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2007年11月30日(金) 18時38分

リコーダーの魅力〜『G線上のアリア』オーマイニュース

 1959年頃から小学校でリコーダーを教えるようになったらしいので、学校で習った方も多いと思います。

 多くの方に親しまれてきたこの楽器で、幾つもの種類と何人もで演奏する「リコーダー・オーケストラの魅力」を紹介したいと思います。

 バロック音楽の好きな母に育てられた私は、幼い頃からいつも音楽のある環境でした。休日は必ずといって良いほど、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディなどの音楽が、居間に流れていました。

 その部屋で、私はというと、広告やら学校からの手紙やら、裏が白紙のものを集めては、ひたすら絵を描いていました。そして、ときどき、スピーカーから流れ出る曲が、肌に染み入る時がありました。そんな曲に出会うと、描く手を止め、聴きいるのでした。

 バロック音楽は、優雅で荘厳な美しさに溢れており、聴く者をどこか遠くの、神秘的な所へ連れて行ってくれるかのようです。

 私が高校生頃になると、はっきりと好きな曲が自分の中に出てきます。その1つに、誰もが1度は耳にしたことのある『G線上のアリア』があります。

 『G線上のアリア』とは、J.S。バッハが作曲した管弦楽組曲の中の「エア(アリア)」として書かれたものが原曲です。

 1871年、ドイツのヴァイオリニストがヴァイオリンのG線だけで主旋律が弾けるように編曲する事で、世の中に広く『G線上のアリア』として親しまれるようになりました。

 「エア」とは、美しい旋律のゆっくりとした舞曲を意味しています。どのような衣装であったのでしょう。想像をかきたてます。

 音楽に熱中した頃は、管弦楽や吹奏楽の演奏会で、好きな曲目がある時は(小遣いの許す金額)、それだけで胸躍り友人と足を運ぶのでした。

 それから、何年も時が経ち、私も家庭を持ちますが、音楽を聴く余裕はなくなっていました。生活しているわずかな隙間に、音楽が追いやられているのでした。

 そんな時、実家でリコーダー演奏のCDをみつけました。

 実は、高校時代も聞く機会はありましたが、管弦楽などと違い派手さがないと感じ、自分からはこのCDを聴こうとは思いませんでした。しかし、曲目に私の好きな曲『G線上のアリア』が収録されています。興味そそられ、借りて自宅へ持ち帰りました。

 子供が寝静まったある日、借りてきたCDを聴く事にしました。

 久しぶりに聴くリコーダーは、あたたかく柔らかな音色でした。ソプラノ・アルトリコーダーが、美しい旋律を伸びやかな響きで奏でます。

 ソプラニーノと思われる音色は、まるで鳥のさえずりのように聞こえます。16部音符やトリルは、指をどう動かすのでしょう。

 バスリコーダーの少しかすれた力強い音もあります。これらが絡み合い、奥行きのある演奏となるのでした。

 そして、演奏者が一斉にリコーダーに吹き込む息が、まるで全体が1つの楽器のように聴こえ、音の波が伝わります。

 曲目も進み、私の好きな『G線上のアリア』が始まりました。まず、冒頭の甘い旋律が、ゆるやかに、立体的にスピーカーから流れて出てきます。

 いつしか幼かった時分を思い出し、家事の手が止まりました。あの頃と同じです。肌から曲が染み込みます。私の体は、やわらかく温かみのある、そして深いくぼみへと沈みこんでいくようです。優しい光が差し、なんともいえない、誰かに見守られて安心している自分がいるのでした。

 優しく美しい音色で、人を包み込むようなハーモニーは、気品溢れ、まるで天上の音楽のように感じました。

 今年、やっと我が子は、少しの間は演奏に耳を傾けられる年頃になりました。

 12月1日、浜離宮朝日ホールにてリコーダー・オーケストラの演奏会があります。もちろん、私の好きな曲目演奏があり、入場料金も家計の許す金額です。そして、J.Sバッハの『G線上のアリア』も組まれています。

 今度は家族で、もしかしたら、子供が飽きるまでの2曲ほどしか聴けないかもしれませんが、足を運ぶ予定です


(記者:沢口 幸恵)

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