に会場から立ち去った。

 【石家荘=牧野田亨】2日、底夢路・天洋食品工場長が開いた記者会見の一問一答は次の通り。

 ——日本向けギョーザの年間輸出量は。

 「2007年の日本向け商品は3970トン。東京、神戸、横浜港などに向けて出荷している」

 ——メタミドホスはどこで混入したか。工場で使ったことはあるか。

 「わが社には厳格な管理体制、厳格な消毒システムがあり、こうした問題が起きたことはなかった」

 ——工場にはメタミドホスはないということか。

 「すべての工程で厳格な品質検査がある。生産現場から、手洗い、消毒、更衣にいたるまで、完全に整った管理体系がある」

 ——日本での評判は。

 「工場の生産量は、毎年少しずつ増えていた」

 ——昨年10月の国慶節休暇で管理に漏れがあったのではないか。

 「関連する時期に関しては、現在調査しているところで、結論を出したくない。注意深さが必要だ。関係部門と協力して、真相を明らかにしたい」

 ——日本側に責任があるとの報道もある。

 「中日友好関係の立場からは、論評しようがない」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080203-OYT1T00132.htm