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2007年11月29日(木) 00時00分

流通再編、一時代を築いたPC専門店が閉店読売新聞


閉店した通称、ザコン館。新たな再編劇の幕が上がる
家電量販店の再編が加速

 9月20日、東京・秋葉原にある「ラオックス ザ・コンピュータ館」が閉店した。今でこそ当たり前になっている大規模フロアで、初心者や女性でも足を運びやすいパソコン販売店を作り上げ、1990年代のパソコン販売業界をリードした。閉店時刻には多くのギャラリーが集まり、シャッターが閉まる際には、拍手が巻き起こり、「お疲れ様!」といった掛け声も飛んだ。

 その同じ日、家電流通業界に激震が走った。かつて日本一の売り上げ規模を誇っていたベスト電器(本社・福岡)と、全国のターミナル駅近くに店舗を展開するビックカメラが、業務提携することが発表されたのだ。

 ベスト電器に対しては、現在の家電流通の売り上げトップであるヤマダ電機も株式買い増しを進め、提携発表以降も株式取得を進めており、家電販売店の新たな再編が始まったことは間違いない。

 ラオックス ザ・コンピュータ館が人気だった90年代が、家電販売店再編の第1期だったとすると、現在進行形の家電販売店再編は第2期といえる。

 第1期の家電販売店再編は、ヤマダ電機やコジマを代表とする、大型郊外店を展開する企業が、地域の垣根を越えて店舗作りを進めたことから始まった。九州にベスト電器、中国地区にはデオデオ、東北地区はデンコードーといった地域性の濃い店舗地図を、ヤマダ電機やコジマが破り、地域に縛られない新しい大型店舗を全国に開店していったのだ。

 その際、中心的な商材となったのがパソコンだ。90年代前半まで、パソコンは専門知識を持った人を対象に規模の小さな専門店が販売する商品で、東京・秋葉原、大阪・日本橋のような電気街の専門店が主な販売窓口となっていた。

 しかしそれが、女性や高齢者など幅広い顧客をターゲットとした商品となり、環境が一変。パソコンメーカーも、小さな専門店より郊外の大規模店舗や、大規模ターミナル駅近くに立地するカメラ量販店での製品販売に注力するようになった。

第2期再編のカギはユーザー

 結果、販売量に勝る店が大きな力を持つようになる。デオデオが、中部地区に拠点を持つエイデン、近畿地区のミドリ電化、関東地区の石丸電気、北陸地区のサンキューと提携することで「エディオングループ」を結成。一方のヤマダ電機は、企業買収を繰り返して規模を順次拡大、カメラ量販店のビックカメラやヨドバシカメラは、単独で店舗の数を増やしてきた。

 地方店舗が大きく統合した後だけに、これ以上の店舗統合が進めば、販売店の寡占化が進むのは明白だ。

 主力商品を見ると、第1期再編で中心的役割を果たしたパソコンは、薄型大画面テレビなどデジタル家電製品の人気に比べ、一時期の勢いはない。だが、「これからはもっとパソコン販売店の力が必要になる」と指摘するメーカー関係者もいる。家庭内に無線LANを導入し、家族でデジタルデータを共有するホームサーバーや複数台のパソコンを使いこなすには、サポート力のある販売店の存在が不可欠になるからだ。

 日本の家庭にパソコンを持ち込むために、第1期家電店再編は大きな力を発揮した。だが、裾野が広がったユーザーが必要とする、かゆい所に手が届くサポート態勢を標榜する店舗はまだ少ない。メーカーのアフターケアも今ひとつで、固まったパソコンを前に途方に暮れるユーザーは後を絶たない。第2期の家電販売店再編は、拡大するユーザー層が頼りにできる店舗が増えていくかどうかも、大きな鍵となりそうだ。(フリーライター・三浦優子/2007年10月24日発売「YOMIURI PC」2007年12月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20071120nt10.htm